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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
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第42話 狂い始め

更新が遅くなりました。すみません。


今話はノーグリードやデュラハンの登場は一切ございませんので、ご了承ください!


後書きに登場するかも……?

 その体勢でなんとかなるんなら、それはそれで構わない。

 戦闘の邪魔にならないで欲しいし、安直に言えば、命を投げ捨てて欲しくないのだ。


 俺の、従魔なのだから。他意は……ない、わけではない。


 白兎と会話のやり取りをしている間にゴブリン亜種の動きはなかった。不敵な笑みをその薄っぺらい面皮に浮かばせているだけ。


 これを好機と見た俺は、何かしらやつに有効な罠を制作しようとするが、やつに有効なものが、パッと頭に浮かばない。

 仕掛けても避けられるのが落ちなのでは、なんて悲観的な感想ばかりが脳をよぎる。


「罠は頼れないな……」


 だとしたら、残るは多数の所持スキルおよびアイテムに限る。悪いが白兎の助力は見込めないのが実情。そういう低レベルの生半可な戦いにはならないはずだ。


 自己のステータス画面を開き、ゴブリン亜種を見据えたままスキル一覧をざっと眺める。


「強固Lv52」「暗視Lv53」あたりはすでに使っておいたほうがよさそう。それぞれ胸の内で唱え、使用する。

「隠蔽Lv64」や、隠蔽に比べ若干の劣りのある「隠れ身Lv86」は、レベルの高いスキルではあるがLv100の奴に通用するとは到底思えない。使うだけ無駄だ。


「疾走Lv38」は必須スキルとして、攻撃に関しては「防護術Lv52」、「鉤爪Lv25」、「土魔法Lv62」を駆使しよう。結局はその場その場で適応していくしかない。


 もったいぶらないでスキルポイントも消費してはどうか。

 今80ポイントだから、土魔法のLvを3あげるくらいは出来る。攻撃スキルとしても既にレベルが高いが、少しでも強化しておくのは心の保険にもなるし。


 ステータス画面に表示されたスキル「土魔法Lv62」を指でタッチし、作業を速やかにこなす。



 ______________________________



【スキル】


「土魔法Lv62」:土属性の魔法が使用可能。(レベルが上がるにつれて高度の魔法が使える。)


『スキルポイント80を消費して「土魔法Lv65」を取得しますか?«はい»・«いいえ»』


 ______________________________



『はい』を選択し、俺のスキルポイントは0に、土魔法のレベルは65となる。スキルポイントはレベルアップ時またはLv100の魔物を討伐した際に得られるものだ。今の俺の場合、レベルアップは見込めないため、魔物の討伐に励むしかない。

 とは言うものの、Lv100の魔物に出くわすことはそうそうない、はず。

 現に対峙しているゴブリン亜種が、そうなのたが。


 動きを止めて頃合を見計らっていたゴブリン亜種が、突如その薄気味悪い笑みを浮かべつつ駆けてくる。


 距離を縮めた奴はぴょんと飛び跳ね、棍棒を俺の頭の上から振りかぶる。俺はあいなく後ろに身を引いてかわすが、奴は把握していたかのように、着地後すぐ地面を蹴って再び眼前に迫る。


 奴が俺の喉元目掛けて棍棒で突こうとした時、互いの僅かな間に土壁を挟み、スレスレのところで奴を弾くことに成功した。

 威力、敏捷ともに申し分ないが、土壁に衝突した反動は相当きていることだろう。

 土壁は出現時には薄いが、段々と厚みを帯びていくので、楽々と突き破られる心配はない。


 壁の奥からギエッという奴の声が聞こえたのを確認し、土壁を『解除(アンチ)』して土に還元する。


 それでも平気な様で奴は奥に立っているが、額を赤くしている。

 効果はあったな。


「ギエェェェッ」


 それが頭にも来ているらしく、怒り狂った叫びに合わせまたこちらに向かってくる。

 対する俺は防戦一方で、隙を見つけることも、突くこともできないでいる。

 とにかく疾走しつつ防護術を連発し、攻撃を受ける中で鉤爪を使ったり、土魔法で棍棒の打撃を払ったりしている。


 これでは長く持たないと分かっている。しかし、避けようがないのもまた事実。

 能力値を倍加させてもなお奴に及ばないとなると、手の打ちようがないな……。はて、どうしたものか。


 12000程の蓄えがあったMP残量は、今や1万を切り8000程にまで減っている。なんとか早めに勝負を決めたいところ。最悪、あまり所持していないMP回復ポーションを連続使用すれば一応は対応できそう。


「疲れってもんを知らねぇのかよ、こいつはっ」


 木の棍棒を片手に、いろんな技を絶え間なくしかけてくる。

 奴の攻撃は一発一発が重く、防護術で受け流す際には腕や足腰に負担がかかる。その度にHPもジリジリと削られていく。一発あたり10以上の負荷がかかっており、現在のHPは14221と、大体5000くらいのダメージを受けたことになる。


 そろそろスキルだけじゃ対処しきれなくなってきた。アイテムも総動員していかなくては。


 徐にアイテム欄を開き、奴の攻撃を避けながら、使えそうなものをピックアップしていく。


 最初に見つけたのはポーション系で、『弱体化ポーション』や『能力値アップポーション』、『ミステリーポーション』だ。


 『弱体化ポーション』はその名の通り、対象を弱体化―――つまり能力値をいくらか一定時間落とすもの。これは即必要だな。


 『能力値アップポーション』もそのままの意味で、能力値を一定時間向上させるもの。今の俺にどれだけの効果があるのだろう。


 そして、『ミステリーポーション』。これはまあひどいものだ。

 効果が不明になっている。

 良くも悪くも変なポーションを手に入れたものだ。


 これも、貴重にレアな、未発見とされているドロップアイテム。レア度は(?)になっている。他二つは普通の(A)。

 『ミステリーポーション』はいざという時に使った方が良さそう。神頼みってな感じに。


 それからポーション以外には『爆弾』、『撒菱(まきびし)』といった直接ダメージを与えられるアイテムを見つけた。いずれも99個以上のストックがあるから、多少雑に使っても問題ない。


「ギエェェェギエギエッ」


 ゴブリン亜種の声音が変わる。

 金切り声の一歩手前くらいに高くなった。

 表情に浮かんだ正しく鬼の形相が、いかにも腹を立てることを示唆している。


 気に触ることをしたおぼえはないのだが。


 動きもさらに早くなった気がする。

 さっきまでの奴の動きがごろっと変わったのだ。


 俺の防護術を真似て色々試していたようだが、それも失せて、棍棒をぶんぶんと至る方向に振り回している。ターゲットは俺だというのに変わりはないようで、全ての攻撃はしっかり俺の元に向かっている。

 ただ、攻撃スタイルが荒くなっただけのこと。


 しかし、なぜだ。胸騒ぎがしてならない。


 怯んでいるわけでもなく、興奮しているわけでもない。


 奴の身に何かあった。それに対する困惑。


「キュ! 」


「痛っ」


 ついつい戦闘中に気を緩めてしまい奴の荒い攻撃を胴にもろにくらいそうになったところに、白兎の一声と脳天への痛烈な耳叩きがなされ、一瞬後ろによろめく。

 そのかいあって、その一撃をなんとか凌げた。素早く後退し、奴と距離をとる。


 生きた心地が、しない。

 僅か……ともいえぬ敗北の香りがするこの戦闘から集中を途切らせてしまっては元も子もない。危うく命を剥ぎ取られるところだった。


 狂ってしまった奴の一撃一撃がもしとんでもない威力を誇っていたとしたら、と考えると怖気が走る。


「すまんな、白兎。助かった。痛かったけどな」


「キューキュ」


 白兎の耳叩きなんぞ俺にとって痛みすらない攻撃なはずだけれども、不意打ちしかも意識の薄れていた時にやられては効果は出るものだ。

 でも、今回ばかりは白兎に助けられてしまった。恩はいつか返す。


「さて、と」


 またゴブリン亜種との睨み合いが始まった。

 お互いに隙を探り合う。けれど簡単には生まれない。


「白兎、頼みがある」


「……キュ? 」


「これを、いいタイミングで奴にぶつけてやれ」


「キュ! 」


「おう、その意気だ」


 作戦を理解した白兎に先程取り出した『弱体化ポーション(?)』を一つ手渡し、俺自身も気合を入れる。


 今度は俺が地面を蹴って、先攻になった。

白兎、すごい。


お読み頂きありがとうございました。



______________________________



《題名…………未決定。ミニバグとか、そういうのはいかがでしょうか? 》






ヒビキ「バグ持ちのゴブリン亜種と出会ってしまったんだが……」


ノーグリード「横目に見てたぜ。頑張れよなー」


デュラハン「我も、貴様の勝利を期待しておるぞ。負けることは認めん」


ヒビキ「お前ら、他人事みたいに言いやがって。俺がやられたら次の標的はお前らだからな」


ノーグリード・デュラハン「「俺(我)なら勝てる」」


さて、どうなるのやら。

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