23. 姉ちゃんだけ
「はれ? スズメちゃん?」
前回は、イケメン兄貴だったスズメが、今回は妹キャラです。
16歳くらいですかね?
妹だなーって感じの容姿です。
でも、ムキムキのスットンツルリン。
私は、いつも通り。
27歳、王家の行かず後家だとか、影の女王と呼ばれてる美女です。
自分で言うのもなんだけど、正統派清楚系美女です。
魔国では痴女と呼ばれてますけどね。
「俺が思うに、異世界ゲートは理想の自分になれるんじゃないかな?」
なるほど?
言われても見れば、私のこの姿はまさに私の理想かも。
「前回は、お前を嫁にする気でいたけどな? 婿取り合戦に変わっただろ?」
「それがスズメちゃんの本来の理想の姿なの?」
「そうだよ、お姉ちゃん」
はあ、そっすかあ。
妹が増えちゃいましたね。
で、アンは?
見当たりませんがー。
何かが右のふとももにしがみついてきましたよ?
この温もりはニンゲンですね?
うひっ! って言いそうになったじゃないですか。
「ミーナ母さん」
「母さん!?」
27歳なのだから、これくらいの娘が居ても不思議ではないですね。
魔国は結婚するのが早いですから。
だいたい16歳くらいで結婚して子供を産みます。
令和日本で27歳女子を行かず後家呼ばわりすると大炎上ですけどね。
魔国では27歳まで健康体で居られる確率が低いからでしょうね、みんな早婚です。
「アンは、子供になりたかったの?」
「帝国の両親は鬼のようなスパルタでしたからね」
子供からやり直したいって事か。
妹が増えて、子持ちになった。
これはこれでよし。
ある意味、任務を遂行しています。
子育て経験は役に立つ事でしょう。
さてー、アンにどんな服を着せて、どんな髪型にしてやるべきか?
さっぱり分かりませんね?
「俺は、コレ着るぜー。ミーナが着てたのうらやましかったんだ」
スズメは黒のゴスロリドレスです。
メイド服とさほど変わらんね?
アンには着物を着せましょう。
座敷わらしみたいですね?
髪型は、向こうの母さんか妹に相談しましょうか。
私も、髪を結ってもらいたいし。
「ミーナさんの髪はワタクシが結ってさしあげます」
三つ編みにしてくれました。
それをぐるっと頭の上に回すアレです。
この髪型は何ていいますか?
帝国ではずっと男の娘だったし、魔国では戦闘狂でした。
乙女の髪型ひとつ知りません。
これで恋に落ちようだなんて、前途多難ですね。
「あんた、また私の部屋で何してんの?」
「姉ちゃんを待ってたんだ」
また弟が私の部屋に居ました。
こっちでも何か良くない状況が進行中なんでしょうか?
だからと言って、いつ来るかも分からない姉の部屋で待たなくても。
「今度は女を連れ込んだな。しかも子供」
「あんたさ、どっちがが好み?」
「姉ちゃんだけは無い」
「おい。どっちがいいかと聞いているんだ。私は対象外だ」
「姉ちゃんだけは無い」
「2度も言ったな? 理由を聞いてやろうか」
私も、自分より弱っちい弟は眼中にありませんが。
とは言っても、弟は魔国の王、魔王なんですけどね。
なお、弟は妹の旦那であって、私の血縁ではありません。
妹も母も血縁ではないけどね。
「姉ちゃんは、ロクデナシだから。自分より弱いのを雑魚とか言って見下してる」
「魔王にそんな事言われるなんて」
確かになあ。
こっちの騎士団の事なんて掃除屋として見てないもんな。
十分、ロクデナシですなあ。
「でも私達は帝国の任務で恋愛せにゃならんのよ」
「だったら、母さんに聞きなよ」
なるほど。
母さんなら妹を産んでいるし、恋愛も結婚も経験アリって事だよね?
「あんたが魔法受粉の方法を教えてくれてもいいんだけど」
「まずはサボテンを育ててからだ」
「じゃあ無理か」
魔法というものはイメージが大事なんですよ。
イメージを掴むには具体的な体験が必要。
私に魔法受粉は無理って事です。
だってサボテンすら枯らすからね。
「だいたいさあ、義理とは言え、姉の前で実演したくは無い」
「あんたも教えるの下手だからなあ」
「魔法は見て覚えるもんだって言ったの姉ちゃんだろ」
職人みたいな事言ってますねえ。
お陰で、後継者が育たないので、魔女は増えません。
それはそうと、弟は私を待っていたとか。
「あんたの用は何なの?」
「魔獣国が猫頭の脱走でズタボロだから落としに行くんだけど」
「分かってるよ、邪魔はしないよ」
「うん。姉ちゃんが参戦すると一瞬で終わっちゃって兵が育たないからね」
「そういえば猫頭は異世界に行ったそうなんだけど?」
「ゲートってやつを開発したんじゃないの?」
そうか。
帝国の母さんに出来た事だ、猫頭魔法少女隊に出来ても不思議は無いか?
だとすると思ってた以上に強敵だな。帝国は大丈夫かな。
猫耳の魔法少女隊は、うちの異世界ゲートを借りて、こっちに来たんだけど。
こっちでは耳だけでなく、頭全部猫になってました。
だから猫頭。
「あ、魔獣のゲートを見つけたら破壊しておいてね」
「もちろんだよ。姉ちゃんのゲートも認証付けてくんないかな」
「そうだね。おかしなのが通っちゃ困るね」
「じゃあ、おまんじゅうを食べてくるよ」
「おみやげは、おまんじゅう以外がいいな」
「遊びに行くわけじゃないよ?」
魔獣国には、おまんじゅう以外にたい焼きもあってオイシイんだけどなあ。
やっぱ邪魔しに行こうかな?
その前に、まずは異世界ゲートに鍵をつけましょう。
おかしなのが勝手に来ちゃ困る。
向こうでお姉さんが止めるとは思うけども。
「多要素認証が望ましいですわね」
この幼女、よく分かってんな。
中身は帝国軍人なのだから当然かな。
「そうは言っても、生体認証だとねえ?」
行き来する度に体が変わっちゃうみたいだからね。
「アンの刀は?」
「ワタクシの剣は魂と一体ですので、持って来れましたわ」
「帝国と同じ状態?」
「いいえ。短くなってしまいました。体の大きさに合わせたのでしょうね」
何が違うのか知らんけど、アンは刀ではなく剣と表現する事に拘りがあるんだね?
スズメの方は刀って言う事が多いかな。
「俺の刀も、見た目は変わるけど、それは帝国に居てもそうだな」
「うーん、刀の生体情報は変わらないって事ならいいけどー」
「ゲートの認証はミーナさんにお任せすれば良いのではなくって?」
それで行こうか。
まず王宮側の扉は、私の魔女っ子ステッキを鍵として登録。
このステッキで魔力を流し込まないと開かない仕組みにする。
「そのステッキ? 随分と禍々しい漆黒ですわね?」
「それって血を吸ってんのか?」
「あー、そうかも? そういえば最初はピンクと白だったような」
ちっとも魔女っ子じゃありませんねえ。
次に、探偵事務所に通じる扉は、帝国の私の生体認証だね。
探偵事務所のお姉さんの生体情報も登録しておこうか。
「俺が入れないと風呂掃除するヤツ居ないからなあ」
「掃除してくれてたんだ?」
「そりゃそうだろ。誰も入らなくても汚れるもんだぞ」
そういう事ならば。
「なんで、いきなり風呂入ってんだ? 俺、探偵の仕事もあるんだけど」
「そっちはカモフラージュなんだから、程々にして欲しいなあ」
ゲートの中間にある露天風呂。
この空間はどっちの異世界なんですかね?
いつ来ても、快晴の昼間です。不思議。
「この空間は、実際には屋内らしいぞ」
「母さんの魔法かあ」
帝国の母さんの魔法は底が知れないなあ。
「なんでも出来てしまうとつまらないでしょうねえ」
「アンの言う通りだな。帝国で戦っても雑魚しか居ない。実につまらん」
王立騎士団も瞬殺だったもんね。
範囲攻撃魔法でもないのに、なんで多数相手にひとりで圧勝出来るんだか。
「魔国の敵がどんなものか。楽しみですわ」
「魔獣国も強そうだぞ」
やっぱり魔獣国に邪魔しに行きましょうかね?




