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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
33/56

第32話 トラップマスターの脱獄④

「うっ……痛てぇ」


 ノーグリードは(うつぶ)せの状態から一旦仰向けになり、目を開いた。気絶が解けたようだ。

 そんなやつを上から覗き込むようにして目覚めの挨拶をする。


「お疲れ」


 先に謝るべきなのかどうか、そこん所が分からない。

 まあ、あえて教える必要は無いしな。


 だが、ノーグリードの様子は変だ。


 のっそりと起き上がるなり、すぐ近くに放り捨てられていた大剣―――深紅の大剣『バルガノム』を手に取り、暗い顔して俺に向けて剣を構える。


「『ウィンド・ポイント』!」


 そしていきなり風魔法「ウィンド・ポイント」を使ってきた。


 この魔法の効果は、単純に対象を風の魔法で吹っ飛ばすというもの。

 でも当たると厄介なため、素早く横移動して回避する。


「しまった」


 避けた先に、ノーグリードが既に待ち構えていた。

 敏捷性なら俺の方が勝っているのに。多分、こいつのスキル欄にあった「加速Lv」のせいだろう。


 なにぶん、避けようがない。


 ならば、と、緊急で「防護術」を使い、やつの一振を真剣白刃取りで止めた。

 ぷるぷると、手が震え止まない。


「すまん! 俺が、悪かった! 」


 恐らく痛い目に遭わせられたことに憤怒している。

 ここは、謝らねば。


「殺されるかと思った。痛かった。だから、お前にも味あわせてやる。この剣で、痛みというものをな」


「だから本当にすまない! もう絶対にこんなこと、しない! 」


「嘘だな」


 バレバレだった。


「マジでやめろ! 死ぬ、これは死んじゃうから! 」


「簡単には死なせない。苦しみながら、死ね」


「旧友に対してあんまりじゃねぇ!? 」


「お前が言うな! 」


 目が……目が、笑ってない。


 このままじゃ押し負けて、痛い思いをしてしまう。


 何かないか何かないか。


 ひとまずステータス確認をしよう。



 自身のステータスを隈無く確認してみる。そしたらなんと、バジリスクから奪ったものの中に使えそうなスキルがあった。


「強固Lv52」だ。

 効果はその名の通り、耐久を大幅に向上させ、また物理的に表皮を硬くするのである。


 ありがとう、バジリスク。このスキル、ぜひ使わせてもらうぞ。

 いつかまた倒して、肉を喰らってやるからな。


 そう思い残し、「強固」を使用する。



 すると、手の震えは止まり、なおかつ『バルガノム』はピクリとも動かなくなった。もはや、白刃取りどころではない。


「もう、やめよう。マジですまんかった。代わりにと言ってはなんなんだが、欲しいものはあるか」


「モノで釣る気か! 」


「そう、なるよな―――」


「その話、乗った! 」


 え、それでいいの?


「欲しいものっつーか、俺、また旅がしたい。付き合え、これは強制だ。脱獄のおかげで村には帰れねーから暇だ。それに、腕がなまって仕方がねぇ。だから付き合え」


「いや、別に構わんが」


 先程までの奴とは取って代わったような雰囲気。

 俺、地雷を踏んではないよな……?不安になってきた。


「結構辛い旅だが、それでもいいのか」


「辛い方がより楽しめるってもんだ。どんと来い、だぜ」


 ノーグリードは胸を張って、旅へと意識を傾けている。

 こうもあっさりと旅仲間を増やしても良いものだろうか。

 俺には女神との秘密もあるし、どうなのか。


「よし、そうとなればこの一件はこれにて終了。()()()、すんなよ? 」


「あ、ああ」


 そんなこと言われたら刺さる刺さる、俺の胸のずっと奥に深く突き刺さってしまうから。


 〖旅の供ができたか……羨ましいな〗


 悲しげなデュラハンの声。

 白兎とその仲間たちと交友するまで、友だなんて付き合いがなかったんだっけ。


 〖旅の供ならば、我もその一部。我は供ではなく、主の如き存在だがな……新参者とも友好的になれれば良いのだが〗


 新しく友を増やしたがっておられる。


 ここは気を遣って―――



「出てこい、デュラハン」



 俺は、何の合図もなしにデュラハンを召喚した。


 デュラハンを召喚しただけでMPが200も持っていかれたことにひどく驚いたが、俺の場合はMPなんてすぐに尽きるものでもないし、安心だ。


 そうして、黒鎧を纏った、銀白色の髪を長く伸ばしたデュラハンが目の前に現れた。

 ちなみに、あの黒い馬は召喚されていない。ということは、デュラハン自身が召喚したやつなのだろう。


「なぜ、我を呼んだのだ」


 デュラハンが率直に尋ねてくる最中、ノーグリードはというと、目を点にして突如現れたデュラハンを見ていた。

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