はじまり
「つまんねえ」
それが、この世界に生まれ20年間育った俺、有我祐也の感想。
平凡な家庭に生まれ、特に勉強ができるわけでもなく、特に運動ができるわけでもなく、特技がギターという正に普通の大学生。今通っている大学も全国的に平均的な学力レベルの場所だし、サークルにも所属していない。面接で「あなたの長所は?」と聞かれても恐らく答えられないであろう。それくらい、平凡な人間なのだ。
「・・・腹減った。コンビニで何か買うか。」
昼時ということもあって、空いたお腹を満たそうとベッドから出てすぐに着替え、コンビニに向かう。
それにしても暑い。ニュースでは今年は冷夏だと報じられていたが、それを加味しても暑い。これだから夏は嫌いなんだ。
「おー、ちびっこは元気だなあ」
家から少し歩いて、コンビニまで目前というところで子供たちが歩道で追いかけっこをしているのが見えた。
そう思ったのも束の間、
「まっ!お前そっちはダメだ!」
突如子供の一人が、他の子供達から逃げるように車道に向かって走り出した。
すぐ先から大型トラックが走ってきているにもかかわらず。
このままだと衝突する。
子供は気付いていない。トラックは今から減速しても間に合わない。
それを確認した瞬間、俺の体は飛び出していた。
その勢いのまま子供を吹っ飛ばすことに成功する。
そして俺が最期に見たのは、大きな大きな鉄の顔だった。