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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
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第28話 ミーシャを知る者

 この人にならまともに話が出来そうだ。


 信用のもと、全容を明かすことにした。


「グレナの街に向かっていた時、ある女の子が賊に襲われていたので、救出したんです。その子の名は、ミーシャ。この村の村長の娘さんらしいのです」


「ミーシャ……ミーシャって、あのミーシャか!? 」


「何かお知りなんですか? 」


「何かって、俺はあいつ――――――ミーシャの兄だ。妹の名前を知らないわけがないだろ」


 ミーシャの兄、だと?


 なぜこんな場所に村長の家族の一員がいるのか。


 そんなの、信じ難いに決まってる。嘘をついて情報を引き出し、挙句の果てには脅迫しようという目論見なぞ、お見通しだ。


「ミーシャは俺の自慢の妹だからなー。あいつ、見た目もいいし、料理はできるし、裁縫だってできる。でもな、真面目すぎるんだよ。心配症というかなんというか……」


 この人は……本当にミーシャの兄さんらしい。

 語りからして、妹の性格すらも把握してるようだ。そう認めざるを得ない。


「まあ、ここ5年くらいは見てないけどな」


 それ、笑いながらいうことじゃない。

 何が理由で捕まったのか、なおのこと気になってきた。


「なぜ俺がここにいるのか、って聞きたそうな顔してるな。お前の顔、分かりやすくて助かる」


 読心術でも極めてらっしゃるんですかね!?


 さっきから心が読まれているようで気味が悪いんだが。


「一つ、自慢してもいいか」


「自慢、ですか」


「ああ、そうだ」


 いきなり神妙な顔をし、彼は軽いようで苦々しい拘束された経緯を話し出した。


「俺は村人であって、冒険者だ。力比べじゃそこらの冒険者に劣ることはまずない。今はこんな姿になっちゃあいるが、昔、グレナの街の冒険者ギルドで『ノーグリード』って名でS級冒険者をやってたんだぜ? 」



「ノーグリードって、あの、」



「ところでなぁ、あんた、昔俺が組んでいた奴にすげー似てる気がするんだが……」



「だって、《ゲルガノルガ》討伐のあとからずっといなくなってた……。あ、」



「やっぱりキュウビか! 久しいな! お前の声も面も変わってねぇな! 」



「それは俺の台詞だ。こんなところで会えるとはな、近接バカ! 」



「バカは余計だろう」



 俺が昔組んでいた最高のライバル『ノーグリード』。


 またの名を近接バカ。


 この近接バカは、剣を持ったら鬼神の如く舞い、ライバルである俺以外に敵無しだった。


 だが()()()から、奴はどこかに消えた。


 冒険者ギルドの掲示板に張り出された緊急クエスト「ゲルガノルガ討伐」を完遂した後だ。


 いつものように酒場に行こうと誘ったら、奴は「俺はいい。今から寄るところがある」と言って、姿を消した。


 それからというもの影すら確認出来ず、俺はずっとソロ活動でぼちぼち頑張ってきた。


「すまんな。あの時、急にいなくなっちまって」


 覚えてたんだな。というか、ノーグリードがNPCだったことに驚きが絶えないのだが。


「いいさ。で、それとこの状況になんの関係が? 」


「そう、そこからが本題だ。俺らがゲルガノルガ討伐が完了して街に戻った時、入れ違えるように門から出ていく奴ら数人が妙な話をしていたのを俺はこっそり盗み聞きした。『ヨルム村にはいい女が揃ってるらしい』、そんな会話だったな」


「それで頭にきて―――」


「いや、その時はまだ耐えた。要はその後だ」


 え、そうなの?


「お前と別れた後、そいつらを尾行した。そしたら……奴らな、武器を構えてヨルム村の方に向かっていくわけよ。まだ「魔物討伐のため」っつークエストの可能性もあったし、様子を見てたが。奴ら、村近くまで武器を仕舞わず、むしろ村に向かって突っ込んだり、弓だの魔法だの遠距離攻撃も始めやがった」


「俺はまず『風刃』で弓やらを切り落としたりした。前衛に出ていた奴らもさすがのこれには驚いたみたいで、揃いも揃って口を開けて間抜け面晒してたな。まあ、その後のことはお前でも大方予想がつくだろ」


「ぶちのめした、だろ? 」


「そうだ。結果村を守れたわけなんだが……村の皆はそのことを何も知らねえで、地面に転がってる奴ら―――冒険者を見てこう思ったらしい――――――俺が、殺人者だと」


「なら、ちゃんと訳を言えたか? 」


「ん、いや、無駄だった。村の皆にも、当然家族にも事情を話したんだが、親父や村の皆はすぐに俺を犯人扱い。それでこのザマよ」


 村を守ったつもりが犯人扱い、なんとも悲しい結末。


「だが、あの時もっと粘ってりゃ、俺の家族―――クソ親父は抜きにして、叔父と叔母、何よりもミーシャに迷惑がかかっちまってたはずだ。仕方ねえったらありゃしねぇな、この村は」


「お前が言うか」


「いいだろ、別に」


 ふてぶてしく言ってくるが、これは村人達の誤解が招いた冤罪だ。同じく冤罪に掛けられた身からすれば、「可哀想」だなんて言ってられない。


「よし、脱獄するか」


「……は? 何を言い出すかと思えば、阿呆らしい」


「なんでだ」


「簡単な話だろ。たとえこの建物から出れたとしても、顔がバレてまた元通りだからだ。人に危害を加えりゃ、それこそ外聞も悪いからな。悪いことは言わない、諦めろ」


 変な所で真面目なんだよな、こいつは。

 だが今は、真面目なもんが損する状況だ。


「俺の場合、脱獄成功率100パーセントなんだが。脱獄に適したスキルがあるからな」


「……本当か? 」


「本当だ。で、どうするよ―――脱獄するか、しないのか。話はそれからだ」


「5年も待ったんだ、迷惑がどうのこうの言ってられねぇ。無論、できるものなら脱獄するさ」


 決まりだな。

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