第一章【異世界転生なんてなかったんや】
前書きと言われてこれを伝えよう!ってことが思いつきません!
まずは読んで楽しんでいただければ幸いです。
その日は唐突にやってきた。
よくある異世界転生もののアニメや漫画では交通事故による死亡や、誰かを助けたときに神様的な存在が出てきて「かわいそうだから」とか「君は別の世界で必要な存在になる」とか言われて、超人的な能力を持って転生する。そんな感じのことが起こるのかと思ってた。
目の前の狐が「それ、どんなおとぎ話?」というまでは。
「君殺されちゃったねぇ」
すごい唐突。
いや、そもそもこの始まり方も唐突なんだが。
「えっと、どういうことでしょうか?」
自分は現在置かれている状況を確認するためあたりを見回した。
少々古ぼけた寺の中。でも、祭壇がありそこには狐の像が置いてあった。
そもそも、なぜ自分がこんなところにいるのかもわかっていない。
「いやいや、君さっき殺されてたじゃない」
呆然としている自分に対して狐は「なんでそんな顔をしているの?」と言いたげな顔をしながら言った。
というかなんで狐がしゃべっているのか、不可解なことが連続して続いている。
「いや、そんな急に君死んでるよ発言されても漫画の主人公じゃあるまいし、理解できませんよ?そもそも狐がしゃべっている意味もわからないですし」
至極当然なことを言ったつもりが、その狐は少々表情をしかめて、
「じゃぁ見てみれば?うしろ」
そういって狐が尻尾を立てると、突然後ろの障子が開いて外が見えた。
そこはたくさんの人が参拝に来る「久米神社」だったが、一か所だけ人だかりができていた。
そこには一人の男性が大量に出血をして倒れているのが見えた。
近づいてその中心を確認した。
その瞬間俺は背筋がゾッとした。
横たわっているのは自分自身だったからだ。
首から大量の出血をしており、どう見ても生きているようには見えない。
なんでこんなことになっているのか、どうして俺は俺自身を見下ろしているのか頭がパニックを起こしていた。
その時
『戻っておいで』
頭の中でその声が聞こえたかと思うと、突然神社の中にものすごい勢いで引き戻された。
ただ、戻され方が乱暴で思いっきり転がりながら壁に頭をぶつけた。
「いってええぇぇーー!!」
その激痛に俺は悶えていただが、さっきの狐が呆れながら近寄ってきた。
「あれ以上あそこにいると、連れていかれちゃうからね」
まだ痛みはあったが、
「連れていかれるってなにに?」
聞き返すと狐はその手で障子の外を指しながら、
「あれ」
その先にはとてもこの世のものとは思えないどす黒い姿をしたドロドロとした物体があった。
「なにあれ・・?」
その見た目に俺は血の気が引いたが、狐は冷静に答えた。
「あれが人間たちの言うお迎えってやつだよ?」
「は!?あんなのが!?普通後光がさして天使が下りてくるとかじゃないの?」
あんなのに連れていかれるとか想像するのも嫌になっていた。
「どこのフラ〇ダースの犬よ。それ人間が勝手に想像して勘違いしているお迎えでしょ?死んだあとにそんなものが迎えに来たところなんて見たこともないわね」
狐は呆れかえったように言った。
「君はあそこで連れていかれると困るのよ」
狐がそういった瞬間俺は少しうれしくなった。
「それってあれか?別世界に行って国や世界を救ってこい的な展開になるのか!?ついに俺にも最高な異能の力が身につくのかなあ!」
俺が勝手に盛り上がっていると狐はまたもや呆れながら
「だからそれどこの異世界転生の話なのよ。別にこの世に世界なんて一つしかないわよ」
そう言われた瞬間俺はかなりショックを受けた。
「ってなんでそんなに落ち込んでるのよ。どう考えても異世界なんて存在するわけないでしょ」
「まぁ、そうだけど」
少しでも期待してしまった俺が情けないうえに少々恥ずかしい気持ちもあった。
「それならなんで俺があの気持ち悪いのにつれていかれるのが困るのか教えてくれ」
すごい投げやりに聞いてみたがほいっと教えてくれた。
「この世の中には【調和】っていうのが存在するのよ。その調和っていうのはすべての生き物がバランスよくこの世に存在し続けるために必要なものなのよ。わかる?」
そんな急にわかるかといわれても。
「それじゃ、どうやってそのバランスを保つかって話よね」
ここで俺は大体察し、
「それが人の死ってことか」
そうすると狐は意外って顔をしながら、
「察しがいいわね。正確には【生物の死】だけどね。人間だけじゃなく虫や動物、この世の生きている生き物は毎日生まれもするし、死にもする。それを繰り返すことによって世の中に存在する【調和】っていうのを保っているのよ」
やっぱりね。
「平たく言えば【調和が許容する範囲外の生物は死ぬ】でいいのか?」
「ほんとに平たいけどそういうことでいいよ」
なるほど、つまり自分はその調和のために死んだのか。
そう思うと仕方ないなぁと思えてくる自分がいた。
「それで?なんでその話と俺がここにいるのが関係あるんだ?」
「平たく言ったその【調和】のために君が死んだのは分かったと思うけど、実はその調和にもイレギュラーってのがあってね?」
俺はその言葉に嫌な予感を感じた。
「本来なら死ななくていい人も巻き込んじゃって同時に人が死んじゃうことがあるのよ」
あるのよ、じゃない。
「それはあれか?俺を切り殺した奴かまたはそれ以外の奴がほんとは死ぬ予定だったけど、俺がその代わりになったってことか?」
もしそうだとしたら前言撤回だと思った。
「いや、君を切り殺した人はあそこで自殺したわよ?」
狐が指した方向には救急隊に運ばれていくもう一つの遺体と、その本人がさっきの黒い物体に連れていかれるところだった。
連れていかれるというよりも黒い物体に飲み込まれていったのを見て俺は固唾をのんだ。
「そういうわけで君は彼が死ぬのと一緒に巻き添えを食らったかわいそうな男性ってこと」
俺はすごい複雑な気持ちでいたが狐は、
「そこでこの私が直々に君を助けてあげようかと思ってここに連れてきたってわけ」
狐はどや顔をしているが、正直意味が分からなかった。
「助けてくれるって何を?そもそも俺死んでるわけだし、異世界転生もないんだろ?もう手遅れじゃないのか?」
そういうと、すごい溜息をつかれた。
俺はこの狐に何度呆れられればいいんだ。
「確かに異世界転生はファンタジーの空想話だけど、この世にまた生き返ることはできるのよ?輪廻転生ともいわれることかな?」
「つまり生まれ変われってことか?でもそれって当たり前にあることじゃないのか?よく占いとかでも前世が何とかっていうじゃないか」
来世は何になりたい!とか言ってる人も少なからずいるしね。
「いやいや、必ず全員が転生できるわけじゃないよ?犯罪を犯した人が再度転生したらまた悪事をし兼ねないじゃない?それを防ぐためにも転生させない決まりもあるから、だれもが絶対転生できるわけじゃないのよ」
なるほど、それは当然のことだろうと思った。
「ということは、俺は無条件で来世に生まれ変われるということか」
「そ!しかも私が直々に!」
狐はまたどや顔をした。
「その私が、っていうのはなんだ?そもそも転生するか、しないかを判断するのが狐さんの仕事じゃないのか?」
「そんなめんどくさいこと私の仕事じゃないわよ!もっと下っ端の仕事だけど、今回君は私が手掛けてあげるってことよ」
転生の仕事って下っ端の仕事なのか。もっと神様的な人がやると思ってた。
「まぁ、異世界転生はないみたいだけど、また人生送ることができるなら不満はないかな。よろしくお願いします」
俺は丁寧に頭を下げてお願いした。一応神様みたいな高い地位の狐さんみたいだったから。
「ふふ、急に丁寧になって面白いわね。それじゃ少し痛いと思うけど我慢してね?少しおまけしておくから」
「は?」
痛いという言葉に反応したが、すでに遅かった。
狐が首に噛みついてきたと思ったら全身に今まで感じたことのない痛みが走った。
声にならないとてつもない痛み。
叫びたくても声が出せないほどの激痛だった。
その激痛を感じなくなった時には、意識がなくなって眠りについていた。
【気まぐれ狐と妖転生】を読んでいただきありがとうございます!
いかがでしょうか。異世界転生はかなり人気のあるシリーズで私もよくご拝読させていただくことがあります。
その中でも今回私は異世界にはいかない転生ストーリーとして執筆いたしました。
シリアスやミステリーなどは苦手なのである程度のんびりとした日常を取り入れた物語を執筆していきます。
ぜひ評価などしていただければと思いますのでよろしくお願いいたします!