第45話 信頼
1番面白くない回になりました。
次の話こそは……挽回しなければ!
せいぜい後書きの《ミニバグ録》だけでも面白くさせないといけませんね。
デュラハンと黒馬がゴブリン亜種とやや苦しみつつ一進一退の攻防を繰り広げる。覚悟と信頼のもとに形成された時間で、俺は罠をどんどん仕掛けていく。
痺れ罠は作動するのに時間がかかりすぎるため、却下。
良い失敗例を先ほど確認したし。
爆弾罠は意外と効きそう。まきびしは、ダメだ。
そういった自分との対話を積極的に行い、終え次第デュラハンらに呼び掛ける。
「いつでも行けるぞ! 遠回りで帰ってこい! 」
「期待はっ、して、ないからなっ」
「ブルルルルルルッッ」
この短時間で程々に傷ついたデュラハンと黒馬は、デュラハンの鉾がゴブリン亜種にモロに炸裂しその身が吹っ飛んだのを見計らって急速で帰還する。
「ボロボロだな」
「貴様も……そうなる」
「どうだか」
一撃をもらった訳ではなくても、奴の攻撃はかするのでさえも危険だ。デュラハンは鉾を黒馬の上に置き、真っ赤な血の滴り落ちている左腕を押さえている。
さっそく掠ったらしい。
「これ、飲んどけ」
「ぬ。なんだそれは。毒か? 」
「毒じゃねえよ、回復ポーションだ」
回復ポーション(小)(E級)とビングの牙(E級)を錬金して大量に作っておいた『回復ポーション(大)(B級)』だ。
飲めば、HPが3000は回復する。おまけに、自然治癒力を高め、毎秒2ずつ回復するという優れもの。
「我には回復魔法がある。必要ない」
「意地はりはやめろ。お前のMPは200切ってるぞ。MP切れで荷物になられたら困る」
MPを回復させるポーションは、持ってないし作れない。材料が足りないのだ。
だから、MPに関しては敏感でなくてはならない。
「…………ふっ、し、仕方なかろう。貴様がそう言うのであれば」
食えない態度でポーションを受け取り、飲み干す。
黒馬もブルブルと鳴いて、自分の分はないのか、みたいな顔して見つめてくる。
あるから。
大量にあるから、そんな目で見つめないで!
あと鼻息が顔全体にかかってるから!臭い!
黙って黒馬の口にポーションを流し込み、ようやくゴブリン亜種のいる方へと目をこらすことが出来た。
そこには、土煙が高く舞上がっている。
奴は、そのどこかに居る。
「ギエエェェェェ」
聞こえた。奴の、唸り声が。
「ギグエッ! 」
見えた。
地を蹴って死に物狂いに迫ってくる、奴の醜い姿が。
棍棒を荒く振り乱しながら接近してくる。
初手は、俺の第一の罠から。
これは初歩中の初歩だと思う。素材の違いは大きいが。
ネット式の吊り上げ罠だ。
材料としてはラ=スパイダーの糸よりも高級と化した「イリム=スパイダーの糸(A級)」を100個合成して「鋼糸網(A+級)」を作る。
続いて「ビングの牙」と「モル木の種」の合成で作っておいた、植えると瞬時に一種の木として最大成長を成す「モル木の種改」を地面に植え、育ったモル木の野太い枝に「イリム=スパイダーの糸」を50個錬金してできる「鋼糸線(A+級)」を使って鋼糸網を括りつけ、大きく垂れた「鋼糸網」を地面に罠設置スキルで貼り付ける。もちろん吊り上げるのが目的で、とても長い鋼糸線はモル木の枝を挟んで俺の右手元にまで届いている。絶妙なタイミングで引くつもりである。
けれど、これではモル木や罠はバレバレ。
そこで、正体を隠すために「透明化ポーション(A級)」を作ることに。
かつて地球に存在していたクリオネやクラゲのような透明質のある海の魔物『エミュ』を倒した際に手に入れられる「エミュの核(D級)」と、エミュが稀に吐く粘液「エミュの粘液(A級)」を錬金すると透明化ポーションはでき上がる。
エミュの粘液については俺さえも所持数が4しかないというとても希少な物だから、これを機に使用は厳禁としていきたい。
それで、出来上がった透明化ポーションをモル木や罠全体にふりかけ、俺にも見えなくさせる。
ゴブリン亜種とはいえ、見抜けるわけがない。
「今だ! 」
「ギ、ギュエエエエェッ」
《第4回 ミニバグ録》
〜『兄思い』〜
ミーシャ 「に、兄様が、脱獄!? な、何をふざけたことを言っているんですかっ。冗談でも怒りますよっ」
父 「本当のことだ、ミーシャ。あの馬鹿息子が……くそったれ。我が一族の名に泥を塗りおって。先に絶縁しておくべきだったな」
ミーシャ 「お、お父様! 」
父 「あ、ああ。すまないミーシャ。しかしな、俺がノーグと絶縁しないでいてやってるのは、ミーシャ、お前の願いあってこそだからな。ミーシャの願いを父として聞かない訳にはいかないからな」
ミーシャ 「…………」
父 「どうした、ミーシャ」
ミーシャ 「なんでもありません。少々外の空気を吸って参りますね」
父 「そうか。気を付けるんだぞ」
ミーシャ 「はい…………お父様」
ノーグリードが脱獄した報告を受け一気に淀んだ家庭内の空気から開放されるべく外出したミーシャだったが、どうも浮かない表情が続いてばかり。
ミーシャ 「私は……お慕い、信じておりますよ、兄様」
雲一つない青空に向かって静かに祈りを捧げた。




