服を脱いでください、私頑張りますから
「な、なにをいってるんですか! って痛てて!」
「おいおい、大きな声をだしたら傷が開くよ?」
(言わせたのはあんたでしょうが)
つい大きな声を出してしまった僕はお腹を抑える。
ちぎれた腹筋が血をにじませそうだ。
「いやー、あんなにかわいい女の子達3人も選べるなんて君は幸せだね」
うらやましいよと、両手を上げてやれやれと伊集院は軽口をたたく。
「ち、違いますよ、しかも一人妹だし。なんなんですかその質問は」
「いやいや、大事な質問だよ? まぁまだ選べないなら仕方ないが。まぁ冗談はおいといて…」
(冗談っていってしまってるし…)
「退院してもいいんだがね? 実際筋肉繊維がちぎれているだけだし。とはいえ一人で立つのも大変だから看病してくれる人がいるのかと思ってね?」
「い、いるにはいますが…」
「よし! じゃあ退院だ! 君の妹さんが、治療費を聞いて真っ青になっていたからね」
確かに僕の家は火の車。
まだ王シリーズの納品前なので、お金もない。
なので翌日退院が決まった。
迎えに来てくれたのは…。
「剣也君、退院おめでとうございます」
レイナだった。
レイナは病室の扉を開けて、僕を迎えにきてくれた。
学校を休んできてくれたので、奈々と美鈴はいない。
昨日奈々に連絡したら誰が行くか揉めてるからまた連絡すると言われた。
揉めてる? そんなに面倒なの? お兄ちゃん泣いちゃうけど。
そして来たのがレイナだった。
そのレイナが、なぜか僕の前で背中を向けてしゃがんでいる。
まるで、背中に乗れと言わんばかりに。
「レイナ? 何をしてるの?」
「歩くのが大変かと思って…」
「レイナ、車いすってのがあってね?」
「……失礼しました」
(ボケなの? ボケてくれたのか? 突っ込みづらいんだけど…本気か冗談か全然わからんし)
そして僕は車椅子でレイナに押されながら退院した。
二週間ほどで歩けるようになるらしいので、それまでは車椅子生活だ。
「では、伊集院先生。お世話になりました!」
「あぁ、また二週間後にね!」
病院の外にでる。
日差しが眩しい、光が目を焼く。
久しぶりの外だからだろうか、こんなに日差しって眩しかったっけ?
というよりこれはフラッシュ!?
パシャパシャパシャ!
(カメラの音? これは写真を撮られてるのか?)
すると、多くの人間が大きなカメラを担ぎながらこちらへ走ってくる。
「蒼井レイナさん! そちらの車いすの方とはどういった関係なんですか!?」
「彼氏さんですか!?」
「同じ家に住んでいるとの噂もありますが!」
彼らは記者なのだろう。
レポーターのような女性たちが我先にと僕とレイナを取り囲む。
一瞬で人ごみにまみれて僕らは身動きが取れなくなる。
彼らは剣也の想像通り記者達。
国民的、世界的モデルの蒼井レイナのスキャンダルとあっては、取材しないわけにはいかない。
「か、彼氏さん! 一言!」
「彼氏じゃないですって!」
マイクを突き付けられた僕は逃げることもできず、マイクで顔をゆがめる。
って痛い痛い、押し込みすぎ!!
「剣也君、しっかりつかまっててくださいね」
耳元でレイナがささやいた。
レイナの息が耳にかかる、思わず変な声がでる。
「へぇ?」
するとレイナが僕を車椅子ごと持ち上げた。
そして…。
「と、飛んだ!!」
「撮れ! 撮れ!」
パシャパシャパシャ!
1000を超えるステータスの力で剣也を連れてレイナは飛んだ。
瞬く間に記者達を振り切り、走り抜ける。
…
「大丈夫でしたか? 剣也君」
「無茶するな~。レイナ」
記者達を振り切って、僕らは普通の道を歩き出す。
途中何度も写真を撮られた、電車の中でもたくさん撮られたので多分明日には僕は有名人だ。
蒼井レイナに彼氏疑惑! 謎の車いすの男!
何て見出しが一面にでてしまうのか…。
事実とは違うけど、否定しても無駄だろうな。
レイナのファンに刺されなければいいけど。
まぁこの黒龍の羽衣の防御力を超えてくるような悪漢はそうはいないはずだが。
あの時の装備を僕は非具現化設定で装備している。
防御力1000を超えだすと、銃弾ですら効果がなくなる。
もはや化物と化した剣也の防御力は、悪漢のナイフごときでは傷すら与えられない。
「なんか、すごい懐かしく感じるなー」
僕らは家についた。
そして家に入り、レイナに肩を支えられながら僕は用意されていた布団に寝かされる。
レイナのステータスならお姫様抱っこの余裕だ。やだこの角度から見たらすっごいイケメン。
「お疲れさまでした」
「あぁ、レイナありがとう。ここまで運んでくれて」
「いえ、剣也君には助けられてばかりでしたので…」
すると僕を置いたレイナ深呼吸する。
「ふぅ…」
「レイナ?」
「よし!」
何かを決意したレイナは、ごそごそと鞄から何かを取り出す。
(茶色い紙袋?)
おもむろに茶色い紙袋に入った何かを取り出し僕の横に座った。
呼吸を整え、なにかを決心したように僕のすぐ横に座ってまっすぐと僕をみた。
「剣也君…私ではうまくできないかもしれないですが」
レイナの呼吸が早まる。
頬は赤く、目は潤む。
「ん?」
「服を…脱いでください」
「へぇ?」
「溜まってますよね、剣也君。私がしてあげます。私…頑張りますから!」
そして僕は服を脱いだ。




