第22話 捕えられたNPC
更新がすごく遅れました。
申し訳ございません!
「す、すみません! 」
「おいこら、人様にぶつかっておいてごめんだけで済まされるかよ」
「けっけっけ、兄貴はNPCにも手厳しいんすね」
「それでこそ兄貴ってもんよ。グレナの街を拠点として活動するクラン――――『夜風』のリーダーらしい風格だなー」
「そうかぁ? 照れるじゃねえか」
鉄の鎧を装備したずんぐりむっくりなリーダー格の男、痩せ細った身体に盗賊の服を纏った男、それから魔法使いの格好をした男の三人が、今私を責めている。
出来立てのパンが積まれた籠とリーダー格の男の肩がぶつかっただけなのに。ちゃんと、謝りもしたのに。
どうしたら良いか分からず、私はもう一度頭を下げる。
「だーかーらー、謝れば済むような問題じゃねぇっての」
「え? い、痛いっ」
その男に、いきなり髪をぐいっと引っ張られた。
抵抗しようとするも、あとの二人に両腕を掴まれてしまい、身動きがとれない。
「綺麗な茶髪に抜群の身軀……兄貴、こいつは中々の上玉っすね。奴隷商人に売れば、2万ロストは下らないっすよ! 」
「そうだな、売る方が賢いか。武器の調達とかもしてぇから……その話、乗るぞ」
「流石は兄貴、お得意の即断即決ですね」
「おうよ」
「い、嫌っ」
不穏な会話が聞こえ、私はより一層抗おうとする。
でも、体を強く抑えられていて、スキさえもない。
「誰か、助けて……っ」
悲鳴をあげようにも、痛みが先行してなかなかあげられない。
私は涙を浮かべ、最悪の展開を思い浮かべるしかなかった。
ドォォォォォォォーン!
べキッ、バキッ!バキッ!
程近い場所から、大きな爆発音と木がへし折られるかのような音がし、男達そして私は音のした方へと視線を傾ける。
「な、なんだ!? 」
リーダー格の男が先に反応し、続いて残り二人も似た反応を示す。
私は、痛みと驚愕のあまり、声すら出なかった。
そんな私の頭に瞬時に浮かんだのは、『魔物』だった。
昔からお父さんやお母さんには「出歩く際は魔物に気を付けて」と散々言われてきた。そのお母さんはもうとっくに亡くなっているけれど。今でもお父さんに一言一句違わず厳しく言われ、夢の中ではお母さんが、私を抱きしめながら甘い言葉とともに忠告してくれている。ほんと、不思議な夢。
魔物魔物って言うけど、私だってスライムっていう魔物を倒したことくらいはある。
ぷにぷにした、あの黄緑色の……出会ってそうそう服が溶かされそうだったから、転がってた小石をいくつもぶつけたらいつの間にか死んでて、黒くて丸い石みたいなのが落ちてた。
あの時は呪いの石とかなんとか怖がってたけど、今では私の宝物。というより、おまじないの物としていつもポケットに忍ばせている。
それはそれとして、今の音は明らかに『スライム』というレベルじゃない。小さい頃に絵本で見たドラゴンみたいな、そういうレベルのもの。
私は身動きを封じられたままがっくりと項垂れる。
とにかく、一生を諦めるつもりでいた。
【諦めるのもまだ早いですよ】
「……ぇ? 」
聞き覚えのない透き通った声が、どこからともなく聞こえてくる。
その声につられる様に、先程音のした方へと首を向ける。
木々の奥深くより、何者かが近付いてきていた。
「たす、け、て……」
痛みの余り溢れ出ていた涙をぐっとこらえ、精一杯に救けをこいた。たとえその者が魔物だとしても、この不浄な男達から解放されるのであれば、道連れだって厭わない。
だとしても、ちっぽけな希望くらいは捨てないでも良いですよね、神様。
ううん、違う。
本当はちっぽけじゃないのです。
またお父さんや夢の中のお母さん、それから村のみんなに会いたいのです。笑顔の絶えない暮らしに戻りたいのです。そんなの、欲張りですよね。でも、でも……まだ、笑顔で生きていたいのです。
神様。どうか、私をお救いください――――。
そして、欲張りな私をどうかお許し下さい――――。




