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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
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第41話 ゴブリン亜種

更新が遅くなり、申し訳ありません!

ちゃんと1週間に1話のペースでやっていけるよう、尽力を尽くします。

「罠設置LvMAX」を使って、一瞬にして複合した罠をノーグリード達の戦っていない域に仕掛ける。後は即興で何とかするしかない。いよいよ戦闘開始となる。


 と思いきや、罠を仕掛けた時点で既に始まっていた。大量のゴブリンやホブゴブリン、ゴブリンメイジの歩み寄る所へ仕掛けたもんだから、罠は間髪入れずに作動した。

 身動きの取れなくなった奴らの足元に目に見える形で電流が通い出したかと思うと、上空に向けて、六つの光の柱がいきなりのびる。

 奴らの断末魔よりもずっと、雷のごときその柱のビリビリ音の方がうるさい。俺は耳を両手で抑え、白兎は耳をたたんで対処した。


 しばらくして鳴り止み、恐る恐る周囲を見渡す。

 敵はだいぶ減ったようだ。悪いことに、ゴーレムたちも巻き添えになっている。彼らは土の体のため電気を通しにくいと承知してはいるが、済まないことをしてしまった。被害を受けたゴーレムたちは皆揃って片膝をついている。HPを確認したところ、500そこらにまで減っている者ばかり。


 今後気をつけよう……。


 物思いにふける余裕はないと糾弾するかのように、復讐心に駆られた他のゴブリンどもが次々に迫ってくる。


 いくらトラップマスターと呼ばれるだけの実力があっても、奴らを近距離戦に持ち込んでしまえば罠を作る暇さえない。俺に残っている選択は、スキル「防護術」で強引に物理戦を行う他ない。


「白兎、戻すぞっ」

「キューキュ」


白兎は、俺の髪に顔をうずめて左右に振っている。自分も戦う、そんなところか。


「こっからが勝負どころだ! 決して無理はするな。あと離れるんじゃねぇぞ! 」

「キ、キュッ」

「いい返事だ」


 魔物語を理解できないとはいえ、白兎の誠意はしっかりと伝わっている。なるべく頭部への攻撃は受け止めず避けていこう。万が一のことがあるからな。


 それにしても、頭から伝導してくる白兎の腹の温もりが、冷え込んできた夜の戦場に立つ俺の、微々たる助力になってくれている。寒さから少し開放されるだけでもありがたい。


「さあ、どっからでもかかってこい! 」


 盛大に意気込み、戦闘第二幕が切って落とされる。


 最初に飛び込んできたゴブリンには「防護術」を使用しながら、見よう見まねで正拳突きを御見舞する。そこまで本気を出していなかったが、そいつは物凄いスピードで後方へと飛んでいく。

 その小さな体は何匹ものゴブリン達を道連れにしていき―――今の一突きで30匹位を駆逐できたようだ。


 各能力値が倍加したせいなんだな……きっと。


 ゴブリン達は俺の一突きを見て呆然と立ちすくみ、やられた者共と俺を交互に見始め、終いには「キエェェ」という甲高い声を上げて再び襲いかかってきた。


 対する俺は普通のパンチや蹴り、肘打ち等、様々な格闘技術を存分に駆使していく。


 ただのゴブリン、ホブゴブリンを退けていくと、ゴブリンメイジやオーガが登場してきた。前線に貴重な戦闘力であるオーガが立ち、後ろからゴブリンメイジが支援するフォーメーションを取っている。

 敵ながら天晴な人間的戦略だが、無意味。


 まずは片っ端からオーガを薙ぎ倒し、勢いに身を任せゴブリンメイジ共を葬っていく。相手のレベルを測り間違えたのが奴らの問題である。退屈なことに、山のようにいた眼前の敵はあっという間に虚しく散り、残るはずっと奥の方で仁王立ちを決めているゴブリンキングと、鉄の鎧に盾、刃渡りの長い剣を装備したゴブリン、それと木の棍棒以外何も装備していないゴブリンの三匹のみとなった。


 あの中もしくはノーグリード達の所にバグ持ちのゴブリン亜種が…………。


 俺とは別に、ゴーレム達はまだかなりいるゴブリン共を一匹一匹倒していっている。突発的に競争を始めたノーグリードとデュラハンに至ってはゴブリン達を屠りつつ通過し、ゴブリンメイジやオーガというまさに俺が今の今まで相手にしていた奴らの波に突っ込んでいる。


 ゴブリン亜種にさえ遭遇しなければ平気だろうという思いのほか、ゴーレムはさておき二人がゴブリン亜種に当たっていたらどうしようといった不安が渦巻く。


 とりあえず、ゴブリンキングを先に潰しておこう。混乱を招かせるのは戦略的に都合がいい。


 勢いよく踏み込み、ゴブリンキングへと向かう。奴は予想だにしていなかった戦況に、ふんぞり返っている。

 急接近し、そんな奴の頭上から周りの二匹を無視して軽く拳を握ってそのまま振り落とす。


 これまたギエッという断末魔が聞こえると、奴はすんなり地面に倒れた。所詮はゴブリンだからな……これくらいで事足りる。


 呆気なく散ったゴブリンキングを見て、今度は近衛兵らしき二匹のゴブリンが奇声をあげ、後ろへと飛び跳ねて場所を移動する。


 それから片方のゴブリンメイジは似合わぬ鎧とともに魔法詠唱を始め、もう片方の装備のないゴブリンは――――――不気味に微笑んでいる。


 俺を蔑んでいるかのような奴の目は、万事を呑み込んでしまうかの如き、真っ黒なもの。


 ついに、出会ってしまった。


 奴こそがゴブリン亜種で間違いない。


「キエェ」


 突如奴は魔法詠唱を終えようとしていたゴブリンメイジを木の棍棒で横殴りした。ゴブリンメイジは声一つ上げることなく胴体を真っ二つにされる。


 意味が、分からない。


 理解に苦しむ俺に視線を合わせ、味方を容赦なく殺した奴の目が更にギラりと光る。


 俺は一瞬、怯んだ。


 防護術をいつでも使えるように心を構え、奴の襲ってこない間に奴自身のステータスを確認しておくことにした。



 ______________________________

 ______________________________



 〘ゴブリン亜種 ♂〙 【種族】:魔物・ゴブリン


 Lv :100


 HP :21550/21550


 MP :8312/8312


 筋力 :4582

 

 耐久 :2803


 魔力 :8020


 敏捷 :9201


 幸運 :285


【状態異常】


 憤怒(小)


【スキル】


「疾走Lv2」「猛打Lv4」


【特殊】


 なし


【称号】


「ゴブリンの異端者」「人間キラー」



 ______________________________

 ______________________________




 ……なるほど、こりゃあ常人じゃ勝てないわけだ。

 女神の祝福とやらで得た能力値倍加を持ってしてもなお、奴の方がほとんど上。

 やはりスキルは普通のゴブリン共と大差ないが……称号が最もなものでどうしてもそっちに目がいってしまう。


「ゴブリンの異端者」まではいいが、「人間キラー」はさすがに、な。

 奴のステータスがそれを裏付けていることは、言うまでもないが。


 ただ、弱点が分からない。筋力や敏捷でさえもこちらが不利、唯一スキルで優ってるくらいだ。これを活かさないてはない。


「ははっ、面白ぇ」


 実際に命を懸けた転生ライフの初夜に突然死の危機、か。

 追い込まれるほどこちとら燃えるってもんだ。なぜだか、無性に笑いたくなる。

 戦闘狂だからではない。『絶望を笑う』ことは、何人であれど希望を与えてくれるおまじないみたいなものだからだ。


 しかるに俺はこの状況を笑い、今すぐにでも何を効果的に発動できるかを冷静に探り、腹をくくって奴に突っ込んでいく。


 相変わらず奴はにんまりと気味の悪い笑みを浮かべている。

 あいつも絶望してくれてたらいいのに、なんて願ったり叶ったりはここにはない。


 奴との距離をグンと縮めて懐に潜り込み、「防護術」を使う。先制攻撃として溝打ちを食らわせる予定だったが、あっさりと避けられた。ここまでの猛者だから、読んで当然なんだろう。

 続いて適当にかつ本気でパンチや突き、蹴り、アッパーなどを繰り出すも全て(かわ)される。


 奴もただ受け身なだけでなく、木の棍棒を握り締めて隙あらば同じように攻撃してくる。


 しばらくそういった戦いが続いた。

 それで分かったのは、奴に真っ向から挑めば挑むほど()()()()()()()、ということだ。


 俺は途中から違和感を感じて一旦身を引いた。奴は戦闘中に木の棍棒のみならず、俺の使う「防護術」と似た戦い方をし始めた。パンチはおろか、蹴り、突きなども含め。


「時間の問題だな……」


 正直に言うと、俺は今苦戦している。

 罠を作ろうにも余裕がなく、他のスキルのことを考える隙もない。

 防護術を連続使用するだけで精一杯。

 それに対して奴はスキルを使わずに対抗しているようだ。

 一杯食わされた感が波のように押し寄せてくる。


 さて、どうしたものか。


 とにかく、隙が欲しい。


 上手く事が進まず、頭をかこうとした時だった。


「キュ! 」


 可愛い鳴き声。


 しまった。俺は頭に白兎を乗せていたんだ。


「白兎、戻れ! 」

「キュ! キュ! 」


 なんだその反発的な返事は。

 万一の事があっても俺はお前に構ってられないというのに。


「いいから戻れ! 」

「キュ! キュ! 」


 従魔ってのは戻れと言っても拒否されたら無効になるものなのか。白兎、なぜお前は否定するんだ!


「もう知らねぇぞ! 自分でなんとかしろよ! 」

「キュ! 」


 いい返事は聞けたが、白兎は頭の上に居座ったままである。

白兎、可愛い。

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