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女騎士の大任 ~乙女の恋が帝国を滅亡の危機から救う~  作者: へるきち


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11. 今度こそ馬小屋なんだけど

「いってーな! なんでいつも俺を起こすんだ。せめて、口の中に手を入れるのやめろ」


 うるさいよ?

 僕はまだ眠いんだ。


「重いんだけど」


 胸の辺りに重圧を感じて目を開けると、漆黒の猫がスピースピー言いながら寝てる。


「え? 僕、猫を産んじゃったの?」

「何寝ぼけてるんだい? その子は、ここに棲み着いてた猫だろ?」

「そうだったね」


 ネコと書いて神と読むくらいだ。

 猫も神獣だったんだね。

 アマテラスと名付けて、飼う事にしたんだった。

 他には、フェニックスのボンジリと、ユニコーンのサクラが居るよ。

 ペガサスは、女騎士が名付けると言っている。テイムしたのが彼女だからね。


「母さん、ご飯」

「母さんってのもうやめにしないかい? あんたも、もう大人だろ」

「そうだね。もう自立しようか。母さんの名前教えてよ」

「魔女の名は明かせないって言ったろ、誰か適当につくておくれよ」


 かつて母さんだった14歳女児は、ぶつくさ言いながらも、巨大な卵焼きを作ってくれた。

 こいつとは血の繋がりもないし、元から友達のようなもんだ。

 別に何も変わらないね。


「ところで、卵なんてあったっけ?」

「あんたが産んでた」

「ちょっと!?」


 食卓には、他に3つの生卵がある。

 ひとり一個づつ産んだのかな?


「食べて大丈夫かな?」

「無精卵だろ?」

「そうかなあ」

「白い液体は卵に直接ぶっかけないと」

「そりゃ、魚の場合だよ」


 まあ仕方ない。

 もう卵焼きになったのだ、命は美味しく頂く義務があります。


「うま、くはないな」

「そうだろうね。ほんとはペガサスの卵だから」

「なんだよ」


 ペガサスの卵かあ。

 このペガサスはメスなんだね。


 ユニコーンも何故か居るはずの無いメスだし。

 猫もメスだ。


 このパーティにはメスしか居ない。


「ペガサスの加護って何? ポンコッツちゃん」

「それ私の名前かい? 他のにしておくれ」


 うるさいなあ。

 だったら真名を教えろよ。


 魔女だろ?


 ジジかな。


「そりゃ猫じゃないかい?」

「じゃあ、ポチ」

「そういう問題じゃないだろ?」


 もう魔女で良くない?

 僕も魔女だけど。


「マージョ」

「もうちょっと考えて欲しいね」


 僕がミーナだろ?

 だからー。


「なんで僕はミーナなの?」

「ミル、ミナイ、ミロの三女神にあやかったのさ」


 見ざる、言わざる、聞かざる、みたいな?

 なんだいそれ。そんな神話知らんぞ。


「じゃあ、ミレーかな」

「あんたと同類は嫌だ」


 ほんと、うるさいな!?

 僕と同類じゃないか。


「違うよ。あんたは決定的に私とは違う」

「まあ、それは分からんでもない」


 魔法を学んだ世界が違うからね。

 同じ魔女とは言えないか。


「ワラスボ」

「それ怪獣かなんかじゃないの?」


 テラワロス。


「テラ」

「それでいいよ、もう」


 うーん、アマテラス並みに大層な名前をつけちゃったぞ。


「で、ペガサスの加護って何?」

「知らないよ」


 なんだいそれ。

 ところで、僕達は妊娠したんじゃなかったの?


「そんなミラクルあるわけないだろ。ただの食あたりだよ」

「僕の水ってそんなに危険なのかー」

「毒殺に使えると思うぞ」

「そうでやんすなあ。あっしらは不老不死ですゆえー、助かりましたけどー」


 そういう事か。

 いや、どういう事だ?

 僕は水飲んでないんだけど。


「反動だよ。魔法を使うと、代償を持っていかれるか、反動が返って来る」

「そういうこと」


 じゃあ、あの尻尾から出て来た白いのは?


「膿だよ」

「シンプルだった」

「この世は、割とシンプルだよ。あんたが複雑に考え過ぎなのさ」

「その通りかも」


 なんだー、処女懐胎の魔法なんて無かったんかー。

 いや、無くて良かったよ。

 いつ何がきっかけで妊娠するか分からんのじゃ、一緒にお風呂にも入れやしない。


「よし、ボクサツだ」

「なんだよ、朝から物騒だな。女騎士ちゃんは」

「ペガサスの名前だよ」

「あ、そう」


 どうかと思う。

 まあ、ボンジリとサクラもどうかと思うけど。

 食べる気満々じゃん。


「よし、ご飯も食べたし、片付けはめんどうだから、どうでもいいとして」

「そろそろ行くかい?」

「オリハルコンの換金なら、やはり王都でやんしょか?」


 そうだねー?

 でも、50キロもあるんだよ?

 相場通りなら、50億円。


「そんなに買い取れる店も無いだろうねえ」

「価格も暴落しちゃうだろうねえ」


 だったら、王国とあと一個どこだっけ?

 よそで売っちゃおう。


「えー、戦略物資でやんすよー? 敵国を強化しないで下さいよー」

「いや、経済的に壊滅させてやるよ」

「そんな侵略方法が!?」


 そうと決まったら、王国へ行くよ。ここから近いんでしょ。


 サクラに頼んだら、僕達が乗った馬車を引いて走り出した。


「ユニコーンってナビゲーション魔法が使えるのかな?」

「知らんよ。どうせ道なんか分からないんだ、任せてみようよ」

「そうだね」


 日が暮れて、馬小屋に辿り着きました。


「この牧場は廃業したのかな? 誰も居ないし、馬も居ない」

「いいじゃないっすかー。馬小屋で乙女が眠れば妊娠しますよ」


 そんな奇跡があるもんか。


「ご飯にしようか。そろそろドラゴン肉が腐っちゃうよ」

「三ヶ月も腐らないなんて思わなかったよ」


 ドラゴン肉には、有機物を腐敗させる菌がつかない。

 菌には、ドラゴンの加護が呪いとして作用するのだ。

 それでも、3ヶ月も経つと、加護が落ちてきたのか、もう食べるにはギリギリな感じ。


「うめー」

「これだけドラゴン肉食べれば、不老不死は確定だね」

「いいんだか、悪いんだか」


 少なくとも、ラブコメには敵だね。


「アタイ死んじゃうかも!?」


 って危機感が無ければ、恋になんて落ちないでしょ。

 だって繁殖のための情動なんだから。


「アタイ不死身だしー」


 なんて、人生舐めプしてる乙女に、繁殖したいという欲求は湧いてこない。

 子を残さなくても、自分自身がいつまでも生きているのだから。

 

 やはりと言うべきか、言うまでもないと言うべきか。


 馬小屋に寝たところで、誰も妊娠しませんでした。


 殺戮の修羅に、侵略の修羅に、世界を滅ぼす修羅だ。

 聖母要素なんて1ビットも無い。

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