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女騎士の大任 ~乙女の恋が帝国を滅亡の危機から救う~  作者: へるきち


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4. 詰んでれ

 ギラリ、と剣が月明かりを反射して鈍く光る。


 町外れの街道で、盗賊に襲われたのだ。

 だから、夜が明けてから出発しようって言ったのに。

 奴隷のクセに「回りくどい事は嫌なの」とか主張するし、スズメは気が短いし。


 盗賊から奪った剣はナマクラなのか、スズメは盗賊達を、斬ると言うよりも殴っている。


「やべえ! こいつらまともな剣持ってないぞ!」


 いや、素手で殴っても殺せると思うよ?

 怪力で頑丈、女騎士スズメはつくづく規格外だ。

 ニンゲンじゃない可能性もあるからなあ。


 規格外と言えば、魔導士である私もなんだけど。


 まあ、いいか。

 スズメも奴隷も、私とは一蓮托生だ。

 ここなら目撃者が居たとしても、皆殺しにすればいいだろ。


 今まで、()()()()人を相手に使った事は無い、私の魔法。

 盗賊相手に喰らわせてやろう。


 やはり騎士は剣を振るってこそなのか、撲殺は落ち着かないらしい。

 スズメは盗賊達に押され始めた。このままだと危険だ。加勢しないとね。


「ぐっ」

「うげっ」

「目がー! 目がー!」


 ライター程度の役に立たないと思われているファイヤー魔法だけど。

 何処を燃やすかは自由なんだよ。


 一人目は、気管を焼きました。

 2人目は、脳幹をこんがり。

 3人目は、眼球を蒸発させました。


「あー、うるさいな」


 謎事象にパニックになって騒ぐ盗賊達を、まとめて焼いてやった。

 ライター程度の火力でも、色々と応用が効くのだ。

 殺人も可能。人体は意外と脆いのだ。

 この程度の事にも気付かないのが、堕落した王立魔導士達。

 私は、ちょっと応用しただけで、魔女扱い。

 そもそも女じゃねえ。男だからな。


「あらあ、金目の物を何も持ってないわねえ」


 盗賊の死体を無造作に漁る奴隷の女。

 本当の身分は王女なんだけどなあ。


「ところで親分は、今何をしたんで?」

「魔法だよ。人には言うなよ」

「言っても誰にも信じないと思うでやんす」

「だなあ。魔導士ってナビじゃなかったんだ」


 並の魔導士ならナビになるよ。

 私が規格外なだけ。


「返り血が気持ち悪い。お風呂入りたい」

「お風呂探索なら、私の魔法に任せなさい」


 女騎士はオフロスキー、私もオフロスキー。

 お風呂探索魔法はかかせないね。


「魔法無くても、匂いで分かるかも」

「そうだね。これは硫黄の匂いかな?」

「うーん。くさい風呂は好きじゃないんだが」


 匂いの出処を辿って行くと、天然の露天風呂があった。

 これは、さっき片付けた盗賊が整備したものかもね。

 ありがたく浸かるよ。


「へえ、魔導士ってホントに尻尾があるんだ」


 奴隷王女まで、女騎士と同じ事を言う。

 どうやらボケているワケじゃないらしい。

 こいつら男女の違いすら知らないんだ。


「これは尻尾じゃないよ」

「だったら何だ?」

「尻尾でいいよ」


 実のところ。

 私も、この器官の事を知らない。

 前世では女だったからね。

 尻尾でいいんじゃないの?


 奴隷王女も女騎士と同じで、スットンツルリンだ。

 山も無ければ谷も無い。

 あったとしても、何の興味も沸かないのだけど。

 どうやら私は、性同一性障害ってやつらしい。

 一人称を私に矯正させられて、やっと自覚した。

 私のメンタルは、前世を引きずっているのか、女性だ。


 んー?

 

「男と女が一緒に暮せば子供が出来るんでしょ?」


 ってのが、この任務の大前提なんだけど。

 初手から詰んでない?

 人選間違ってるよ。


「男女が一緒に居れば恋愛関係になるんじゃないの?」


 とも言えるね。

 この任務は恋愛リアリティーショーかな?

 私、そういうの大嫌いなんだけど。


 やっぱもう詰んでない?


「どう? 恋に落ちたでやんすか?」

「恋ってなんだよ? そんな概念は戦闘に必要ないから俺は知らん」

「あれー? 一緒に旅をして、吊橋も渡ったじゃないの?」

「そういうもんじゃないよ、多分」


 このポンコツ3人組の任務は、少子幼齢化の危機にある女騎士が子供を生む方法を探る事。

 しかし、この体たらく。

 私が前世で仕入れた昭和の少女マンガやアニメの知識しか無いのだ。


 恋愛の仕方なんて分かってない。


 そもそも、恋愛って手順書とか仕様書があるもんじゃないよね?


「次はー、一緒に焼き肉食べて、お酒飲むでやんす!」

「だから、奴隷が命令すんなって言ってるだろ?」

「ブヒッ! すみません親分!」


 一際乱暴な口調なのが女騎士のスズメ。この物語のヒロインだよ。

 ブヒブヒ言ってるのが、王女。本来なら女騎士の主君のはずなのに、今は奴隷。

 建前だけじゃなく、奴隷契約をしたので、おしりに入れ墨があるよ。

 入れ墨は、私が魔力を込めて彫ったので、私とスズメには絶対服従する呪いがかかっています。

 王女がこの任務にかける根性が半端ない。

 任務ではなく、今後はプロジェクトと呼びましょう。

 プロジェクト名は、知らん。


「ねえ、私って言ってると、どうにも気分まで女の子になっちゃうんだけど」

「見た目も尻尾以外は、女の子だし、問題ないだろ?」

「いやいや、恋に落ちるなら男女設定が正統派だよ」

「だったら、旦那は僕とでも言えばよろしいのでは?」

「そうさせてもらうよ」


 女同士でも男同士でも恋に落ちる事はあります。

 昭和の少女マンガでは、特に後者はむしろ標準でした。

 しかし、今回の任務では子を成す必要があるのです。

 んー、でもー、メンタル的にはユリだけど、子作りもする。

 おお、ある意味完璧な気もして来ました。


 あれ? 僕はのぼせてますね?


「焼き肉くらいなら出来るでやんすよー。あ、魔法で火を点けて下さい。旦那様」


 お風呂から上がって、バーベキューです。


 ばーべきう。

 システムエンジニアのトラウマを抉ります。

 

「帰社日はみんなでBBQ!」


 そんな文句を求人広告で見たら、120パーセントブラック。

 高ポリフェノールチョコじゃありません。

 奴隷商なので、決して入社してはイケマセン。


 偏見かな?


「何の話してんだ? お前もう酔ってるのか?」

「いや、僕は酒は飲まないよ」


 何しろ、前世の死因として心当たりがあるのが、お酒なので。

 泥酔して、外泊証明だと思って、傭兵契約書にサインしちゃった気分ですよ。

 だから、お酒は飲みません。

 ついでに賭け事もしません。

 しかも、解雇されちゃいましたけど、王立魔導士というエリート。

 なかなかの優良物件だと思うんですけど、それが何故こんな事に。


 いやもう、どんな事になっているのかすら分かりません。


「げははははは! てめえちょっと尻尾見せろよ!」

「おう! 俺のちょんまげと勝負しろや!」


 奴隷王女も女騎士も、最悪の酒癖です。


 おかしいですね? 男女でお酒を飲むと勢いで子供が出来ちゃうっていう伝承もあるんですけど。

 猛獣が暴れるための燃料を獲得しただけです。

 こんな猛獣と何をしろと?


 あ、僕が飲んでないからテンションが一致しないせいですね?

 やっぱ詰んでるのでは?


 ちなみに、この国は18歳から飲酒可能です。

 世界中を侵略して回ってる国ですからねー。地球のどっかの国と同じで、蒸留酒作りも盛んですよ。

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