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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第二章 最弱職の最強者
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第25話 三段構え

 あのボスみたいなやつが調理士とは。笑えてくるが、なるほどなるほど、雑魚ばかりか。


 あと確認してないのは――――ゼロという太った男の赤い斧の性能だけだな。


 _____________________________

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『グラル=アックス(A+級)』《筋力+800「効果」:ヒット時、対象の耐久-100》


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 強武器すぎだ。


 今までいろんなものを見てきたが、そんな武器、見たことも聞いたこともねぇ。新武器……にしては尋常でないレベルの代物だ。


 ヒット時に耐久が-100に加え、装備するだけで筋力+800という効果自体、S級、いや、S+級と言われてもおかしくない。


 俺の耐久が大体1000ぐらいだから、攻撃を食らうだけで耐久をごっそり持ってかれるのは、最悪死に直結する。


「なーに俺の武器をジロジロ見てんだ?ああ、()()のか」


 ブン、ブンと手持ち無沙汰に赤斧を何度も振り下ろしながら言葉を交わしてくる。

 俺は、相変わらずの無反応を通す。


「てことは、俺のステータスもとっくに見たんだよな? 俺がいかに危険なやつか思い知っただろうがな」


 いや、なにも。


 俺にとっては、赤斧以外、虫けらも同然。


「さーてさて、お前のステータスも見せてもらおうじゃないか…………あぁ? なんで映らねぇんだ」


 ホイホイこのステータスを明かすわけがないだろう。


「隠蔽Lv64」をあらかじめ使っていて正解だった。けど、「隠蔽」がステータス反映にも効果があったとは正直俺もびっくりだ。てっきり、当人の身を隠すだけだと思ってた。


 繰り返し無駄な詮索をした後、奴は軽く舌打ちをし、赤斧を改めてぎゅっと握りしめ、背後の魔法使いに何か指示を出す。



「まあいい。そこの女は奴隷送り、お前は冒険者の街送りだ! 」



 ゼロという男は威勢よく叫び、こちらに接近してくる。


 後方には何らかの指示を受けた魔法使いが、目の前に薄茶色の魔法陣を描いてタイミングを見計らっている。




 でも、もう遅い。




 今から構える必要は無い。




 ゼロが俺の間合いに入った瞬間に作動したのは、別に痺れ罠だけじゃない。

 用意周到なこの俺が仕掛けたのは、()()()()()の罠だ。



 一つ、「痺れ罠」。



 一つ、「爆風罠(ボーミング・トラップ)」。



 一つ、「刃の舞(カッティング)」。



 まずは痺れ罠で動きを止める。


 続いて「普通の爆弾(E級)」を5個ほど使用した「爆風罠(ボーミング・トラップ)」で相手の身体を上空へと吹っ飛ばし、最後には鋭利な「シャーペルーの牙(C級)」を沢山敷き詰めた刃の舞(カッティング)の作動により、爆風にのせて奴の身体を切り刻む。


 この仕掛けは前にS級の魔物にも通用している。奴が耐えきれるはずがない。武器以外、てんでダメだから。


 奴は何か喚くことなく地に落ちた。状態を確認すると、やはり「死亡」となっている。


 冒険者は、死亡してもその地で状態を維持したまま観戦することが出来る。観戦をやめた時、光の粒子となり冒険者の街――――始まりの街へと転送される。しかし代償として、所持ゴールドの3分の1が消失される。


 俺の場合は本当の死。


 とまあ俺に関わる現実話は早々と切り捨てるとして。


 最後は魔法使いだ。


 俺は再び臨戦態勢に入る。


 すると魔法使いは、自ら光の粒子となり姿を消した。


 それからゼロという男も、最初の奇襲で死亡したあの盗賊も、今ではすっかり眼前から消えている。


 魔法使いの野郎に関しては、チームかなにかのチャットで話し合い、やむなく『リスタート』を選んだのだろう。このゲームでは自主的に死亡、復帰する選択肢がある。


 当初、『プレイヤーキラー』と呼ばれる所業があった。その名の通り、同じ冒険者を殺し、アイテムやロストを剥奪するというものだ。その対処として運営は『リスタート』、つまりプレイヤーキラーによる被害を抑えるための策を講じたわけだ。


 何者かに殺された場合、アイテムやロストはその場に留まってしまう。今しがた倒したゼロと盗賊もそうだ。散らばっているわけでなく、死体に近付くとステータス及びそれらの項目が表れ、そこに全てが集約されている。

 しかし『リスタート』を選んだとすれば、アイテムやロストは残留されることはない。ただし、一度につき所持金の3分の1が失われるのはお約束である。


 というわけで、魔法使いだけは『リスタート』を選んだ。本来の意義を無視した、せこい逃げ方だ。それでもこのようなことは一度や二度ならず、至る所で起きている。

 一々そういうことを言ってられない状況を加味し、あまり触れないでおこう。


 無論、俺がやれば復帰不可能だが。


 笑えない要素でしかない。



【運営が実装した新武器『グラル=アックス』を前によくやれましたね。お見事です】


「やっぱり新武器か。それに実装したのフィーさんじゃなく運営だったってのは、意外だな」


【念の為に聞いておきますが、なぜです? 】


「運営があれ程の掟破りの武器を実装なんかするはずがない、と思ったからな。そうなると考えられる矛先はフィーさんしかいないし」


【失礼ですね。私があんな面白くない武器を実装なんかするわけがないではありませんか! 】


 面白かったら何でもいいんですか。そうですか。女神のやり方に不満はあったが、所有者がいなくなった以上、この「グラル=アックス」は俺が頂いておこう。興味もあったため、少し喜びを感じつつその斧を手にしてアイテム欄に収めた。





「あ、あの! 救けてくれて、あ、ありがとうございましたっ」


 強く引っ張られていたために乱れてしまった長くて茶色い髪を前方に倒しながら深く、深く面を下げられた。


「顔を上げて、顔を上げて」


 俺は慌てて声を掛ける。


 弱い不良共を退けただけで心から感謝されるのは、気恥しいというか、罪悪感に見舞われたようで耐え切れなかった。

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