18. あなた太刀が曲がってましてよ
「よくやったっす。魔導士達は始末しようと思ってたでやんす。ちゃんと火を消しれくれたら、もっと良かったすが」
いつだったか話をした、王宮の離れの茶室みたいな部屋です。
王女プリンは、全裸で正座しています。
クセになっちゃったんですかね。
ちなみに、火は王立消防団のみなさんが消してくれました。
木造家屋ばかりなので、燃えたらさっさと周囲を破壊するのが正解だったのです。
次からは、そうしよう。
「こいつの態度は王女らしくねえなあ。けつの紋様消してやったら?」
「うーん、可愛いし、こいつが私達に逆らうと面倒だから、奴隷のままでいいんじゃない?」
「まあ、それもそうか。俺もさすがに王殺しは抵抗あるからなあ」
「そりゃ、騎士なんすから。主君を殺しちゃダメでやんしょ」
言われてみれば、全く持ってその通り。
勝手に行動する騎士なんて、おかしすぎますよ。
「えー、もうクビにしたんだろ? 今の俺の主君はミーナだ」
「そういう認識だったんすか? カップル成立も近いでやんす??」
そういう見方もありますね?
でも、今日相談したいのは、そういう事じゃありません。
「分かります。あっしも、そこまでアホじゃあないんです。それにね」
また、何か面倒な任務を増やしそうな予感。
「魔女の子も必要っす。ミーナの旦那も子供を産んで下さい」
「えー」
「王立魔導士を滅ぼした罪は、それでチャラでやんす」
魔導士寄宿舎からの延焼を防ぐために破壊した建物。
それは、魔導士学校でした。
もうこの国の魔導士は完全に絶滅しました。
「お金がもったいないんで、学校の再建はしやせん。その分を路銀に持たせやんす」
「お金なら、ちっとも困ってないけどね」
「そうでやんしたね。おふたりで旅に出て、恋に落ちて来て下さい」
難易度が上がったのか、下がったのか。
「なるほど。どっちが男をものにするのか、勝負だな?」
「勝負ではないと思うー」
「分かったら、さっさと行くっす。魔導士派閥の貴族も全員殺すでやんすか?」
「貴族を敵に回してしまったかー」
「だから、揉める前に早く行くっす」
王都にいると、魔導士派閥の貴族達に闇討ちされるかもねって事です。
「どうですかね? 女騎士にスズメの討伐依頼なんて来てませんか?」
近衛騎士隊の隊長アンに相談しに来ましたよ。
どんな刺客だろうが、私とスズメなら一撃で返り討ちですが、女騎士だけは違います。
先手を打っておきましょう。
「あなた達何をなさったの? 影武者王女の護衛についてる隊が探してますよ」
「ありゃ? 影武者王女はクーデターを図ってますね?」
「そういう事になるのかしら?」
影武者王女はアホですね?
絶滅危惧種の女騎士をふたつに割って争わせるなんて、帝国滅亡を早めるだけです。
弱体下した国の覇権なんて無価値でしょ。
「女騎士には司法執行権があります。影武者王女を粛清しましょう」
「私達も終身名誉王女なので、その権利と責任があります。お付き合いしましょう」
責任もそうですけど、降りかかる火の粉は振り払わないとね。
ラブコメから遠くなっていきますねえ。
「いや、影武者王女は王子らしいぞ?」
「おや? 恋に落とすチャンスですかね?」
ピンチはチャンス。
影武者王子をトゥンクさせましょう。
場合によっては、婿にしてやりましょうか。
あれ? それじゃあ私がテロリスト?
まあ、なんでもいいや。アン隊長と一緒に影武者退治です。
「護衛が多過ぎますわね」
「うじゃうじゃとまあ、ワシがターゲットじゃと言わんばかり」
やはりアホですねー。
護衛も連れず全裸でうろついてる本物もどうかと思いますけど。
アレを王女だとは誰も思わないので、狙われる事もないですね?
「女騎士を殺すのはマズいなあ」
「ただでさえ減ってますものね。女同士で恋愛ごっこしているから」
アレ? 女騎士減少の理由ってソレなの?
「あのー、女騎士ってどうやって増えるんですか?」
「今聞きますか? 敵が目の前なのに」
「あ、はい。そうですね。じゃあ後で詳しく」
女騎士は輪廻転生するのだって誰に聞いたんだっけ?
思えば私、この世界の教育機関にも通ってないし、友達も居ないから、この世界の事情に疎いですよ。
まずは目の前の敵を倒すこと。
話はそれからですね。
「ミーナさんは、魔女なんですのよね?」
「はい、よくご存知で」
「有名ですのよ? 知らないのは本人だけなのかしら」
どんだけ世間知らずなんですかね、私は。
「魔女なら、あの護衛を出し抜ける魔法を使えませんこと?」
「う、うーん」
相手は女騎士の群れですよ?
ほら、もうこっちに気付いちゃった。
「アン隊長!」
「あ、やべえ。逃げますわよ」
やべえ、って言った?
公爵家子女のアン隊長が焦ってませんか?
「お姉様! お待ちになって!」
「今日こそ、わたしくと交わっていただきますわよ!」
確かに、やべえ。




