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転校生の下野さん、ド田舎でちんちんをつくる。  作者: 雨夜かおる
きょぬー後輩が勝手にカノジョを名乗ってる
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午後イチの現国とか無理。寝る。

 昼食を終えてすぐ、俺は机に突っ伏した。


「キヨ。大丈夫か」


『キヨくん。なんだか最近疲れてるね』


 オヤカタとヨウキャに心配される。

 ムラサキとうらかも、チラチラ見ている気がする。声はかけてこないけど。


「ヨウキャが薦めてくれたギャルゲーが面白くてな。今は巨乳後輩キャラを攻略中なんだ」


『僕は何も薦めてないけど……』


「あれ。そうだっけ」


 眠すぎて適当に喋ってしまっている。

 学校とバイトを両立させるって大変なんだな。今まで自由に使っていた放課後タイムがなくなっただけなのに、しんどいって感じる。


「顔洗ってくるわ」


 親友たちに断りをいれて教室を出る。

 ガンテツと速水が待ち構えていた。


「こわっ。出待ち?」


「最近付き合いが悪いぞ清浦。サッカーはどうした」


「何言ってんだガンテツは。サッカーはもういいって」


「トライアスロンの期限が迫ってる。早くサインしてくれ」


「速水の方はガチで何言ってんだ」


 そのフラグまだ折れてなかったのか。

 やいのやいの騒ぎ立てる知り合い2人の包囲網をなんとか突破。

 まったく。今は体力を温存しておきたいのに。走ったせいで余計に疲れるじゃないか。


 廊下で息を整えていると、トントンと背中を叩かれた。


「パイセン! やほーっす!」


「げっ、後輩……」


 なんでこんなところに。

 つーか、そんな大きな声を出さないでほしい。頭に響く。


「ここ1年生のフロアっすよ」


 逃げるのに夢中でそんなところまで来てしまったか。


「次、体育か」


「っす~」


 後輩がその場でくるりとターンした。


「………」


「どしました? パイセンめっちゃガン見ですけど」


「上着を羽織ったほうがいい」


「えー!? 夏っすよ! もう暑いっすよ!?」


 そだねー。アツはなついもんね。

 だがここで引き下がってはいけない気がした。


「よく聞けコウハイ」


「うわっ。急にマジな顔」


「俺はこの場で一生のお願いを使ってもいいと思ってる」


「そんなにっすか!?」



 午後一発目の授業は現国だ。担当はキズナ先生。

 万人が共感してくれると思うけど、この時間の授業が一番眠い。普段は割とマジメに授業をきいている俺も、正直つらい。連日のバイトの疲労も原因だろうけど。


 ちなみに下野うらかは思いっきり寝ている。


「せんせぇー。下野さんがクソ居眠りですー」


「放っておいてあげなさい」


 と言いながら、キズナ先生は赤ペンでなにやらチェックをつけていた。


「俺も寝ていいですかぁー?」


 先生は無言で赤ペンを示す。

 評価と引き換えってわけね。最近は遅刻ペナルティも多かったし、ここは起きておくか……。


「でもやっぱ、ねみぃ」


 次第に強まってきた眠気に抗えず、机に突っ伏しそうになったとき。

 遠くから元気な声がきこえてきた。


「いっちに、さんしー!」


 すぐに誰だかわかった。

 吸い寄せられるように、視線は窓の外へ。


「ごーろく、しちはち!」


 大勢の体操服のなかに、ひときわ目立つ赤髪の後輩。

 ララコの張り切った準備運動に、周りの生徒たちもつられて笑っている。あいつクラスでもそういうキャラなのか。っていうか結局上着脱いでやがる……。


「はーい。2人で組作っていけー」


 うわっ、出た。

 お一人様に容赦ないフレーズ。


 こういうの、自分があぶれる分にはいいんだけどな……。


 仲良い同士でペアが決まっていく中、ひとりだけ動かない女の子がいた。

 髪をおさげにした、いかにも気弱そうな子だ。オロオロと立ち尽くしている姿にこっちが落ち着かなくなる。心が痛いというか……。


 と、誰かがおさげ少女の手を引いた。


「おおっ!?」


 赤髪の後輩が隣に立つ。お前、お前……!


「ええやん!」


「こらー、清浦。次騒いだら減点だからなー」


 断られても断られても、後輩はしつこく話しかけている。

 やがておさげ少女は根負けしたのか、ララコの手を取った。その表情は満更でもなさそうだった。


「ヨウキャ、ヨウキャ。見てくれ。てぇてぇがある」


『僕、目悪いから見えない(´・ω・`)』


 はしゃぐ気持ちを抑えられない。俺は目が離せなくなった。

 その視線を感じたのだろうか。ララコがふと顔を上げる。


 バッチリと目が合ってしまった。


 あ、やべ。バレた。

 てぇてぇの邪魔をしてはいけない。ここは退散して……。


「パイセーン!!」


 ララコは笑顔になっておもいきり両手をブンブン振ってきた。

 おいおいやめろ、ガチで目立つ。だから飛び跳ねるなって!



 現国の授業を受けつつも、ララコの様子が気になった。

 今日の体育はソフトボールらしい。何気なく眺めるだけのつもりだった俺は次第に顔が引きつっていくのを自覚していた。


「へ、へたすぎる」


 ララコは本当に運動ができなかった。

 バットを振っても当たらないのは当然として、キャッチボールすらままならない。ほとんどが変な方向へ飛んでいく。真下に叩きつけてバウンドしたボールであごを打ったときはコントなのかと思った。


 なんなら、おさげ少女の方が全然上手い。投球フォームがきれいで、バットのスイングも動作に無駄がない。あんまりにもひどい有り様のララコに根気強くいろいろレクチャーしているみたいだった。なんか立場逆転したな。ララコが世話のかかる子供に見えてきた。


 いよいよ授業も終盤だ。最後に試合をするらしい。

 どういう因果か、ララコの守備位置は俺の教室からすごく近いところだった。


 ララコが苦笑いで見上げてくる。


『ヘタクソ』


『そこまで言わなくてイイじゃないっすか!』


『守備位置ちょっと偏ってる。もう少しこっち側に寄れ』


『こっち?』


『そう。そっち』


 そこでなら捕球チャンスがある。


『それからそれから?』


『あとは……』


 とかやっていると、カキーンと良い音が響いた。

 あ、球きてる。しかもピンポイントにララコの立っているところに。


『え、やばやば。パイセンどうしたら!?』


『もうそこに立ってろ! 腕のばせ! かまえろ!』


 ハラハラしながら成り行きを見守る。

 放物線はミットから微妙にずれていた。このままでは取りこぼす。

 そのときララコが尻餅をついた。腕をのばしてバランスを崩したせいだ。


「あっ」


「うん?」


 ボールはミットにきれいにおさまっていた。


「うおお~っ!?」


 ララコは立ち上がり、ボールを見せつけてきた。


「パイセーン! みてみて! とれたー!!」


「っしゃあ! ナイスぅ!」


「こらー、清浦。1年女子のソフトボールに興奮するなー」


 結局減点をくらった。

 でも、まあいいか。


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