第17話 蘇生そして説得
その綺麗なベールに見惚れていると、『範囲内の対象を全て蘇生しました』というログがチャット枠に送られてきた。
何もかもが生き返って当前だ。
「錬金術」スキルで、蘇生の可能性をわざわざ100%にしたんだから。
「キ……キュ? 」
ベールが消えると、地に転がっていたラビット族の魔物たちが、不思議そうにムクリムクリと起き上がっていく。
そこに立ちはだかるのは、俺。
急遽として皆の目付きが鋭くなる。
【魔物を蘇生させるお馬鹿な人はヒビキ様くらいですかね】
馬鹿とは何事か。慈悲を与えてやっただけじゃないか。
とはいうものの、これでは二の舞を踏みかねない。
どうしようかと悩んでいる所へ、後方よりピョンピョンと、白兎が跳ねてやってきた。
と同時に、白兎に付き従っていた者達の様子が警戒から驚きに変わる。
「キュキュキュキュ、キュ。キュ、キュキュ。キュキュキュ! 」
【「この方は皆の死を哀れみ、蘇生を施して下さるような崇高なるお方。今宵、私の主様となられたお方でもある。今後一切、主様に危害を加えることは許しません。この、ラビット王子の名において! 」】
さりげなく翻訳してくれるんだよなー。
助かるが、これは気恥しい話だな。
「キュ。キュキュ。キュキュキュキュ」
【「二度言おう。この方は私の主様である。故に私は今後従魔としてこの方と共に旅をすることとなった」。羨ましいですねぇ、主様】
はいはい、無視無視っと。
ここらで精神年齢の格差を見せつけておくのも悪くない。
「なあ白兎」
「キュ? 」
「これから俺が言うことをそいつらに伝えてやってくれねぇか」
この場では白兎だけが人間語と魔物の言葉を理解それから通訳するのに適していると、俺は判断した。
……後ろにいるデュラハンは論外として数えている。
白兎はコクリと頷いてくれたため、俺は言いたいことをサラサラと口に出していった。
「皆、よく聞け。この王子の言う通り、これから俺たちは共に旅をするつもりだ、異論は認めん。が、しかし。王子の命は俺が保証する」
言うべきことは言った。白兎はちょっとばかり照れくさそうに通訳した。
けれど、そうは言われても等というラビットたちの困り果てた顔が次々と目に浮かんでくる。
恐らくそいつらはラビット王直々の命令で王子を先頭に駆り出された兵たちだ。
だからこそ、王子がある人間の従魔になったことを「はいそうですか」と認めて王に報告することは極力避けたいのだろう。
王が余程の寛容さを持ち合わせていない限り、兵たちは理不尽な責任を押し付けられ、終いには極刑に処せられてしまう。
ならば、もう一枚話に噛んでみようか。
今度は、悪い役を演じて。