13. 夢見る乙女たち
「わららは、王国の王、キル・ザ・キングじゃ」
王国から使者が来た、というので通したら、王でした。
こいつも女です。
名前がすげえ。自分で自分を殺しちゃうの?
「最大の敵は、常に己自身なのじゃ」
「へえ、カッコいい」
ポンコツ王女を出すと、またやかしそうなので、僕と女騎士ちゃんが代理で謁見中だよ。
「お茶ドゾー」
キル国王が、ギョッとした顔でお給仕さんを見る。
だって、全裸奴隷の聖女だからね。
首輪だけ嵌めて、スットンツルリンの全裸。
おしりには、プリンの入れ墨。僕が魔力で彫ったよ。
首輪に繋がった鎖を持っているのは、うちのポンコツ王女だよ。
「えーっと、わらわにはどんな入れ墨が?」
いきなり降伏宣言ですよ。
まだ、何も始まっていないのに。
勝手に全裸になってるし。
あー、こいつ巨乳ですよー。
スットンツルリンの聖女にも惚れちゃいそうだけど、こっちもいいですね。
どうあがいても子供は出来ませんが。
出来ないよね?
「うちの猫耳魔法少女隊が逃亡しちゃって、聖国に行ったはずなんだけど」
「確かにうちに来たよ。アタシを暗殺しようとしたから、処刑したのだけど」
「逃げられちゃいました?」
「墓に埋めてやろうとしてら復活した、何アレ?」
「猫魔獣はそういう生き物なんですよ」
聖女と王の全裸会談です。
歴史を動かすワンシーンなんですけど。
撮影は出来ませんね。
この世界には、カメラが無いからどうせ無理だけど。
「復活して何処行ったでやんすか?」
うちの王女も全裸で参加です。
何やってんだ?
「おい、お前ら。全裸で会話するなら風呂へ入ろう」
「そうですわね」
「そうしよう」
「そうでやんすなー」
入浴シーンもラブコメの鉄板ですよね。
ラッキースケベという必須要素が致命的に不足していますけど。
「猫耳が何処へ行ったのかと言えば、僕に心当たりがあるよ」
「何処ですの?」
「ここではない理の異なる世界だよ。追いかける事も出来ないし、あいつらが戻って来る事も出来ない」
「そんな世界が。人類が魔法を制御するのは無理だと言うことか」
「そんな大層なもんじゃいよ?」
魔法とかどうでもいいですよ。
三国は対等合併する事がすんなり決まりました。
共通の敵を得たからです。
「聖国の男共がバカなのは見たでしょ?」
「ああ、あの商人達ね。確かにバカの子供は産みたくないなあ」
「王国も女系社会なんだ。男はクズしかおらぬ」
「じゃあ、あっしら協力出来るんじゃないですかね?」
共通の敵とは、少子幼齢化。
どの国でも、人口が減り続けているのです。
誰も子供の作り方を知らないのです。
王の勅命が、世界共通の課題へと格上げされました。
「では、このお二人を中心に、連合軍を編成しましょうか?」
「軍って、何処と戦うんだよ」
「敵は常に己自身なのです」
恋愛とは己との戦い。
乙女の戦。
そうかも知れないね。
「では、全てお二人にお任せしますので」
「あっしが付き人をして報告するでやんすよ」
いや待て、と。
お前が邪魔してるから、こいつらツガイにならないんじゃないのか、と。
おお、何かまとな意見を初めて聞きましたよー。
聖女と王女は、少しはラブコメが分かるようです。
「では、あっしは帝国に戻って王女やってますんで」
「必要なものがあれば、いつでも聖宮をお尋ね下さい」
「王城でも待っているぞ」
「帝国には、お前らの帰る場所は無いでやんす」
「なんでだよ!?」
そういうイジメは令和の世ではコンプライアンス違反で笑えないんですよ。
「終身名誉王女と女王に任命するから、いつでも帰って来るでやんすよ」
なんて事でしょうか。
僕と女騎士ちゃんは、三大列強全てで、国家の重鎮の座を貰いました。
何処へ行っても好き勝手に出来ますよ。
ただー、与えられた重責がー。
「だから、早く子供作ってね」
みんな肝心な事を忘れてますよ。
僕も女騎士ちゃんも乙女なのです。
乙女同士がツガイになっても子供は出来ません。
出来ないよね?




