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女騎士の大任 ~乙女の恋が帝国を滅亡の危機から救う~  作者: へるきち


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16. 女騎士とお酒

「おい、金あるのか?」


 街の居酒屋にスズメと繰り出しました。

 テーブルの上には、沢山の料理とお酒がずらっと並んでいます。

 戦時下とは思えない贅沢ですが、圧勝を続けて次々と領地を拡大してますからね。

 初めて見る料理もあります。きっと新しい領地のものですね。


「私は、王の姉だよ? ツケだって効くし。何なら踏み倒しても構わない」

「そうなのか? お前、こっちだと口調まで変わるんだな」

「こっちでは、ずっと乙女だからね」


 名前も違います。こっちでの私の名はボッスンです。

 年齢は27歳。

 王家の行かず後家だとか、影の女王だとか言われています。


「食い逃げしてもオモシロイかもね」

「どういう事だ?」


 なんて言ってる側から、会計の方が賑やかですね。


「おうおう! 何処の国から来たか知らねえが、食い逃げとはいい度胸じゃねえか」

「あ? この国は暴力上等なんだろ? だから来たんだぜ?」


 スキンヘッドにヒゲモジャの筋肉ダルマが威勢の良い事言ってます。


「ああいう手合を退治すれば、食事代はタダになるよ」

「よし、やってみよう」

「がんばってねー」


 私も観戦しましょうか。

 魔女っ子ステッキを持って、スズメと共に席を立ちます。


「それ、魔女の杖なんだよな? 指揮棒みたいなのかと思ってたけど」

「近接戦闘で殴る用だね」


 漆黒の棒の先に、クリスマスツリーのてっぺんにある星みたいなのが、ギラリと光っています。

 アダマンタイト製のカッチカチの尖った武器です。

 これで殴ると、ニンゲンの頭蓋骨なんてシュークリームみたいなもんですよ。

 はみ出すのはクリームじゃなくて、脳汁ですけど。


「ほら、ピカッと光って懐中電灯にもなるんだよ」

「そりゃ便利だな。魔法でも同じ事出来るくせに、とは思うけど」


 他にも隠しナイフや、ドライバー、爪切りも内蔵しています。

 十徳ナイフですか? チュウニ心をくすぐるアイテム。

 何故かコレ、向こうの世界からこっちに持って来れたんですよね。

 こんなもん貰ったら、そりゃ多少はトキメクってもんですよ。


「ねえ、暴力上等とは言え、口上くらいは述べるべきだと思う」


 威勢の良かったハゲダルマは、一瞬でドログチョになっちゃいました。


「そんなのは時間の無駄だ」

「分かってないなあ。名乗りを上げておけば、闇討ちして貰えて、修行になるのに」

「闇討ちなんて、こっちからすりゃいいだろ」

「確かに」


 ここは暴力上等の修羅の国。

 私は、ここで命がけの勝負を繰り返す事で、実地で魔法を習得したのです。

 命かかってるから、必死になるってもんですよ。

 メキメキと上達しました。


 派遣のエンジニアがスキルアンマッチの現場で、スキルを習得するのと同じですね。

 ネットワーク屋だって言ってるのに、サーバの構築をする派遣先とか割とあります。

 そういうピンチをチャンスに変えてこそ、上流工程に成り上がれるのです。


 ただし、この世界で習得した魔法はー。

 残念ながら、向こうの世界では使えない魔法ばかりなんですけどね。

 世界にある魔力の種類が違うみたい。

 こっちがジェット燃料ケロシンなら、向こうはライターオイルってとこですかね。


 ハゲの死体は居酒屋のスタッフにお任せして、私とスズメは酒盛りを再開しますよ。


 死体を見て、ウヒーってなるようじゃ、この世界では生きて行けないよ。


「名乗りを上げるとしても、俺にはこの世界での名前が無いぞ」


 そう言いながら、スズメがモッシャモッシャと食べている白子は、さっきデロンってしていたハゲの頭の中そっくりですね。

 さすがに、うまそう、とはならない。

 おっさんの頭の中なんて食べたくないわー。


「白子って、アレなんだよな? 雄しべから出る花粉を作る器官」

「そうだね。じゃあ私はキャビアみたいなコレを、ご飯にどさーっと」


 この世界のご飯は充実しています。

 お米だってあるし、味噌も醤油もあるのです。マヨネーズもあるね。


「なあ、この世界で暮せば良くないか? 子供作って最強の剣士にしようぜ」

「えー、私は最強の魔法使いがいいなあ」

「じゃあ、男なら剣士、女なら魔法少女だ」

「男の娘だったら?」

「魔法剣士だろ」

「いいねー!」


 まるで新婚みたいな会話してますけど、恋愛関係ですら無いんですよねえ。


「帝国と聖国と王国の依頼があるでしょ。約束は守らないとダメだよ」

「妙に真面目だなあ、お前」

「信頼と信用は大事なんだよ」

「まあ分からんではないが、あの3人をぶっ殺せば、約束なんて無かった事になるだろ」

「その発想は無かったなあ」


 こんな物騒な男、いくらイケメンでもトゥンクせんわ。

 命の危機を感じて、ザワザワするだけ。


「こっちで子供作って、連れて帰れるかな?」

「あー、どうだろうか? 試すワケにもね?」

「そうだな」


 さすがに、子供を犠牲にするのは抵抗があるようですね。

 ギリギリ伴侶として許容できます。


 この世界に来て、ちゃんと向こうに帰れたのって、私含めても3人しか居ません。


「母さんと、私と、ゲート番のおっちゃんしか、生きて向こうに帰ってないんよね」

「あのおっちゃん強いのか!?」

「そうかもねー」

「お前の初恋の相手だと聞いて驚いたが、強いというのなら納得だ」

「恋の相手に強さを求めてるつもりはないんだけどー」


 強さに惚れちゃうなら、今のスズメに惚れてるでしょ。

 尻尾見てムラムラしただけだよ。

 今思い出すと、弟の尻尾と別に変わらんね。


「くはー!この酒強いな! お前パンツ脱げよ」

「お酒が強いのと、パンツ脱げの因果関係が分からん」


 異世界転生してから初めて飲酒してますけど。

 どれだけ飲んでも、ほろ酔い気分のままです。

 私は心臓だけでなく肝臓も鋼鉄製なんでしょうか。


 スズメの方は、完全に出来上がってますね。

 私のパンツを脱がせて何をするつもりなんでしょうか。

 本能が覚醒したのでしょうか?


 しかし、スズメの本能に身を任せてみようなんて、1ビットも思いません。

 やはり、乙女は恋に落ちてなんぼですよ。


「子供作らないといかんだろ? だからパンツ脱げ」

「だいたいですねー、私が子を産んでも仕方ないでしょ」

「なんでだ? 女騎士の血が入るだろ?」

「今のあんたは女騎士じゃない」

「あ!」


 今のスズメは男だから女騎士じゃありません。

 必要なのは、女騎士の子供なのだから。

 んー? 何か違う気もしますね??


「でもお前の子供も必要だと思うぞ?」

「なんでよ」

「帝国の魔法使いはお前しか居ない」


 王女も魔法使ってた気がするけどね。

 あと、母さんも居るよ。

 でも、他には居ないか。


 王立魔導士共は童貞魔法使いだし。

 なんだよ、生涯童貞なら魔法使いになれるって。

 そんなワケあるか。


 そうかー、私って女騎士よりも希少種じゃん。

 子を残す義務があるなあ。

 

「スズメちゃんは知ってたの? 魔導士が魔法使えないって」

「んー? お前らが魔法使ってるとこって見た事ないからなあ」

「そういえばそうだった」


 治癒も、武器防具の修理も、索敵も斥候も、全部不要だもんね。

 女騎士が優秀過ぎるから。


「お前と魔法通信だっけ? あれもあの一回きりだよ」

「じゃあ、本隊への通信はどうやってんだろ、童貞共は」

「なんか、板チョコみたいなので会話してたぞ?」

「もしかして、ソレって地図が見れたりする?」

「ああ、ソレ見て道案内してたぞ」


 それってスマホ!?

 そんな超科学があの国にあったの!?


 そういえば、シャワートイレも、自動給湯のお風呂もあったな?

 案外、近代社会だったわー。


「私、そんなの支給されてない」

「だって、お前イジメられたんだろ? 他の魔導士が悪口言ってたぞ」


 小学生男児ですか、あいつら。

 帰ったら滅ぼしてやろうかなー。

 今や私は、帝国の終身名誉王女という存在。

 きっと許されます。


「ちょっと帝国に帰っていいかな?」

「えー、このお酒全部飲んでからにすゆー」


 ダメだこいつ。

 こういうのに絆されちゃうのも、ラブコメの定番ですけどね。

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