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2.

 

 勇者になった俺、ルル·アンガーソンは、フライヤー王国の王様の命を受け、光魔法(回復魔法)の使い手である聖女セシリー·フレイヤー、3つの魔法属性を持ち、剣の使い手でもある公爵家嫡子ヤリル·セドリック、この世界で最高の魔法使いである賢者ミリー。この4人でパーティーを組まされ、魔王討伐の旅を始めた。


 それから2年後、王様により勝手に組まされた4人のパーティーは、色々な冒険を繰り広げ、現在は魔王城で最後のラスボスである魔王と戦っている最中である。


 色々な冒険と言っても、天才な俺にとっては対した冒険ではなく、ただただヤリル·セドリックの執拗な嫌がらせを受け流しながらの、面倒臭い冒険だったと言える。


 ヤリルの嫌がらせは留まることはなく、最終的には俺のフィアンセである聖女セシリー·フライヤーまで寝取られてしまった。


 尻軽女のセシリーが寝盗られた事に関しては、セシリーが俺の好みで無かったので全くダメージを受けなかったのだが、夜な夜なセシリーとの激しいSEXの喘ぎ声を、わざと俺に聞かせてくる事が、童貞の俺にはとても辛い事だった。


 考えてもみてくれ! 毎夜ベッドをきしませ、ヤリルの如意棒でセシリーにアンアン言いわせ、俺と賢者ミリーの睡眠を妨げるのだ。

 一日一回ならまだ許せる。

 奴らは、一日三回決まってSEXを楽しむのだ!

 宿屋ならまだいい、二つ部屋をとればいいだけだし。

 しかし、野宿する時などは、ヤリルとセシリーは、俺とミリーに見張りを丸投げし、テントの中でこれみよがしにハッスルするのだ。


 勇者になるのも嫌だったのに、この国の王様は、何で俺に嫌がらせをする事だけが生き甲斐のヤリルと、尻軽女の性女せいじょセシリーをパーティーメンバーに加えたんだ。

 ハッキリ言って邪魔にしかならない。


 そんな冒険をしながらも、現在、魔王との最終決戦真っ只中なのだ。


 そして俺が、魔王と必死に戦っているというのに、ヤリルはというと、魔王との戦いの時でさえ俺に嫌がらせをしてくる。

 魔王が俺に攻撃をしかけてくる時、わざと俺の視界に入り、魔王の攻撃が俺に当たるように魔王のアシストをしたり、性女セシリーもヤリルと示し合わせ、俺には回復魔法を絶対に掛けてはくれない。


 本当にコイツら何しに来てるんだと怒れてきてしまう。


 ハッキリ言って、俺が居なかったらここまで来れなかっただろう。

 ヤリルと性女の実力では、魔王の前に立つ前に、魔王の手下に簡単に殺されてしまう程の実力なのだ。


 俺は本当に魔王を倒す必要があるのか……

 俺だったら、仮にこの世が魔王に支配されてしまったとしても、一人で生き抜く事は可能であろう。

 などと、考え事をしながら戦っていたら、いつの間にか魔王を追い詰めていたらしい。

 俺と共に必死で戦っていた賢者ミリーは、息絶え絶えで、HPもあと僅かしか残って無く、MPも全て使い切ってしまったのか、地面にへたり込んでしまっている。


 本当にあの性女様は何の為に、この戦いに参加しているのだ!

 回復役として俺達のパーティーに参加しているなら、役目を果たせと言いたい!


 見た所、ヤリルと性女様には、まだまだ余裕があるようだ。

 まあ、ラスボスである魔王と戦っている時でさえ、俺の嫌がらせしかしていないしな……


 俺がここで、コロッと死んだらどうなると思っているんだ?


 ヤリルと性女の実力では、瀕死の魔王でさえ倒す事も出来ないのだろう。

 頼みの綱である賢者ミリーも、回復魔法を受けれなくて倒れてしまってる状態だし……


 そんな考え事をしながらも、俺は最後の捨て身の攻撃をしてきた魔王の渾身の剣撃を躱し、逆に魔王の首をスパンっと、斬り裂いた。


「ヨシ! 」俺は思わず声をあげる。


 コレで間抜けな冒険の旅が終わる。

 とっとと故郷に帰ろう。

 王様に、魔王討伐後に性女と結婚をしてくれとお願いされていたが、そんなのは破棄だ!

 誰が好き好んで、あんな尻軽女と結婚しないといけないんだ!

 ただのバツゲームだろ!

 俺は魔王を倒した男だ!

 今の時点で、この国最強の男なのだ!


 例え王様の命令だとしても、あの性女とは断じて結婚などしない。

 あまりに結婚しろと五月蝿く言ってきたら、他国に亡命すれば良いだけだ!


 と、これからの事を考えながら、聖剣の血糊を払い聖剣を鞘にしまう。


 グサッ!


「ンッ!?」


 胸の辺りが熱い。


 顔を下に向けると、心臓の辺りから剣の切っ先が突き出ている。


「悪いなルル! お前は邪魔者なんだよ!」


 どうやらヤリルが、後ろから俺の心臓を突き刺したようだ。


「(なんてこった……仲間に殺されてしまうなんて……)」


 頼りの賢者ミリーは、MP枯渇で気を失ってしまっている。


 性女セシリーは、完全にヤリルの味方だ。

 大方、『セシリー様、ルルが生きていると、私とセシリー様とは永遠に添い遂げられません』とか、ヤリルに吹き込まれたのであろう。


 俺はそもそも、性女と結婚する気なんて無いのにな……

 俺が性女を、狙っていると思っているのか?

 どれだけ自分の魅力を信じているんだ。

 お前など、ただの尻軽のビッチだろ!

 王族の女など、政略結婚の為のエロマシーンだ。

 セシリーと2年間旅をして、まざまざとそのエロの性技をミリーと一緒に盗み見してきた。

 王族の女は、男を喜ばせるだけの為に存在しているとしか思えない。


 そんな事はさておき、俺はそろそろ死ぬであろう。


 今から死ぬというのに、案外余裕じゃないかって?


 実際の話、死ぬのは怖くない。


 何故ならしっかりと対策を立てていたからだ。


 あれだけ公爵家のお坊ちゃまに嫌がらせし続けられたのだ。

 いつか寝首を搔かれると、最初から分っていた。

 ヤリルが、セシリーに手を出した時点で俺は殺されるだろうと確信していたのだ。


 俺は対策として、持ちうる魔法の知識をフル動員して、記憶を残したまま転生する魔法を生み出したのだ。


 俺が使える闇魔法は、人の魂を観ることができる。

 ある日、食材を入手する為、兎を殺した。

 するとたまたま、ゴースト対策として、闇魔法を発動したままだったので、兎から抜けた魂がフワフワと天に昇るのではなく、森の方に飛んで行くのが見えた。

 普通なら魂は、空に向かって飛んでいくのだ。


 その時に限り、兎の魂は、森の中に向かって飛んで行ったのだ。

 俺は何となく、その兎の魂を追いかけて行くと、近くにいた身重の兎のお腹にその魂が入っていくのを目撃した。


 俺はそれを見て理解した。

 魂は、輪廻転生を繰り返しているのだと。


 それからというもの、闇魔法を発動させたままの生活を始めた。


 闇魔法で魂を観察していると、魂の中には、天に昇って行くもの、フラフラどこかに飛んでいくものがある事が分かった。

 そして、フラフラとどこかに飛んで行く魂についていくと、必ず近くに身重な魔物や動物がいたのだ。


 そんな身重な魔物や動物に限って、その周りには、たくさん魂が集まっている。


 そんな魂同士のバトルの結果、勝ち残った者だけが、新しい体を得る事ができるのだ。


 俺はそんな輪廻転生の仕組みを知った後、闇魔法が得意な悪魔が、よく人の体に憑依して乗っ取たりする事を思い出したのだ。


 俺は早速、人の体を乗っ取る魔法の練習をした。

 というか、面倒臭いので、悪魔をとっ捕まえて、その魔法を無理矢理教えて貰った。


 結論として、悪魔の得意な人の体を乗っ取る魔法は、普通の輪廻転生と同じ仕組みだったのだ。


 ただ、魂が入っていない空の体に魂が入るか、元々、魂の入っている体に無理矢理入って乗っ取るかの違いらしい。


 そして闇魔法が使える者であれば、誰でもこの魔法が使えるらしいのだ。


 ただ問題があるのは、自分の体から魂が離れてしまうと、凄い勢いで記憶が無くなっていくのだ。

 なのでこの魔法は、目の前にいる人間の体を乗っ取る時しか使えない。


 しかし、この欠点も研究の結果克服する事ができたのだ!


 どうやら光魔法のオートヒールをかけ続ければ、記憶が消えない事を発見したのだ。


 普通、相反する闇魔法と光魔法が使える者など存在しない。

 しかし、7属性の資質がある俺には、それが出来てしまう。


 そんな感じで俺は今、死を受け入れる。

 というか、完全に死ぬ前に自分の意思で体から魂を抜く。

 完全に自分が死んだ後だと、成功するのか分からないのだ。

 練習した通りに俺は、自分の魂にオートヒールを掛けながら、自分の体から魂だけすり抜けた。


 俺は上空から自分の体を眺める。


 俺の死を確認したヤリルが、俺の体から剣を引き抜き、俺を足蹴にしやがった。

 殺された事は何とも思わなかったが、死人の俺に対してその態度は頂けない。


 今の俺は、霊体の幽霊の状態なので呪ってやろうかと本気で思った。


 そしてヤリルは、俺を足蹴にした後、性女セシリーと抱き合い、激しいディープキスをしだした。


「……」


 自分達の世界に入ってやがる。

 国を救った勇者を殺しておいてそれは無いだろ……

 この2人が未来のフライヤー王国の王様と王妃になるのだ。

 フライヤー王国の前途は多難だな……


 気を失っていた賢者ミリーが頭を振っている。

 どうやら意識を取り戻した様だ。

 ミリーは起き上がり、俺が死んでいるのと、ヤリルと性女セシリーが激しいディープキスをしているのを見て、絶句している。


 まあ普通、そうなるよな。


 俺はここにいても埒が明かないので、身重な人間を探し始める事にした。


 出来れば美人な奥さんと、イケメンの旦那から産まれる子供がいい。

 そうすれば、その子供は必ずや美男子になる筈なのだ!

 例え貧乏な家だったとしても、俺の実力なら直ぐにでもお金持ちになれる。


 ここは魔国のど真ん中、そもそも人間が居ない。

 兎に角人間がいる町を目指さなくては話にならない。


 俺は魔王城に攻め込む為に王国が、魔国に作った拠点の街にフワフワと飛んでいった。


「(な……何と言うことだ……

 男ばかりだ……)」


 女性も少しは居るが、身重な女性など全く居ない。

 よく考えれば敵地である魔国に、身重な女性など居る筈が無かったのだ。

 代わりに、身重な可愛い犬を1匹発見したが、犬じゃな……


「(仕方が無い。人間の国まで行くしかないか)」

 ルルは気を取り直し、またフワフワと移動する。


 ルルは暫く移動すると、自分に起こっている異変に気付いた。

 いつもよりMPの減りが早すぎるのだ。

 もしかしたら俺が魂の状態だからかもしれない。


「(このままでは、人間が定住している街に着く前に、オートヒールが切れてしまう!)」ルルはここに来て、焦りだす。

 このままでは、記憶が無くなってしまう。

 もう人間を探すのは無理だ。

 とは言っても、魔物に転生するのも嫌だ。

 魔物なんかに転生したら、人間と敵対してしまう。

 兎に角、普通の動物を探そう。

 魔物よりはマシだ。

 最悪もう1度、動物に転生してから人間に転生すれば良いだけの話だ!


 ルルは血眼で、動物を必死に探す。

 と言ってもここは魔国、魔物はたくさんいるが動物など殆ど居ない。


 もう駄目かも知れない。

 ルルは、今までの行程を思い出す。

 最初は人間だけを探していた為、動物など気にも止めていなかったのだ。

 思い出せ! 見逃していたかもしれない動物を!


「(ハッ! 確か、魔国の拠点に身重な犬がいた筈だ!)」

 ルルは魔国の拠点にいた可愛らしい身重な犬を思い出し、拠点の街に戻る決断をした。


 ルルは猛スピードで、爆走する。


「(ヤバい……記憶が無くなって行くのを感じる。 兎に角急がなければ!)」


 ルルは、自分の記憶が抜け落ちていくのを感じながらも、拠点の街になんとか到着した。


 どこだった?


 ルルは必死に犬を探す。


「(いた!)」


 さっき来た時には、身重な犬の周りには魂が漂っていなかったのだが、現在は5つの魂が、新しい体を得る為のバトルの真っ最中だ。


「(邪魔だ! どけ! 俺には時間が無いんだ!)」


 ルルは、犬の周りでバトルしていた魂達をブッ飛ばし、実力で、犬の体の中に飛び込んだ。


 ーーー


 ここまで読んで頂きありがとうございました。


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