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始まる侵食

トノサマが聴取していた女を連れ去った後、取調室に部下の女が慌てて入ってきた。


「小門さん、大変です」


もう少し早く扉を開けていれば、私とあの苔のような虫の戦闘に巻き込まれて最悪死んでいたかもしれませんが彼女は運がいい。


そばかすをつけたおさげ髪の女、名前は・・・・・・忘れました。


まあ、運がいいと言えばあの虫に攫われた彼女も運がいいですね。あわよくばあの虫との戦闘に巻き沿いにさせて、重要参考人死亡、謎の悪魔憑きの少年を追う手がかりなしとしたかったのですが・・・


「わかっています、聴取していた女を虫に奪われました。すぐに後を追う準備を・・・」


私はおさげの部下に指示を出しながら、虫を追うための準備を始めました。


といってもいついかなる時でも戦闘できるよう備えてありますから、確認ぐらいしかすることはないんですけどね。


全く、あんな虫けらに出し抜かれて内心、はらわた煮えくり返る思いですが、今すぐ追えばまだ定時帰宅は夢ではありません。


殺虫課は虫を相手にするのだからちゃんとした取調室なんていらないだろう、なんて言ってこんな簡素な部屋を取調室(仮)にした上司を今すぐぶん殴ってやりたい気分ですよ


「あ、あの」


何か言いたげな様子ですが、私には関係ありません。下手に話しかけて、手間を取らされればそれこそ定時帰宅の夢が潰えてしまいます。


あの虫を追うぐらい私一人で十分ですからね


そそくさと準備を整えた私は一人、殺虫課本部から外に出ようと歩き始めました。


何やら周りが騒がしいですが気にする必要はありません。


所内を飛び回る羽虫を手で振り払いながら、私は本部入口のドアノブに手をかけました。


「あ、あの」


まだあのあの、言っていたんですか。仕方ありません、外に出たらこの子の話だけは聞いてあげましょう。


レバー式のドアノブを押し込んで、扉を開けるとそこには


「なんだ、これは」


町全体に砂嵐ならぬ虫嵐が吹いていた。


何が起こっているのかわからず立ち尽くす私に、隣で疲れ果ててるおさげの部下が説明した。


「突然虫が大量発生して、町全体を飲み込んでしまったんです。」


・・・・・・・・・・


「なぜそれを早く言わないんですか」


報告が遅い部下に注意をしたら、


「言おうとしたら小門さんが勝手にそそくさと行っちゃったんじゃないですか」


逆切れされました。


まあ、今回は私にも多少の非があるので責は問わないことにしましょう。


「しかし、まさかこれほどの虫が一挙に発生するとは、前代未聞ですね」


未だ何か言いたそうな顔をしていましたが、なにやら諦めたような溜息をついて、報告の続きを始めました。


諦めは大事ですよ、私も使えない部下と使えない上司に挟まれ日々苛立ちを覚える毎日ですが、あきらめてしまえばそれなりに楽しいものです。


どうやればあの無能どもとの関わりを最低限で済ませられるのかとか・・・考えると楽しいですよ。私のお勧めの遊びです。


「この虫たちの発生原因はいまだ不明。ですが町中のあちこちで救援要請が寄せられています」


「なるほど」


見ればだいたい想像がつく報告をしてくれてありがとうございます。おかげで少しこの状況について考えることができました。


私は目の前でびしゃびしゃ汚らしい羽音をたてまくる虫けらの大群を観察しました。


触りたくないのでようく見て観察しました。


どうやら群れ成して飛び回っているのはさっき壁から取り調べ室に入ってきた虫と同じ様ですね。


この虫自体に特段危険性はないのでしょう。店先に出してた野菜や穀類なんかは全部食い散らかされるかもしれませんが。さっき取調室に入ってきた羽虫たちも耳障りな羽音をたてるだけで特にかみついてきませんでしたしね。


しかし、この規模を無視するわけにはいきませんね。町全体を覆うほどの虫の大群。


これを放ってあの虫を追えば確実に減給、最悪懲戒。


「仕方ありません、まずはこの虫を発生させてる原因を探りましょう」


残業決定、定時帰宅と言う些細な夢が破れた瞬間ですね


「わかりました。大量に寄せられている救援要請はどうしましょう。中には各界の大物からの物もあるのですが」


放っておけばいいでしょう。救援要請が出来ているだけましです。と言いたいところですが、それを言えないのが宮仕えの悲しいところですね。


「それはあなた達に任せます。私は原因究明のためこの危険生物の群れに突っ込んできますので、報告は原因を取り除いた後にまとめてお願いします」


嘘です。


この虫は恐怖をあおるためのものであって殺傷能力は皆無です。ですが、こう言っておけば、良い上司を演出できますし、わざわざ無能な部下を連れて行って変な縛りプレイをしなくて済みます。


現にほら、私のことを尊敬の目でおさげの部下が見てきています。


うっとうしいから早く仕事に行ってほしいのですが


「わかりました。こちらは私たちが何とかしますから、どうか小門さんも御無事で」


そう言ってようやく彼女は殺虫課本部の中に入っていきました。


断っておきますが、別に彼女たちを危険な目に晒したくないからこんなことをしたわけではないですよ、あくまで効率を重視しただけです。


・・・・・・・本当ですよ。




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