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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
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第47話 大量獲得

「ヒビキ。あの黒いのはなんだったのだ」

「……奴―――ゴブリン亜種を狂わせた元凶、てところだ」

「ほう、そうか」


 詳しくは、デュラハンにも言えない。

 バグに関する情報は女神さんとの秘密だ。うっかり漏らしてしまうほど阿呆ではない。従魔になら教えてもいい気がしたが、ゲーム性の保持を考えると拒む他ない。


「こっちも、終わった、ぜ……」


 そんな疲れ切った声が聞こえ、なおかつ後ろ肩をトンと軽く叩かれる。あまりにも急だったため驚きのあまりバッと振り向いたが、そこには片足の膝に手を付きながらぜえぜえと呼吸を荒げた、疲労しているノーグリードの姿一つだけだった。


 真実を確かめに、辺り一帯を見渡す。

 だが、敵が見当たらない。


 広場のあちこちに散開しつつも指名を果たし終えた兵士、ゴーレム達が立ち往生しているだけ。

 たとえ敵らしきモノが見えたとしても、よく見ると、それらは全て焼け焦げたり胴体真っ二つだったり、背や腹が斬られたゴブリンだと分かる。


「おう。お疲れさん」

「ああ、ったくもー! 奴らいすぎなんだよ! 斬っても斬っても斬っても斬っても、すぐに(たか)ってきやがるし」

「でもな、ノーグリード。それにしては早かったな」

「…………」


「そうだな、ズバリ我のお陰だな」


 ノーグリードの沈黙に代えて、デュラハンが誇らしげに語り出す。


「そう、かもな……」

「……ぬ。面白みに欠ける男だ」


 機嫌のよかったデュラハンが、忽然とぶすっとした顔になる。今のノーグリードとでは張り合いがないからだろう。

 そういう好敵手視点から言って、仲がいいのやら悪いのやら。


「キュウビ。さっきの戦い凄かったな。チラ見ぐらいしかしてねーけど」

「そうか」


 戦績を話し合う中、おもむろに取り出した大回復ポーション(A級)をノーグリードに投げ渡す。「すまん、助かる」素直な礼に「構わん。それより、お前こそ大変だったな」と笑って応じる。


 あのゴブリンの数を鑑みれば、ゴブリン亜種との戦闘とはまた違って、精神疲労の蓄積が考えられる。よくやってくれたと思う。無論ゴーレム達も。


 感心している最中に、俺らの元にあの一段とガタイのいいパワー型ゴーレムが近寄ってきた。

 こちらを見つめ、見つめ、見つめている。指示を待っているようだ。中には傷が目立つ者もいるが、ゴーレムは土の養分を利用して自己再生できるから、いずれ完全体になるはずだ。


 それで、続くほかのゴーレム達も、パワー型ゴーレムの後ろに立って皆同じ反応をする。なぜか、王様気分。


「奴らからの夜襲を乗り越えられたこと、お前達がいてこその功績だ。けど……一晩同じように警戒してもらうことになる。よろしく頼む! 」


 ゴーレム達に頭を下げて頼み事をすると、皆コクリと頷き、それぞれが片膝を地につけて首を垂らし出した。


 ゴーレムは俺が生成した精霊のような奴らだから、頭を下げる必要もなく言うことを聞いてくれるほど従順だと分かっているが、身を呈して励んでくれたことに感謝しているのだ。そして、これからも頼ってしまうことへの罪悪感さえも抱いている。


「こいつらがいなかったら、俺、疲れ切って死んでただろうな。礼を言わせてくれ」


 ノーグリードもまた、もの真っ直ぐに頭を下げる。

 今度こそゴーレム達は困惑した。焦っているのがもろ分かりである。


「よき者共だな」

「ああ」


 こいつらがいるなら、随分と安心して一夜を過ごせる。

 番人として、罠よりも信用がある奴らだ。


「キュ、キュ」

「そうだな、白兎。お前もよく逃げずに頑張ってくれたな」


 命からがら助けられた面もある。ありがとうの意味を込めて静かに頭を撫でる。相変わらずの撫で心地の良さ。


「キュー」


 わしゃわしゃと撫でてあげたら、気持ち良さそうな声が。

 撫でてるこちらが何かと気持ち良いのだが。

 どうすればよいのだろうか、やめられない、とまらない。


 わしゃわしゃわしゃわしゃ、わしゃわしゃわしゃわしゃ。

 ひたすら撫で続ける。この触感は、アレだ、元の世界の俺ん家にあった、目のくらんだ俺にトドメをさしたあの紺色クッションとそっくりだ。


「ヒ、ヒビキ。わ、我も」

「……白兎、いいか? 」

「キ、キュキュ」


 首を渋々縦に振った白兎の頭に、間も空けずにデュラハンの両手が伸びる。


「はあああああ、良いものだなっ」


 トロけた表情を目の前で見せられているわけだが、体験したもの同士、気持ちは大いに理解できる。


「お、俺も……」

「キュ!?」


 同意もなしに撫で始めたノーグリードに驚くも、もはや動けなくなった白兎。

 撫で回しは長引きそうなので、その間俺は取り残されたゴーレム達に「ゴブリン共の死体を埋めてくれ」と指示を出した。ゴブリン共は既に俺以外の奴の手で大半は殺されている思うから、スキルの奪取は少量になる。


『女神の恩恵』にあった「スキャリング」の効果発生は、俺の討伐が前提となってたはず。ならば、迷うことは無い。

 そもそも、ゴブリンが覚えるスキルはどれも貧相なので、奪えたとしても今後の糧としては不十分だ。ゴブリン亜種も貧相なスキルを保持していたため、同様と見なす。


 それに死体だって、アイテム欄の中に沢山あるため回収する必要もない。×99と表記された『ゴブリンの死体』が5箇条もある。


「さてさて」


 夜襲というだけあって、こちらとしてもキツい面もあり、クタクタだ。早く一眠りしたい気分ではある。

 たしか大小屋の中にゴーレム特製のベッドがあったはず。遠慮無く使わせてもらおう。






 という時だった。







 ──『「東の魔物連合」を討伐しました。パーティーの「ノーグリード」と経験値、ロスト、ドロップアイテムの獲得が共有されます。また、「ゴーレム」「デュラハン」「ナックル=ラビット」の討伐記録も加算されます』



 ──『「女神の加護」により『ゴブリン×5308』『ホブゴブリン×263』『ゴブリンナイト×480』『ゴブリンメイジ×236』『オーガ×58』『ゴブリンキング×1』『ゴブリン亜種×1』『ロール=ホーク×964』『ロール=ホーケスト×1』のスキルを奪取しました』



 ──『「ロール=ホーケスト」のスキル「業火の息」は固定スキルのため獲得できませんでした』



 ──『スキル複数の「疾走Lv2」「疾走Lv4」「疾走Lv8」を獲得しました。「疾走Lv38」を所有していたため破棄します』



 ──『スキル「猛打Lv28」を獲得しました』



 ──『スキル「暗視Lv60」を獲得しました』



 ──『スキル「危機感知Lv12」を獲得しました。同様のスキルを所有していたため上書きします』



 ──『スキル「振り回しLv5」を獲得しました』



 ──『スキル「剣術Lv12」を獲得しました』



 ──『スキル「火炎魔法Lv32」を獲得しました』



 ──『スキル「水魔法Lv32」を獲得しました』



 ──『スキル「土魔法Lv32」を獲得しました。「土魔法Lv65」を所有していたため破棄します』



 ──『スキル「風魔法Lv32」を獲得しました』



 ──『スキル「光魔法Lv32」を獲得しました』



 ──『スキル「黒魔法Lv32」を獲得しました』



 ──『スキル「白魔法Lv32」を獲得しました』



 ──『スキル「王の威圧Lv8」を獲得しました』



 ──『スキル「乱れ突き」を獲得しました』



 ──『「東の魔物連合」討伐で、108200経験値、235040ロストを獲得しました』



 ──『ドロップアイテム「闇石」を獲得しました』





 ______________________________

 ______________________________





 脳内に、ピピッピピッという音を立てながら、チャット欄が獲得の知らせで一杯になっていった。

 冒頭の「共有」に対する理解は追いつかなかったが、最後辺りの「ロスト」獲得については胸が躍った。


 無一文からようやく脱せた喜びゆえに。





《第6回 ミニバグ録》




〜『僕の実力』〜




白兎 「キュキュ……キュ (ノーグリードさんやデュラハンさん、そして主様はお強いけれど、僕は……全然)」


ヒビキ 「おーい白兎ー。そこのテーブルの上にある皿とかコップ、少しずつでいいから持ってきてくれー」


白兎 「キュ! (任せてください!)」


両耳に皿、コップを器用に挟み持ち、何度も往復する。そして、テーブルの上が綺麗さっぱりに。


ヒビキ 「ありがとうなー」


白兎 「キュキュ」


主様は、僕が何か手伝った後に必ず頭を撫でてくれる。なんだか気持ちよくて、とにかく嬉しい気持ちになる。


白兎 「キュ? キュキュ (あ、あれ? 何を考えていたんだっけ。まあ、いっか)」



こんな風にして、白兎の悩みは案外あっさりと忘れ去られてしまうものになっていくのであった。

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