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天使と悪魔と虫

年越ししても投稿はいつも通りで気走です。

「イナゴ・・・ですか」


忌々しくも空中から私たちを見下す虫けらは自分のことをそう言った。


恐らく本当なのでしょう。


取調室から女をさらったあの虫もそうですが基本的に虫けらどもは我々人間のことを劣等種と見下してしますからね。


わざわざ自分たちより劣っていると思っている者に嘘を吐いたり駆け引きをしたりすることはないでしょう。


つまり、彼が言ったことはすべて真実。彼の名前はイナゴで、私が探していたこの町を覆っている羽虫どもをどこぞから連れてきた元凶、ということですね


「しゃしゃしゃ、おっお前は」


虫けら、イナゴは目の前の少年に気づくとその下品な笑いを止めた。


「トノサマ様が探していた悪魔憑きの少年か」


虫けらの言葉に少年は視線だけを動かし私への臨戦態勢は崩しませんでした。


この少年、中々戦い慣れているみたいですね。


しかし、この状況、一体どうしたものでしょうか


空中から現れたこの茶色い虫けら、恐らくあの女をさらった虫の下っ端でしょう。


一対一なら私の敵ではありませんが、目の前の少年もとなると話は別。


彼のパラディオにも匹敵する強靭な身体能力は脅威ですからね。


さすがの私でも無傷での討伐は難しいでしょう。


この後にあの筋肉ダルマと戦うことを考えると、ここは・・・


「あなた、さっき銀行で虫から助けた女性を覚えていますか」


「さっき・・・・・・」


私の問いを聞いた少年は臨戦態勢のまましばしうつむいて記憶を探り始めた。


女を事情聴取してある程度は少年の性格については知っていましたが、まさかここまですんなりと攻撃した相手の言葉に耳を貸すなんて。


知能指数はあまり高くないようですね。


「ああ、あのうるさい女か」


うるさい女・・・まあ確かにうるさそうな顔はしてましたね。


「ええ、そのハツラツとした女性です。その女性が」


そこで茶色の虫けらが私の言葉を割ってきました。チッ。


「ああ、そのメスならトノサマ様がさらった。返してほしければヘブンズタワーまで来るんだな。じゃねえとあのメスはトノサマ様のディナーになっちまうぞ」


話しを途中で遮ってきたのはいただけませんが、このバカのおかげであの虫けらがどこにいるのかもわかりました。


ここは、この少年にあの女の所まで行ってもらいましょう。あの虫けらはこの少年と戦いたがっているような口ぶりでしたし、恐らく戦闘になるでしょう。この少年の強さならあの虫けらともいい勝負が出来るでしょう。


その間に私は羽虫どもを操ってるこの茶色い虫けらを殺す、見たところこの場で一番弱いのはこの虫けらのようですからね、そしてこの虫けらを駆除した後、ヘブンズタワーへ向かい少年との戦闘で消耗したあの虫けらを私が労せず屠る。


まさに完璧、まさに効率的。自分の仕事できる加減が恐ろしい。


「仕方ありません、ここは人命第一、あなたはヘブンズタワーへ向かってください。私はこのイナゴを倒してから向かいますので」


そう言って私は茶色い虫けらに向かって右手を突きだしました。


「しゃしゃ、本当はパラディオもそこの悪魔憑きを殺した後トノサマ様が殺す予定だったが、貴様程度にトノサマ様のお手を煩わせることもない。このイナゴ様が直々に貴様を亡き者にしてくれる」


私の言葉を聞いた虫けらも私に向かって臨戦態勢を取り始めました。


虫けらにしては上出来の演技です。


「さあ、君はイヴさんの元へ、ぶば」


話している途中で私は思いっきり殴られました。虫ではなく少年に。


「いったいどういうことですか」


いつも冷静沈着、クールな小門さんと定評のある私もさすがにこれは心乱れました。


意味が分からない、なぜあの話の流れで私を殴ると言うことになんですか。


さっきした氷漬けにしようとしたことを根に持っているんですか、それでも緊急事態ですよ。そんなことをしている場合じゃないでしょ。


しかし、少年は再び私に向かって殴り掛かってきました。


私は少年の攻撃をかわしながらなぜこのような状況になったのか、今一度平静に努めて考えてみました。


一体どういうことですか、仮に少年があの女をさらった虫に自分の力では勝てないと思っていたとしましょう。


実際、私の見立てでもこの少年ではあの虫けらには勝てない。この少年の怪力も目を見張るものですが、あの虫けらを見た瞬間感じられたパワーはこの少年をはるかに超えていた。


それでも、私を攻撃するのはおかしい。


それなら空にいるあの茶色い虫けらを攻撃して二人でヘブンズタワーへ乗り込めばいいだけの話。


ならば、この少年は虫けらどもと親しい間柄なのか。


ちがう、それならわざわざ殺虫課の本部に乗り込んでまで女をさらった意味が分からない。


わからん・・・・・・どうしてこんなことになっているんだ


「ぐ」


たまらず私は手のひらから冷気を噴出、その間に少年との距離をとった。


「おいおい、てめぇらなにやってるんだよ」


そんなことはこっちが聞きたい。


呆れた様子でそんなことをいってくる虫けらに殺意を覚えるが、虫けらを睨みつける暇もなく少年が追撃してきた。


「おい、いい加減にしろよトノサマ様が待ってるんだよ、てめえいい加減ヘブンズタワーに向かえよ。あの女がどうなっても知らねえぞ」


茶色い虫けらを完全に無視して戦闘を続ける私たちに業を煮やした虫けらが少年にヘブンズタワーへ向かうよう催促しだした。


虫けらを褒めるなんて虫唾が走りますが、いい仕事です。


そう言われた少年は宙に浮かぶ茶色い虫けらを睨みつけると一言だけ言いました。


「だから、どうした」


「「え」」


今・・・なんと


「いやいや、お前がさっき助けた女がトノサマ様に攫われてんだよ。人質になってるんだよ。」


少年の答えに虫けらは慌てて今の状況を再度少年に説明しました。しかし少年の答えは変わらず


「だから、なんだ」


でした。


「いやいやいやいや、あの女はさっきお前が助けた女だろ、そいつが今まさに怖い虫に捕まってるんだぞ、食われちまいそうになってるんだぞ。助けるだろ」


あなたも虫でしょ・・・というと話が長くなりそうだったので言いませんでした。


しかし、茶色い虫けらの話を聞いても、少年は


「なんでだ」


と言って助けに行く気配は全くありませんでした。


「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」


ううむ、これはもしや私もこの虫けらたちもこの少年について少し勘違いをしていたのでは。


てっきり、少年は困った人を助けずにはいられないお人好し、もしくは何かしら助けた彼女に好意のようなものを持っているものだとばかり思っていましたが実は・・・


「なんで俺がそんな素性もよく知らん女を助けに行かなきゃいけないんだ」


「えぇぇぇぇ」


ただの気分屋だったのでは。


「そ、そんな」


銀行であの女を助けたのもただの偶然。良心からした事じゃなくてただそういう気分だっただけ。気まぐれであの女の命を助けただけだったのか。


「おい、続きをやるぞ」


茶色い虫けらが空中で肩を落とす中、少年はまた私に向かってファイティングポーズをとりだしました。


これは、まずいですね。


労せず、あの強そうな虫けらを駆除するはずが、ここでこの少年と戦えば、無傷で済まされないのは私の方。そんな状態であの虫けらと戦えば最悪・・・


それだけは何としても避けなくてばいけません。しかし、この状況でどうすれば・・・・・・


私の優秀な脳細胞がフル回転しているその時、足元のアスファルトを突き破ってツタのようなものが少年の体まとわりついた。


「なんだ、これは」


ツタは瞬時に少年の体に幾重にも巻き付きそして


「ぐぅ」


勢いよく少年をヘブンズタワーのある方角へ向かって投げ飛ばした。


「いったいどうなっているんだ」


私がこのツタの正体を知るのはもう少し後になってのことだった。



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