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トラップマスターのゲーム記録〜バグ処理のために転生します〜  作者: 鳶崎斗磨
第一章 旅立つ最強のプレイヤー
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第21話 不思議なS級アイテム

【ヒビキ様……もったいないことをなさるのですね】


「何がだ? 」


【バジリスクの肉自体はSランクもので、死体に付着している毒も、バジリスクの死によりその数分後に無毒化されますので、安心して食すことができるのですよ。十中八九、ラビット王への牽制のためでしょうが、他に手はあったかと】


「え、ええー……」


 一旦兵たちとのやり取りを白紙にしたいが、兵たちの目の輝き、そして二言を言うことへの恥ずかしさから、俺は断念した。


 バジリスクめ、復活したら即討伐してくれる!

 今度こそ俺の糧に!


 〖そこの女、それは真か? あの愚物は美味なのか? 〗


【紛うことなき逸品です】


 〖ぬ……おのれ、人間め〗


 何か脳内でさり気なく不穏な会話がなされているんだが。


「じゃ、じゃあ行くか。よろしくな、お前ら」


「「キュ、キュ! 」」


 俺は話をはぐらかそうとラビット兵たちに別れを告げ、その地より東に体を向けて足を進めた。


【なんだかなぁ】


 〖全くだ〗


 〖キュ……〗


 道中、とてもギスギスしていた。






 ▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫






「まだ着かねぇのか」


 マップを見ながらグレナの街に向かうが、自分の位置を示す青い点が一向に動かない。


「バグか」


【違います。ヒビキ様の足が遅いだけです】


 徒歩だから仕方がないよな。


 そもそもゲームとして遊んでいた時は、目標地点をクリックするだけでワープしていたんだが。


 マップに表示された『グレナの街』をタッチしても、赤いピンが置かれるだけ。なんの真似だ、これは。


 アバターの苦労を思い知れ、ということか?


「こうなったら、何かいいもの作ってやる」


 ヤケクソでもいい。とりあえず早くたどり着けさえすればいいのだ。

 さて、何を作ろうか。


「『錬金術』」


 始めに、『ただの小石(G級)』と『レッドピクシーの羽(C級)』を掛け合わせて、今さっきも使って効果が切れた『浮遊石(B級)』を新たに錬金する。


 ポケットに入れて、『使用する』のボタンを押す。

 ふわりと身体が宙に浮き、俺は慣れたように目標地点へと急ぐ。


 少々の間だったが、その効果はすぐに分かった。


 マップの青点は、全く動かない。


「他、いくか」


 別に手段は山ほどある。俺は立派なアイデアマンだから。



 次は『火薬(F級)』と『スライムの核(G級)』、あと通称「鎧の悪魔」として恐れられている『ハイ=リザードマン』の死体を剥ぎ取って獲得できる『ハイ=リザードマンの表皮(A級)』の三つを掛け合わせる。



 いっぺんに三つを掛け合わせるのは……初めての試みだ。



 できあがったのは、『高性能移動専用大砲(S級)』。


 見た目は、間違いなく大砲。

 それに、なんともまあ聞こえの悪いアイテムだな。


 作った本人が知らないというのも気恥しい限りだが、その詳細を確認してみる。何となく想像はつくが。



 ______________________________

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『高性能移動専用大砲(S級)』《「効果」:使用後、対象物を特定の地点へと飛ばす。使用する際、大砲内の対象物はスライム性の衝撃吸収膜に包まれ、使用後、安全に着地させられる……はず。使用可能回数1「発動条件」:大砲内に対象物を投入し、行き先を指定》



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 はじめからこれを作っていれば良かったな。こんな、いかにもな感じの名前がついた、見た目もまさに異ならぬもの―――大砲を。


 でも「安全に着地させられる……はず」って、曖昧じゃねぇか。


 これを使えば一発なんだろうけれども、相応の代償がな……。


 覚悟を決められず悩んでいると、デュラハンが堰を切ってきた。


 〖やれ、人間よ。貴様は臆病者なのだな、よく分かった〗


「ちょっと黙っとけ」


 俺はキレ気味に返答する。


 やってやろうじゃないか。信じてみようじゃないか、その効果を!


 手始めに黙って大砲の中に入ると、視界いっぱいに黄色の膜が張られる。これがスライム性の衝撃吸収膜か。


 次いで目標地点を『グレナの街』に設定し、ふうと一息つく。



 すると。



 俺は静かに、空に飛ばされた。


 驚いたことに、空気抵抗もない。

 俺はただ仰向けに寝転がっているだけ。


 その時の俺は、馬鹿みたいに不安を一掃していた。

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