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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
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第26話 スライムの黒核

更新が遅れました。


加え、物話の内容が右往左往しているみたいで申し訳ありません。

「ところで君は……」


「私はヨルム村の村長が娘、ウォルム・ミーシャと申します。この度は、本当にありがとうございました! 」


「だから別にいいって。困った時はお互い様だから」


「そ、そういうものなのですか? 」


「ああ。そういうもんだ」


「それならば……何かお困りのことはありませんか? 」


 困ったこと、か。今は何もないような。


 色々と堪能するためにグレナの街にいく予定だが、その道のりとしても問題はない。


「これからの予定って、何かございますでしょうか」


「今からそこのグレナの街を散策しようかなと思ってる」


「そ、そうですか……」


 彼女はどうしてか、残念そうにしている。

 恩返しでもやらないと気が済まない性格なのだろうか。


「もし良ければ私の村に――――――ううん、グレナの街でごゆっくりなさって下さい。救けて頂いたこと、一生忘れませ―――」


「あの、君の住むヨルム村はどちらに? 」


「ヨ、ヨルム村はここより西の方角にしばし歩いた所にあります! 是非一度、お立ち寄り下さい! おもてなし致します、って、あ、あの、すみませんっ」


 性格を見定めていた俺の目に、やはり狂いはなかった。

 それに、彼女の意思を無下にするのもタチが悪い。ここは甘んじておくのがせめてもの礼儀だ。


「よろこんで立ち寄らせてもらう」


「は、はい! それと、差し支えなければお名前を教えて頂けませんか……? 」


「俺か。俺は、ヒビキ。冒険者だ」


「ヒビキさん、ですね。ええ、一生忘れません! 」


 可憐な容姿に真面目で明るい女の子。

 ヨルム村ではさぞかし人気が高かろう。


「それで、君はもしかして買い物の帰りなのかな」


「そうです……途中、あの者達に捕まってしまいまして」


 そういうことだったんだ。

 全く、奴らには今一度成敗が必要らしい。一度打ちのめしたところで反省などしないのが奴らの特徴。


 今でなくても、いずれ必ず葬ってやる。何度でも、何度でも。


 奴らのことも一応念頭に置いておくとして、これからその村にいくのも悪くないな。正直、転生する以前も、街より村の方がなんだかほんわかしていて、性に合っていた。


 街に行くのは明日でも明明後日でもいい。


「街にはいつでもいけるし、今からでも立ち寄っていいか」


「よろしいのですか!? 」


 そこまで驚かれるとは思ってもいなかった。


 悪くない話、なおさらその予定に変更しないといけないな。


「君の村には興味が湧いてきた。あと、帰りにまた襲われるかもしれないし、君の護衛も含めて、ね。今度は魔物の可能性もある」


「重ね重ね、感謝致します……」


「いいからいいから。道案内、頼むよ」


「承知しました」


 ご機嫌になった彼女―――ミーシャはくるりと回って向きを変え、パンの積まれた藁の籠を片手に歩き出した。


「ん? ミーシャさん、何かポケットから出てるぞ」


「え、あ、これですか。これは私のおまじないのアイテムです。落ちるところでしたね。どうもありがとうございます」


【ヒビキ様……あれって】


「そんなまさか。悪いけど、ポケットから出してちょっと見せてくれるかな」


「構いませんが……? 」



 俺はミーシャから黒くて小さな球体を受け取り、唖然とする。



 見たことは、ある。



 ただし、()()()()()()()()()()()()()()()としてのみ。



「まさか本当に、()()()()()()()があったとはな。これは、驚いた」


【それもそうですが、運営が勝手に発表した《エメラルド=リュート=スライム》……イメージデザインだけだったので、てっきり実装されてないと思っていましたよ】



 俺とフィーさんが今話題にしているのは、『スライムの黒核(?級)』をドロップすると設定された、実際には存在しないとされてきた唯一の魔物、《エメラルド=リュート=スライム》。


 そいつは鮮やかで透き通ったエメラルド色をしているが、能力値は普通のスライムと何ら変わりない。


 そんな魔物を追加する、と随分前に運営が突如発表したわけだが、設計ミスがあったとしてその案件は取り下げられた。


 それが、俺たちプレイヤーに伝えられた()()()()


 実情と違うとでも言うのか。流石の運営でもこんな嘘をバラ撒くはずがない。まして、人工知能の女神―――フィーさんですら知らなかったらしい。



 ということは。



「―――バグ―――」



「一体誰と話されてるのですか? 」


 フィーさんの声と対話している俺を、ミーシャは不思議そうに見ている。だけど、本当のことを話すことは、この身の上を鑑みて、不可能である。


 それは俺とフィーさんの秘密だから。


「ただの独り言。気にしないで」


「そうですか、分かりました」


「これ返すね。あまりにも珍しかったから、つい。ありがとう」


「昔、黄緑色のスライムっていう魔物を倒した時に落ちてたものでして。なんか変な感じですよね」


「いや、別に変じゃない。これからも大切にしていいと思う」


「お言葉通り、大切にします! 」


 ミーシャは簡単に受け取るも、俺が独り言を言っていたとして納得し、先をどんどん進んでいく。


 いつ魔物や冒険者に襲われてもおかしくない状況だ。護衛のこともあり、俺は彼女の隣まで急ぐ。


 その後も、ヨルム村の話やグレナの街のおいしいパン屋の話、親切な冒険者の話だったりと、彼女は色々な話をしてくれた。

 中には関わらない方がいいという連中―――いわばクランの話など、ためになるものまで。


 でも、俺の気の半分ほどはどうも『スライムの黒核』と、彼女が《エメラルド=リュート=スライム》を倒してそれを手に入れたという事実に引き寄せられていた。


 ちなみに、『スライムの黒核』の効果は全て「?」となっており、謎が深まるばかり。運営が発表したのはあくまでもアイテム名とデザインだけだ。効果は一体どのようなものになっているのか、気になって仕方がなかった。



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『スライムの黒核(?級)』《「効果」:?????》


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