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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
41/56

第40話 夜襲

 そうしてノーグリードも食事に加わったのだが、残念なことに料理話が延々と続き、一時を満喫することができなかった。


「―――それで、ケルシーの足からとれる出汁がもう、最高でさー」


 料理でなく食材の話に変わったりもして。

 その果て、食後は疲れて意気消沈となってしまった。


 デュラハンたちも同じらしい。この状況を生み出した当の本人は知らん顔をしている。意図的でなかろうとなんとも憎たらしい、そんな涼し気な顔だ。


「ほんっと、自己中だよなー」


「ん? 」


「いや、独り言。気にすんな」


 直球で呟いてみたが、よく考えてみるととても面倒なことになると思えてきて、ついつい独り言で終わらせた。


「で、コップとか皿とか……食器をどう洗おうか」


 食器もろもろを洗おうにも、水魔法も水道もない。あるのは、まだストックが切れる見込みさえない樽一杯の水だけ。計量器で汲んで皿洗いをするのもよし、樽の水に直接食器をいれるのもよし。後者は後から飲水として使えなくなるので、控えていたい。

 しかし、それでは時間がかかりそうだな。


「クリーン=マッドローの粘液(B級)」を使って錬金し洗浄するのはどうか。惜しくも、クリーン=マッドローの粘液は所持数が0だ。


「あの大小屋に台所でもあればな」


 重い身体を起こしながらそう呟くと、俺の元に瞬時に駆けつけてきたパワー型ゴーレムが、座り心地のいい岩の上に片付けて置いている食器に指をさし、あたかも「それをあそこに持っていけ」と言っているかのように、次いで大小屋を指さす。


「それがどうした―――」


 そこまで言って、話を止める。

 もしも話が脳裏にチラつくが、ゴーレム達がそこまで気が利くはずはないという思考が邪魔をする。


「何事もこの目で見てからだ」


 好奇心に囚われた俺は、一人分の食器を両手で持って大小屋へとズカズカ歩く。改めて見ると、近くからではまさに巨大な壁としか言いようがない。それにしては、入口の扉は人並みの大きさをした木の扉で、高低差が激しくも思える。


 鍵付きではないらしく、今後の心配として不審者の侵入を真っ先に想像したが、ゴーレムたちがあんなにいるんだから不可能だと安堵する。


「キュウビ〜。皿持ってどこに行くかと思えば、でっけー家だったか」


「我も驚いたぞ」


「キュキュ」


 背後から声がしたので振り返ると、あいつらも同じ様に食器を両手に持って着いてきていた。


「お前らも来なくていいだろ」


「面白そうだから来ただけだ」


 ノーグリードの言葉に合わせ、残る二人もうんうんと頷く。

 まあいい。


 微かな緊迫感に焦らされながら、扉を引いていく。


 概ね予想通り。大小屋だけあって天井までの高さや奥行きが最大級である。


 けれどもそこにはまた別に、木製の多種多様な()具と()()()が施されている。

 ゴーレムが作るものにしては……あまりにも異様すぎる。有能ってレベルじゃない。


「立派なもんだな」


「そうだな。俺にとっちゃ、()()がある時点で満足なんだがな! 」


 大小屋の入口を潜ってすぐ左に、余分に広い台所が設けてある。ちなみに、その存在をめぐって俺は緊張していたのだ。食器を持ってきた目的でもある。


「とりあえず、皿を洗おうか……」


「あ、まとめて俺が洗うぞ。お前ら食器をくれ」


「我に指図するなど、100年早いわ」


「俺からの厚意だったのにな。じゃあお前の分は洗わねー。一人で洗ってろ。流し場はいつくかあるみてーだし」


「我を除け者にするのも…………」


 デュラハンはノーグリードとの言い合いに負けて、黙り込んだ。

 勝負あったな。


 たしかにゴーレムたちは台所を設けてはいるが、石鹸(せっけん)とかそういう小物までは準備できなかったみたい。皿の油汚れを落とすには必要になるだろうに。

 それは俺が補える範疇。


 既に錬金してある。


 石鹸は元の世界では水酸化ナトリウムと油で簡単に作れるのだが、この世界に水酸化ナトリウムはない。


 だからある物の中での代替品として重曹を用いてみると、同じ効力が働き、菜種油と錬金させて固形石鹸が完成した。でも重曹をあまり所持してなかったので、石鹸は2つしか作れてない。


 それからというもの、皿洗いは比較的得意な方なので、一人で終わらせることにした。他に用意したスポンジと固形石鹸、そして水を用いつつ皿洗いを始める。

 無言でスポンジと石鹸を取り出した時、従魔たちはおろか、ノーグリードですら「それ、何だ!? 」と驚愕していた。手を動かしながら説明していったが、ノーグリードの反応から察するに、この世界では洗い物は水で流すだけで油を取り除こうとはしてないらしい。


 石鹸作ったのは、俺が最初、ではないよな。さすがにそれはない。


 なんだかんだ手っ取り早いからと、俺は全員の分を洗った。

 こういうのは一人がまとめてやるのが早い。まあ、石鹸が二つだけ、スポンジは一つだけという制約もあったしな。


 洗い物を終えて、大小屋の中を見て回ろうとした、が。


 何か嫌な予感がした。

 すると同時に、俺のスキル「危機感知Lv6」が自動的に発動された。頭の中でビービーという音が流れる。一応、マップを開いてみる。

 マップ上に急に赤い斑点が大量に湧き出し―――魔物たちが広場をバリケードの外から囲ってるのが分かった。奴らの詳細は、分からない。


 胸を躍らせながら、「千里眼Lv22」を行使する。千里眼はMPを消費しない点も素晴らしく、なんと言っても便利だ。


 外は日が落ちてしまってもう暗闇になっている。ましてバリケードの外はさらに深々としている。見えるのは焚き火の明かりのみ。

 こんな時に活躍するのが、「暗視Lv53」スキルだった。ユーモネラスを討ってレベルアップした暗視スキルを、MP21を支払って千里眼と重複させてみる。


 なんてことだ。


 バリケードの外にいるのは、ゴブリン、ゴブリン、ゴブリン。

 片手に棍棒や剣を構えたゴブリンだらけである。

 奴らは今にもバリケードをよじ登って越えようとしている。


 一方でゴーレムたちは、待ったなしに動いている。

 地上戦のグループは大小屋から距離を置くも、囲うように円になり、それぞれ剣や斧、槍を構えている。

 そして彼らの後方に同じ囲いをしているのが、空中戦のグループだ。

 皆、何とも素晴らしい陣形を組んでいる。


 1匹のゴブリンがバリケードを越えたと思えば、また1匹1匹と徐々に数を増やしていき、越えた奴からゴーレムたちに向かって全力疾走していく。


 すると、突如としてゴブリンたちは俺の視界から消えた。


「え……」


「敵襲か? 」


「間違いないようだな。我の危機感知スキルがそう反応している」


「キュ……」


 他三人は、顔を険しくする。夜襲だから、無理もない。


 どっちみち、こんな建物の中じゃ辺りを見渡すのに不便なので、外に出ることにした。

 皆も続く。


 で、さっきゴブリンが突然消えたのはなぜなんだ。

 ゴーレム達が落とし穴でも作ってた、そう考えるのが普通なのだろうか。


 次々にゴブリンたちが、向かってきては消えていく。

 さすがのゴブリンたちも異変に気付いたのか、足を止める。

 しかしゴーレムたちは容赦ない。空中には魔物がおらず、手持ち無沙汰にしていた空中戦のグループが、先に遠距離攻撃で足を止めたゴブリンたちを仕留めていく。所々で色んな属性の魔法が繰り出され、広場一帯が明るくなっていく。


 賢いゴブリンたちもいて、落とし穴かなにかを()()()()てやってくる。

 そんな奴らには地上戦グループのゴーレム達が相手となり、軽々と屠っている。

 特に、あのパワー型ゴーレムが無双している。より俊敏になり頑強になったことで、ゴブリンたちとの間合いを瞬時に詰めてグラル=アックスで切り倒してる。


「あのゴーレム、頑張ってんな」


「あー、キュウビ、すまん。なんも見えねーわ」


「我の目は暗視可能だ。貴様の生んだ者共が戦っておることくらい分かる」


「キュ」


 デュラハンの暗視が可能な件には驚いた。辺り真っ暗闇だから、ノーグリードと白兎は仕方がないな。暗視スキルは個人にしかかけることが出来ず、隠蔽スキルのように多岐にわたって便利なわけではない。


「また反応が……あれを見よ! 上、上だっ、貴様ら」


 デュラハンの危機感知はレベル10、俺のはレベル6で、こればかりはデュラハンの方が時に優っている。

 倣って、上空に視線を上げる。


 そうした際、ようやく俺にも危機感知スキルの反応が来る。

 マップには俺らのいるこの位置に、赤い点が表示されていく。


「見えた……」


「キュウビ、奴らの名前はなんだ」


「……ロール=ホーク」


「おいおい、冗談キツイぜ……」


 ロール=ホーク。人一人分ほどの大きさを持ち、特徴的なのは名前の由来ともなっている、グルグルに巻かれたクチバシだ。クチバシが奴らの主な武器であり、突き刺しでなく打撃、つまり上空からの物理攻撃が主流だ。

 それだけに厄介な魔物で、鳥族の上位クラスに属している。


「空中戦向けのゴーレム達じゃ、あの数相手は多分無理だな」


 ゴーレム達の攻撃は足止めくらいにはなるだろうが、撃退することも、討伐することもできないはず。

 魔力100のゴーレム達が倒せるほど、ヤワな相手ではない。


 ここは、俺らが空中戦を担当するしかなさそうだ。


「ゴーレム達よ。これより皆には、引き続き地上戦を担当してもらう! 空中戦には俺らが当たるから、なんとしても堪えろ! 」


 叫びで指示を促す。

 ゴーレム達は軽く頷き、継続して地上戦に全うする。


「さてさて、お前ら。やる気はあるよな? 」


「言われるまでもねぇ」


「無論だ」


「キュキュッ! 」


 聞くまでもなかった。


 この戦いにおいての最大の難点は、「暗闇」だ。

 ロール=ホークらにとっては俺らの動きなんか暗視スキルか何かで把握済みだろう。

 その差をまず詰めなくては。


「ノーグリード、お前の白魔法に灯りを灯すもの、あるか? 」


「ああ、あるぞ。特大のな。なるほど、今から使えってか」


「いや、まだだ。奴らは知性が高いから、最初は様子見で少数でかかってくるはず。そいつらの相手は俺がするから、俺の合図で、残ってる集団目掛けて灯をぶっぱなしてくれ。暗闇に目が慣れたやつほど、効果があるはずだ」


 そう、これも経験談。女神が俺にしてくれたことと、同じ仕様。

 ロール=ホークを倒したのは、結構昔のことだ。元より張っていた空中型のネット式の罠と防護術を使って数体を一気に仕留めたことはある。

 でもこれ程の数相手は、したことない。


 だからと恐るるに足らず。

 やれるだけのことはやってやろう。


 しばらくして、空上で様子を見ていたロール=ホーク達が動き出す。やはり、少数で急降下してきた。

 読みは当たったようだ。


「壁! 」


 土魔法を使いながら、真上に()()()の土壁を作る。

 ロール=ホークたちは問答無用で突っ込み、土壁からパン、パンという音が聞こえる。


 奴らも詰めが甘い。


 知性は、俺の方が上だったようだ。


 土壁に粘土質のものを使ったのにはしっかりとした訳がある。ただ物理攻撃の威力を相殺させるためではない。

 食い込んだ奴らのクチバシから胴体は、果たして粘土質の土壁から抜け出せるだろうか。

 奴らでは、無理である。


 粘土が身体のあちこちを吸盤のように覆っているため、身動きすればするほど苦しくなっていくし、何よりも、摩擦の働きが奴らの脱出を阻止するだろう。


 というわけで、偵察隊はそろそろ倒してしまおう。


 土壁を奴らの身を捕らえたまま地面へと戻していく。

 要するに、押し潰し。その瞬間はかつて壁だった粘土により遮られているため、グロいものを見ずに済んだ。グェッという断末魔は聞こえたが。


「まだか」


「待て、もうちょいだ」


 ノーグリードは魔法をいつでも唱えられる準備をしていた。

 けれど、まだだ。

 奴らが、集団ごと飛んできた瞬間、そこに撃つ必要がある。


 対空戦で考えられるアイデアが、土壁以外にあと一つしかない。奴らも阿呆でないから、また真正面から来ることはない。全方位から襲うのが善策とか考えているんだろうな。


「ここらでボスのお出ましか」


 ロール=ホークたちの集団を束ねていると見受けられる、一際でかい奴がより上空から現れた。名は―――ロール=ホーケスト、ロール=ホーク共の長だ。



 ______________________________

 ______________________________



 〘ロール=ホーケスト ♂〙 【種族】:魔物・鳥族


 Lv :46


 HP :2684/2684


 MP :183/183


 筋力 :1306(+500)(+300)(+1000)

 

 耐久 :750


 魔力 :82


 敏捷 :3230


 幸運 :23


【状態異常】


 憤怒(憤怒時、称号「ロール=ホークの長」の効果発動『筋力+500』)(憤怒時、特殊「鳥族の加護」の効果発動『筋力+300』)


【スキル】


「咆哮Lv12」「筋力上昇(中)Lv28」「疾走Lv43」


【特殊】


「鳥族の加護」


【称号】


「ロール=ホークの長」


 ______________________________

 ______________________________




 ステータスを確認したが、なんだ、筋力に補正入りすぎたろ!敏捷もそこそこ高いし。


 そいつは現れるなり咆哮し、集団ごと突っ込ませ始めた。

 真正面から数の暴力で叩き潰す気らしい。


「今だ、やれ! 」


「ホワイト=フラッシュ! 」


 ノーグリードの詠唱とともに大きな光の玉が奴らに向かって急速に飛んでいき、ロール=ホークたちの先頭とぶつかる寸前に霧散したかと思うと、集団全体が優に包み込まれる程の光線へと変わった。

 白い柱が空に浮かび上がり、やがて消えていく。


 ロール=ホークたちの間に気絶が相次いで起こり、どんどん落下していく。落下にもダメージは入り、落下ダメージでそのほとんどは命を落としていく。残るはロール=ホーケスト一匹となった。


 奴だけはノーグリードの魔法になんとか耐えている。よろめきも多少確認出来る。


 今のうちに叩き込もう。


「行けっ」


 掛け声とともに地面から、ロール=ホーケストへと一つの大きな棘が勢いのって伸びていく。


 けれど、ギリギリの所でひょいと避けられてしまった。逃すまいと、何度も棘を放っていく。だが、一向に当たらない。


 しびれを切らした俺は、棘を十何本か一斉に放った。これには奴も避けることを諦め、打つ手なく串刺しとなる。


「やったな」


「おう」


 見事な連携プレーに感極まって、ノーグリードとハイタッチをする。そして俺ら四人は落下してもなお息絶えてないロール=ホークたちを仕留め、一息つく。

 しかし、まだ夜襲は終わらない。


 地上ではゴーレム達が苦戦している。初めはゴブリンだけの地上戦が、今ではゴブリンナイト、ホブゴブリン、ゴブリンメイジ、オーガ、ゴブリンキングといった面子が揃っている。

 ゴブリンキングが、指導者で間違いない。


「加勢に行くぞ」


「おう! 」


「今こそ、我が行こう」


「どうせ足でまといになるだけだから要らねえよ、スケルトン=タートル」


「はっ、戯言を。足でまといが貴様だということを改めて認識させてやる」


「だから何回も言ってんだろ。『やれるもんなら』ってな」


「貴様よりは多く倒せると思うぞ」


「いっちょ競おうか」


「望むところだ」


 二人が面と向かい合うとどうしてこうなるのか。呆れてものも言えない。


 俺と似て「なんだかなー」というような顔をしている白兎に「関わらねえ方が身のため」と伝えようとした、次の瞬間。


 ノーグリードはその足で駆け出し、デュラハンは黒い馬を召喚後、馬に乗って敵勢へと突っ込んでいく。


「加速―――風刃―――」


「疾走―――黒霧(ドルト)―――」


 二人ともものすごいスピードだ。今の二人の敏捷の能力値が気になるが、あえて見ないことにする。なんか、負けた気がしてならない。


 といっても、敵勢も精鋭揃い。呑気に競い合いとかいうお遊びをしている場合ではないのだ。


「白兎、お前はどうする。俺の中に戻ってるか? 」


「キュキュ。キュ! 」


 〖「戻りません。主様について参る覚悟でございます! 」と〗


「なんか久しいな、フィーさん」


 〖そうですか? 〗


 魔物語からの翻訳は助かるが、ホントにその力、欲しい。


 〖あとこれは忠告です。目の前の敵ばかりに惑わされてはなりませんよ〗


「……どういうことだ」


 〖あのゴブリンの中に亜種がいるのは確認済みです。どれなのかは確定できませんでした。しかも、バグ持ちです。バグ持ちだと、いつ急激的な能力値上昇などが起きてもおかしくありません〗


「亜種!? バグ持ち!? 」


 ゴブリンの亜種は通常のゴブリンの姿をしているも、真っ黒な目が特徴的だからそこで識別できる、ゴブリンキングよりも格段に強い魔物だ。

 スキルは並のゴブリンと何ら変わらないのだが、能力値面で圧倒的な差がある。一度だけ戦ったことがあるが、そこらのドラゴンより遥かに強い。

 会ったが最後、冒険者のほとんどは死ぬ運命。

 前に俺が勝てたのも、たまたまそいつが弱ってたから。


 しかもバグ持ちで、何が起こるか分からない状況。

 勝てる気が、しない。


「でも、バグ処理のためなら躊躇うな、だろ、フィーさん」


 〖その通りです。ご武運を〗


 さすがに弱ってたりしないよなぁ、ゴブリン亜種。


 〖「女神の加護」に「女神の祝福」がありますよね。今回はお使いになられた方がよろしいかと〗


「女神の祝福」。その効果は全能力値を倍加させるというもので、発動条件は女神に慈悲を乞うことだ。

 要は、女神に頭を下げろ、ということ。


「断る」


 〖そう堂々と言われると傷つきますよ。もう、貴方様って人は頑固ですね……いいでしょう。今回は特別に、慈悲を乞わなくても効果を与えてあげます。()()、ですよ〗


「それも断る。なんか気に入らん」


 〖あー聞こなーい。それっ〗


 フィーさんの声に合わせて、俺のステータス画面に表示された全能力値が、一気に二倍になった。それも、強制的に。




 _____________________________

 _____________________________



 〘ヒビキ 18歳 男性〙 【種族】:人間 【職業】:トラッパー


 Lv :99


 HP :9500(+9500)/9500


 MP :5928(+6200)/6200


 筋力 :1530(+1530)

 

 耐久 :1053(+1053)


 魔力 :3820(+3820)


 敏捷 :4900(+4900)


 幸運 :12(+12)


【状態異常】


 普通


【スキル】


「罠作成LvMAX」「罠設置LvMAX」「毒耐性LvMAX」


「防護術Lv52」「隠蔽Lv64」「千里眼Lv22」「錬金術Lv90」


「疾走Lv38」「強固Lv52」「暗視Lv53」「危機感知Lv6」「鉤爪Lv25」「隠れ身Lv86」


「土魔法Lv62」「水魔法耐性Lv80」「黒魔法耐性Lv80」「光魔法耐性Lv80」「土魔法耐性Lv86」「風魔法耐性Lv80」「白魔法耐性Lv80」


 スキルポイント:80


【特殊】


「女神の加護」


【称号】


「ボス殺し」「トラップマスター」


 ______________________________

 ______________________________




 〖有無は言わせませんよー。それじゃあ、頑張って下さいね。私はそろそろ眠いのです。寝る子は育つと言うでしょう? 〗


「あんたの何が育つってんだ」


 〖まあ! それはセクハラ発言ですよ? ヒビキ様になら……と・く・べ・つ・に、教えて差し上げても構いませんが〗


「いらねえ情報だな」


 〖ヒビキ様はドS体質でございますね。そこがまたいい―――〗


「黙れ」


 〖ということで、女神さんは就寝になります。あと10秒ほどでこの回線を一時遮断する設定を今行いました。最後になにか言いたい事はございますか〗


「うん。()()さん、頑張れ。あんたに育つものはもう歳しかねえ」


 〖なっ―――〗


 回線遮断。


 言いたい事はいえた気がする。


 さあ、気持ちを入れ替えて一暴れするか。


「白兎、ついてくるなら俺の頭に乗るか? それが安全っぽいし。けど、ゴブリン亜種が出たら残念だが元に戻すからな。それでいいか」


「キュ! 」


 威勢のいい返事を受け、俺の気合いも入る。

 白兎を頭に乗せて、って、こいつ、めっちゃ軽いし、あとお腹が生暖かい。


「しっかりつかまってろよ」


「キュキュ」


 俺も参戦することになったが、あの二人が相手してる以外にもまだ強敵はうじゃうじゃいる。その中で面倒なのが、ゴブリンキングとゴブリンメイジだ。

 ゴブリンキングも知性が高く、その采配力は優れたものだ。先に潰さないと厄介だ。


 そしてゴブリンメイジ。魔法を駆使するゴブリンたちのことだ。それぞれが多様な属性の魔法を使うため、侮れない。ゴブリンキングを先に潰して陣形がバラバラになった隙に虱潰しに倒していくのがいいだろう。


 途中、もしもゴブリン亜種に会ってしまったら逃げ隠れはできない。相手をする他ないな。できることなら最後まで残しておきたいが、特定できてないとなるとキツい。

 もしかすると、デュラハンかノーグリードのどちらかが相手をしているかもしれない。そうならないと祈るしかない。


『俺がいち早くゴブリン亜種を見つけて、早々に葬る』、それを念頭に置いて、俺は早速罠を作り始める。


 奴らに、罠の―――いや、俺の本当の恐ろしさを教えてやらねえといけない。襲ってきたことを後悔させてやる。


 スキル「罠作成LvMAX」で早急に作った罠は、広範囲に仕掛けられて身動きを取れなくする効果を持つ『痺れ罠極(A+級)』。A+級だけあって、効力・効果時間ともに抜群である。

 作成履歴から痺れ罠(C級)を作り、そこにとっておきのアイテムを加えることで、ぐんと効果が伸びるのだ。


 ビングの牙ではない、他の促進素材。


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『ライジオンの牙(S級)』《「効果」:錬金により対象物の効果を一時的に超倍増する》


 _____________________________

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 ビングの牙の効果をさらに上回るもの。

 これもドロップアイテムの一つで沢山所持している。詳しくは、68個。

 冒険者ギルドに報告していない、未知のアイテムでもある。


 これを痺れ罠(C級)に合わせることで、痺れ罠極(A+級)ができる。前にも作ったことがあるから作成履歴に残っているはずだけれども、探すのが大変なため、直に作った方が早く済む。

 この痺れ罠極を、今度こそ作成履歴よりあと五個ほど作成する。


 それから、痺れ罠極と同時に作動する罠を作る。

 痺れ罠というものはその範囲内で電流を流すことで「痺れ」を生み出している。そこでいう電流に則って作動し、かつ威力のある罠だと連携が取れている。


 それで作ったのが、名付けて『ネット式小型電磁砲α‬(?)』。

 クラスが?になってる時点で強力だということだろう。


「ラ=スパイダーの糸」を50個、「小型電磁砲」を99個用いている。

 小型電磁砲は、俺が試しで大量に余っていた「銀」と「銅線」と何かを錬金させた時に出来た、筒状のため電流を通すと強い磁気を前方に発生させ、その磁気の中に電流が通うことでまさにビームのようになるという恐ろしいもの。小型電磁砲は、まだ余りが山のようにあるので、なんとか消費したいところ。


 それを複雑に絡み合ったラ=スパイダーの糸の上に大量に設置し、痺れ罠と重ねて置くことで、発動時に真っ直ぐ上にビームが放たれ、ビーム同士が結束し合い、巨大な落雷のようになると予想している。これを痺れ罠極の数量と同じにするため六個作る。


 見せしめ用の罠はこれくらいで十分だろう。


1万ちょいまで綴ってましたが、夜襲編はあと何話か続きそうなので、話的にキリの良い9500字で区切りました……。

これから次の話の創作にうつらねば!


お読み頂きありがとうございます!

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