第3話 最悪な出迎え
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……何やら背中にモゾモゾとした感触が。すぐさま俺は目を覚まし、とりあえず上体を起こす。
「す、すげぇなぁ」
辺り一面には、広大な草原と青く澄み渡った優雅なる青空とが見事にマッチングした風景が広がっている。これを見ては感嘆せずにはいられない。
「キュ、キュキュ」
だれかの声が背後から聞こえる。興奮気味だった俺は、咄嗟のことにも関わらず、厭わず後ろに振り向いた。
「う、兎? 」
白毛の中に赤い目を二つ持った兎が、俺の目の前に立っている。二足歩行の兎、か。それでも可愛いな。
「転生した俺を歓迎してくれてんのか……? 」
それは素直に嬉しい。多分、フィーさんが手を回してくれたのだろう。流石、女神のフィーさん。色々と気が利く人じゃねぇか。
感謝の意味を込めて俺がその兎の頭を撫でようとした時だった。
「キュキュッ! 」
「おぶっ!? 」
その兎はいきなり、俺の顔面に真っ直ぐなうさ耳ストレートを繰り出してきた。殴られた俺は、そのまま後ろに倒れる。
「いってぇ……何しやがん、だ……」
そこまで言って、息を呑む。
再び兎の方に顔を向けた時、そいつの背後には大きさも色も、何もかもが違う兎らしき奴らが沢山立っていた。
俺は何かを察し、まずはゆっくりと立ち上がり、落ち着いたように、着ている灰色のパーカーに引っ付いている草を払う。それからくるりと回って後ろに向き直し、真っ直ぐな地平線を見つめる。
「キュキュキュッ! 」
「急げ、俺っ! 」
俺はそのまま全力で走り出した。後ろからあの白兎の合図で動き出した奴らが追ってくるのが音だけで分かる。シャラシャラ、ズドン、ドスドス。どれも恐怖でしかない。
「なんだよこれっ!? 」
女神悪女説、文句なく立証した──もうあいつは断罪決定だ……くそっ。
「何かねぇのかよ! 武器とか魔法とか、いいや罠とか! そういや罠なんぞ仕掛けてねぇな、最悪だっ! 」
【──『死ぬと二度と生き返れない』──】、あいつの声がふと蘇る。今一時でも足を止めたが最後、運の尽きである。だから俺は、とにかく走りまくる。
「ステータス一覧とか開けねぇのか! 」
俺がそう叫ぶと、ボゥンという効果音をたてて視界の左側に俺のステータスが表示された。
「おおっ! 」
走り疲れながらであるが、ステータスその他を急いで確認する。
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〘ヒビキ 18歳 男性〙 【種族】:人間 【職業】:トラッパー
Lv :99
HP :9500/9500
MP :6200/6200
筋力 :1530
耐久 :1053
魔力 :3820
敏捷 :4900
幸運 :12
【状態異常】
普通
【スキル】
「罠作成LvMAX」「罠設置LvMAX」「防護術Lv52」「隠蔽Lv64」「千里眼Lv22」「錬金術Lv90」
スキルポイント:80
【特殊】
「女神の加護」
【称号】
「ボス殺し」「トラップマスター」
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