第8話 理由ありのデュラハン
とりあえず、ステータスの確認を……。
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〘デュラハン ♀〙 【種族】:魔物・不死族
Lv :52
HP :5320/5320
MP :980/980
筋力 :720
耐久 :480
魔力 :82
敏捷 :6720
幸運 :35
【状態異常】
普通
【スキル】
「疾走Lv82」「馬術Lv86」「矛術Lv24」「危機感知Lv10」「回復魔法Lv70」「黒魔法Lv6」
【特殊】
なし
【称号】
「不死族の長」「回避王」
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敏捷6720、俺をはるかに上回ってんじゃねぇか。俺がいくら罠を仕掛けても、直接攻撃を挑んでも、なんなく避けてきた魔物、デュラハン。でも、俺の知ってるデュラハンは雄だけで、まして敏捷が6000越えのやつなんて見たことすらない。それに、人語を話すやつも。
「なにゆえ戸惑っておるのか存ぜぬが……まあよかろう。我が名はデュラハン、不死族を束ねし暗黒の騎士なり。人間よ、我の前で存分に畏怖するがいい」
そんなたいそうに言われても。見るからに扱いにくいやつである。こんなやつを従魔にしなきゃいけないのか?
「……なあ、フィーさん。俺はこいつを従魔にしたくないのだが」
【構いませんよ。となれば、召喚されたそこのデュラハンは元の場所へ送還され、恐らくヒビキ様と再び会う機会は今後一切無いに等しいでしょう】
「なぬっ!? わ、我はまた一人ぼっちに!? 我を置いていくとは何事か、人間よ! 」
「そんな態度だからだ。自覚してないのか? 」
「我はいつもこうだからな。……まさか、貴様の言う我の態度が、我を不死族から遠ざけておった、と……? 」
「知るかよ」
さっきまで威勢のよかったデュラハンは、突如として迷える子羊に。あと、こいつはずっと一人ぼっちだったんだな。
俺が慈しみの目でデュラハンを見ていると、今しがた従魔にした白兎が「キュキュ! 」と鳴いて注目を集める。
「どうした? 」
「キュキュ。キュキュキュ。キュキュ、キュキュ! 」
「……すまん、何を言ってるのか全く分からん。フィーさん、翻訳を頼む」
【頼まれました】
やっぱり二体目の従魔よりも翻訳能力が欲しい。後でフィーさんに泣き寝入りしてみよう。
【「この草原には魔物の猛者が沢山います。彼女がいればこの上なく心強いです。主様、どうか良いご決断を! 」】
「猛者、か」
どの程度の魔物を猛者と呼ぶのだろう。それでも俺に劣るやつらだと思うが、いちいち相手にしてるほど俺は優しくない。
「何をぶつぶつと言っておる」
どうやら女神の声は俺にしか聞こえないらしい。他人に聞かれることがなく、そこそこに安心できる。
結局、この件──デュラハンを従魔にするか否か。まあ、デュラハンに雑魚処理を頼むのも悪くない。
「よし、決めた」
「我を従魔にしてくれるのか!? そうかそうか、貴様は利口でよろしい──」
「『ステージボス』を狩ってこい。そしたら俺の従魔にしてやる」
俺の記憶が正しければ、この草原は『ローステル草原』という一つのステージだ。草原ステージはこれしかないからすぐに見当がつく。
ここのステージボスを討伐できるほどの力があると分かって初めて、俺は心強いと思える。前に俺も討伐したことがあるが、あいつは本当に厄介な魔物だった。
ハードルが高すぎな感じもする。
「貴様……我を愚弄するのか? 」
デュラハンは顔を沈ませ、身体全体を小刻みに震わせ始める。
流石に酷な条件だ……怒り狂ってもおかしくはない。やつも中々に強敵で、分が悪いのはどちらかというと、俺の方である。
「言い過ぎた。別の条件を──」
「草原の主なぞ、我の絶大な力にひれ伏すがいいわ!」
そう言い残し、デュラハンはどこか遠くへと駆け出していった。
一体やつの身に何が起きたのだろう。




