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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
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第37話 土の番人

「キュウビ、倒木で丁度いい椅子つくったぞー。二人前」


「お、センキュー」


「ほう。少しは気が利くではないか」


「はっ、お前の分はねーよ不死族(アンデッド)。そこらに落ちてる石ころにでも座ってろ」


「これで突き殺してやろうか」


「やれるもんならな。俺のバルガノムに勝てるとでも? 」


「醜いゴーレムめが」


「何だやる気かぁ、スケルトン=タートル」


 喧嘩は俺の邪魔にならないとこでやって欲しい。


 俺は今、空中型としてどんな罠を仕掛けたら良いのかを模索している。

 例えば、緻密な網目を再現出来る「ラ=スパイダーの糸」を狭い範囲でドーム状に張って「強固」スキルで固めるのはどうか。

 だとしてもその緻密な網目から魔物の攻撃が漏れたりする可能性はある。耐久が上がったとしても、破れないという保証もないし、網目でなく完全に塞ぐ形だと、それはそれで息が出来なくなるし。


 でも空中型はやっぱりネット張りが最もなんだよな……。


「どうしたキュウビ、困ってんのか」


「ああ。絶賛お困り中だ」


「どうせお前のことだから、罠張り関連だろ? 」


 どうせってなんだ、どうせって。

 結構重要なことだと思うんだが。


「お前は昔っから警戒しすぎなんだよ。気楽に行こうぜ。何かあったら俺がこの剣でバッサバッサ斬ったりなんなりして解決してやる。敵が地中にいようが地上にいようが、空にいようがな」


「斬るだけじゃ解決しない問題はどうすんだよ……」


「そんときは、そんときだ」


 本当にお気楽野郎だな、ノーグリードは。


 ……いや、待て。

 俺は何かに固執していたのかもしれない。


 別に、空中戦に対して罠を仕掛けなくとも良いのでは。


 そう考え、ふと思い付いたアイデアが成立することに確証を得るため、自身のステータスを見てみる。



 ____________________________

 ____________________________



【スキル】


「罠作成LvMAX」「罠設置LvMAX」「毒耐性LvMAX」


「防護術Lv52」「隠蔽Lv64」「千里眼Lv22」「錬金術Lv90」


「疾走Lv38」「強固Lv52」「暗視Lv53」「危機感知Lv6」「鉤爪Lv25」「隠れ身Lv86」


「土魔法Lv62」「水魔法耐性Lv80」「黒魔法耐性Lv80」「光魔法耐性Lv80」「土魔法耐性Lv86」「風魔法耐性Lv80」「白魔法耐性Lv80」


 ____________________________

 ____________________________



 ユーモネラス討伐後に得たというスキル「土魔法Lv62」が、ちゃんと【スキル】欄に追加されているのを確認し、俺は確証を得た。

 これで罠を張ることなく、夜襲に備えられるはず。


 今の今まで俺は、地上はさておき空中からの攻撃に対してネットのようなものを張っておくことばかりに考えが偏っていた。


 でも別に、空中からの攻撃に対して()()()()の迎撃によって相殺してはいけないわけではない。あわよくば、倒してくれる存在……。


 要するに、俺らがいくら無防備でも、区域を完璧に守護する()()を大量に設置しておけば済む話なのだ。


 その番人を、今から()()()いこう。



 その名も―――ゴーレム。



『魔境の森』というステージに数多く配置されたゴーレムたち程緻密に仕上げられはしないだろうが、創ってみる価値はある。


 ゴーレムを創っても空中戦には不向きだという点については後々補える問題。まずは創れるかどうかだ。



 〖まさか、ゴーレムを創ろうとするとは。また面白くなりそうですね〗


 フィーさんが俺の心を読むなりゴーレム生成に興味津々でいるのはどうでもいいとして、ゴーレムは『魔境の森』にいるやつらと同じ比較的スリムな体型にした方が良いのだろうか。私的な話、オリジナリティを出したいところではある。


「まあ、試作品でも創ってみるか」


 魔法の唱え方が一向に分からないが、何となくでスキル「土魔法」を行使し、心の中で「ゴーレム生成」と念じてみる。


 こんなデタラメな詠唱が通じるわけがないと思い始めたまさにその時、すぐ目の前の地面が波のようにうねりだし、そこから2メートルはあろう巨体をもつ黄土色の何かが現れていった。


 そして当の本人は絶句しているのである。


 何か、じゃない。おそらくこれが、ゴーレム。ゴーレムってこんなに角付いた体型をしていなかったような。

 まず大き過ぎて、どうしても疑ってしまう。


 一体のゴーレムが俺を背に突っ立っている。どう呼びかければよいのか。


「あ、えっと」


 ぎこちない反応を見せた、ただそれだけなのに、その巨体は俺のほうに向き直ってきた。

 顔は……のっぺらぼう。道端で会ったら明らかに腰を抜かす程の恐ろしさがある。


「これまたド派手なもんを作ったな。これってあそこのゴーレムを真似て―――」


 ノーグリードが感想を述べながら向かい側から近付いてくると、ゴーレムは再び向き直し、両拳をドンッドンッと叩き合わせて、正しく戦闘態勢に入っている。


「待て、ゴーレム。あいつは敵じゃなくて、仲間だ」


 そう言った途端、ゴーレムは両腕を下ろし、常態に戻った。

 なるほど、急に戦闘態勢に入ったのは生成者を守るための所作らしい。

 何が敵で何が仲間か、という情報はあらかじめゴーレムに組み込まれていないようだ。ただ生成者に従順な存在と見れる。


 一体のゴーレム生成にMPを15消費したから、このままであれば100体以上を生成できる。俺のMPはまだまだ5000を越している。


 たしかに、新たにゴーレムを生成するのは重要なことだが、今生み出したゴーレムの性能もある程度把握しておきたい。数が増えたところで性能が劣っていれば無意味でしかないから。


 なんていったって魔物による()()を阻止するための()()を生み出すことが目的だからだ。

お読み頂きありがとうございます!


罠でなくゴーレムを設置するという、トラップマスターらしからぬアイデア……。


物語的にアウトな気がしますが、罠ではどうにも出来ない空中からの夜襲対策として、ゴーレムがどう働いてくれるのか。


ここまで来れば、ヒビキの転生初日の夜に夜襲がないわけがない……?

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