1話 こんなはずじゃなかった
断崖絶壁の幸子が織りなす、現代OL物語。
もちろんフィクションです。
※作中の企業名、人物は空想上のものです。
※業務内容等の指摘は受付致しかねます。
ジリジリジリリリリリリ
「私、高田先輩のこと…」
ジリジリジリリリリリリ
「え?ちょっと待って。まさかとは思うけど告ろうと思ってたりする?」
「へ?」
「いやさ、俺そんなつもりないし。
幸子のことは良いやつだとは思ってるよ?
でもさ、やっぱりさ。ね?」
「え?」
「お前って話しやすいし、気を使わないし
“男友達”として最高だよ。でもさ、俺だってやっぱり
女の子と付き合いたいわけ」
ジリジリジリリリリリリ
「お前って、本当断崖絶壁じゃん?
女としてそれは有り得ねぇよ。やっぱり。
男ってもんは夢を見るわけだ。ふよんふよんにさ。
いや、でもあれだよ?お前がいいってやつも多分いるから!
多分!な?落ち込むな?
俺にはさ、これから夢のキャンパスライフが待ってるんだよ。
てことで、もういい??
いいよな?
元気でやれよー!じゃあな!」
ジリジリジリリリリリリ
…
…
…
…
…
…
…
…
ジリジリジリリリリリリ
…
…
…
ガチャ
はぁ。
またあの夢…。
いつまで私は引きずるの?
あ、申し遅れました。
わたくし、田口幸子と申します。
「幸せな子」と書いて、「さちこ」。
29歳独身。
全然まだ幸せになる気配は、さらさらありません。
もちろん、彼氏なし。
そこそこ名のある会社で、事務をやる所謂OLってやつです。
仕事は順調。
そろそろお局になってきたかなっていう感じかな。
因みに年齢=彼氏なしではないけど、恋愛経験なんてあったと胸を張れるものでもない。
張るものものすらないけど…
…
…
身体は172㎝で痩せ型モデル体型。
所謂がりがりのひょろひょろ。
痩せてて本当羨ましー!なんてよく言われるけど、
こちとら何も嬉しくない。
えーそんなことないよー!って毎回応えるのが面倒。
女の子の言うモデル体型だね程、褒め言葉にならないものはない。
そして、なんと言っても「断崖絶壁の胸」が1番のコンプレックス。
どうして?
なんで?
もっと頑張れよ成長期!って何度も思ったよね。
10代成長期っていうのに、何で縦にだけ成長した?
すらってしてていいよねって言われても、何もしてないし。
ただ食べて、寝てただけだし。
成長痛とはお友達の夏休み。
学校ではいつも1番後ろ。
1番前の腕を腰にあてるやつ。
いいよねー。やってみたかった。うん。
私から見たら、はるか彼方の光景。
憧れたわー。
そして、成長痛とともに期待した胸の成長。
お!って思った時もあったのに、何も変わらず。
ぺったーん。
何故?
何故なんだーーー!