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これは人の物語・・・ではない

祝最終回

「そんな、どうし・・・」


え、声が・・・・・・体も動かない。


「あなたの全身も凍り漬けにさせてもらいました。ああ、安心してください。命に別条がないよう調節して氷漬けにしましたから。あなたには聞きたいことがたくさんありますからね。後で温めたら特に障害もなく元に戻りますよ。一種の仮死状態みたいなものです。」


そう説明しながら、小門さんは氷漬けになった厨二病君の前に移動、厨二病君の頭に手を伸ばした。


「さてまずはこの危険物を処理しましょうか」


処理って、まさか。


小門さん井鷲掴みにされた厨二病君の玉にひびが入った。ひびは頭から首、胴体へと延びていき、そして全身にひびわれができるとバリバリと言う音と共に砕け散った。


「ぐは」


厨二病君の表面だけが。


「ががががががが、貴様が神の使いか。」


厨二病君は全身を赤々と燃える炎で焼かれながら、小門さんを殴り飛ばした。


「貴様、炎を使う悪魔憑きなのか」


見た目ではわからなかったけどどうやら氷漬けになっていた厨二病君の体の表面にはものすごく薄い氷の膜ができていたようだ。


あのひびわれは小門さんが氷漬けになった厨二病君の頭を握りつぶそうとしてできた物じゃなく炎で脆くなった氷を厨二病君が無理やり動いて引っぺがそうとしたからできたものだったんだ。


「ががが、貴様ごときがこのガハド様を倒せると思ったか、このうつけが」


ガハド・・・それが厨二病君の本当の名前。


でもどこからどう見ても厨二病君って日本人だけど。もしかしてハーフ、とか。


「ガハド、それが貴様の・・・・・・いや、その宿主と契約した悪魔の名か」


え、悪魔、契約、宿主って


「いや、貴様の名で合っておるぞ。宿主にはしばし眠ってもらっているからな」


「悪魔憑きについての情報は上から聞いていたが、まさか本物に出会えるとはな」


「光栄だろ」


「厄災だ」


小門さんと厨二病君、ガハドが同時に腕を薙いだ。瞬間


うわっ


冷気と炎が激突。


しばらく拮抗する白と赤のオーラだったが、徐々に赤のオーラが白のオーラを押し始めた。


「く」


小門さんの近くにいた私は最初、凍てつく寒さを肌に感じていたけど、白のオーラが押されるにつれ、徐々に温かく・・・


「あっつ」


ガハドの炎で熱された体は仮死状態から復活した。


復活はしたけど、今度は暑くて気を失いそう。


「ぐ、ぐあ」


小門さんはそのままガハドの赤いオーラに押され全身の灼熱の炎に包まれた。そして


ドサッ


倒れた。厨二病君が。


炎に包まれた小門さんの全身からは冷気ではなく、湯気が立ち込んでいた。


小門さんは全身にひどいやけどを負っていたが、それでもパラディオで常人をはるかに超える身体能力を持つ小門さんは気絶をすることもなくガハドの前に立っていた。


「時間、切れ、ですかね。悪魔がこんなに長時間、契約を果たしてもいない宿主の体を使って現界できるわけもありませんし。」


そう言いながら、小門さんは倒れる厨二病君の方へ焼けただれた足を引きずりながら歩いて行った。


それを私は


「待ってください」


阻んだ。コガネムシの時にセイラを庇った時と同じように厨二病君の前で腕を広げて、一般人である私が殺虫課最強の戦士にして日本唯一のパラディア、小門時雨と向かい合った。


「何をしているのかわかっているのですか、殺虫課の業務を阻むなんて、普通の公務執行妨害では済みませんよ。」


「わかってます」


「そいつは普通の人間ではないんですよ。悪魔憑き、人類に危害を加えるかもしれない、下手をすると虫よりも同じ人類の脅威になるかもしれない者なんですよ」


「それも、わかってます」



「あなたは彼と何の関係もないのでしょ。たまたま会っただけ、そんなに親しいわけでも長く付き合っているわけでもない。そんな者に自分の命を懸けるなんて、馬鹿らしいとは思わないんですか」


「思います」


「ならばなぜ」


さっきまで冷静だった小門さんが声を荒げる。


小門さんの言っていることはようく分かるし、納得もする。だけど、


「それは、厨二病君だって同じじゃないですか」


肯定できない。私の心が、厨二病君を助けなきゃって叫んでる。


「厨二病君だってそうじゃないですか、逃げようと思えばいつだって逃げれた、私なんて今日あったばかりの見ず知らずの赤の他人、厨二病君からすれば自分とは違う別の生き物、そんな奴見捨てて早く逃げればよかった。そうすれば、トノサマにも小門さんにも自分の存在がばれずに平穏に生きることが出来たのに。」


喉が、痛い。冷気とか熱気とかのせいじゃない。


「別にアレはあなたを好き好んで助けたわけではありませんよ。たまたま成り行きの結果としてあなたが勝手に助かっただけです。」


「それでも」


私は痛む喉で、必死に叫んだ。


そんな私を小門さんは冷たい目でじっと見ていた。


やがて、彼は腕を私に向け


「仕方ありませんね。ではあなたもそれと一緒に死になさい」


冷気を私に向けて放った。


「く」


左に向かって走りなさい


えっ


冷気が私の体に触れる直前、どこからか女の人の声が聞こえた。


速く


私は何かに押されるようにその声に従って厨二病君を連れて走った。


冷気のせいで視界が最悪だけど無我夢中で声の通りに走っていくと、そこは


「えっ」


空の上だった。


あっ、そういえば今展望台の上にいるんだった。ということは・・・


「ぎゃあああああああああああああああああ」


五百メートルからのひもなしバンジー。


「落ちるうううううううう」


このまま落下して厨二病君共々死亡。デッドエンド、回避不可能。かと思ったけど


「あ、痛」


どしんと何かひんやりとするものに私はお尻から激突した。そして


「ひゃあああああああ、なにこれえええええええ」


私は五百メートル上空から地面に向かって、滑った。


どう考えても自然にできたんじゃないであろう、氷の坂を滑り台みたいにしてとてつもないスピードで滑り落ちた。


「ひゃああああああああああ」


普通こんな高さから滑り台したらお尻の皮が摩擦でめくれあがっちゃうけど、氷のおかげでそんなにお尻は痛くなかった。ただ氷だから冷たいし、摩擦係数も小さいから、ジェットコースターよりもはるかにスピードでてすっごく怖いけど。


「あ、あ、あ」


氷の坂を滑り降りた時、私の精神はもう灰になっていた。


「何をぼけっとしているのかしら」


「へ」


腰を抜かし、魂も抜け落ちかけている私に突然後ろから声をかけられた。


振り向くとそこにはきれいな紫色の着物?じゃなないよね、なんか着物のような和風の服を着たものすごい美人が後ろに立っていた。


「はやく、行くわよ」


その美人は私と目が合うとすぐ、隣で気を失ってた厨二病君を背負い近くの路地裏の方へ足を向けた。


「え、行くってどこに」


私の問いに、美人は振り向くことなく答えた。


「私の研究所よ」


「研究所?」


この時の私は知らなかった。


厨二病君との付き合いが私の想像をはるかに超えるほど長いものになるなんて。


この時の私は知らなかった。


トノサマを超えるほどの脅威がこれから次々と現れることを、そしてその脅威に私たちは立ち向かわなければならなくなることを。


この時の私は知らなかった。


この後起こる世界を巻き込んだ大戦の中心に自分のような一般人が飛び込まなければならなくなることを。


これは天使と悪魔と虫の物語。人の物語ではないのだ。










「あなた・・・なにものですか」


「カブト、そう名乗っておきますよ」


そう言って突然冷気から現れ小門に一撃見舞った謎の生き物はその場から姿を消してしまった。


今まで読んでくださりありがとうございました。


続きを書く予定はございませんが、もし総合評価が100を超えたら考えようかなと思います。(絶対無理と思う)


一章を書き終えられたのもここまで読んでくださったみなさまのおかげです。ありがとうございました。


しばらくはリアルの事情で投稿できませんが、作業の感覚を忘れないために軽い気持ちで場当たり的に書いていきたいと思います。(投稿するかは未定)


では皆様次回作を投稿した際はまた読んでいただければと思っています。それではここまでお付き合いいただき有難うございました。


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