第05話 シュトリ領
「今、なんて?」
「だーかーらー、俺らで中立地域攻めて 俺らが支配すんだよ」
「やめておけガリウス、貴様じゃ勝てない」
「んだとオラァ!?」
「黙れガリウス。 ウロボロスもそれくらいにしろ」
エレメンタルがガリウスとウロボロスを止める。
するとシュトリが口を開いた。
「私は反対かな? 中立地域には強い奴結構いるし、自由組合の連中からの報復も面倒だし」
「私もその件は降りさせていただこう。リスクとリターンが割に合わん」
「俺はどっちでも良いけどシュトリが行かないのであれば勝ちは見込めねぇ。
なら損害しかないことは明白だ」
「じゃ、俺もパスだ」
ガリウスは手に持っていた水晶を見てニヤリと不敵な笑みを浮かべるとそれをしまい、席を立ちあがる。
「ハッハッハ レイヴァールがシュトリの領内に向かって飛んでるぜ? 止めなくて良いのかよ ハッハッハッハー」
天を見上げながらガリウスは笑う。
「お、お前! 計ったな?」
「おいおい、シュトリさんよ〜、言いがかりはやめてくれ。強制的に転移させたのは俺だが、まさかレイヴァールがお前の領内に向かって飛んでくなんて思ってもいなかったなぁ」
「ガリウス・・・」
「ハッハッハー おっと? この場で俺を殺したらどうなるか分かるよなぁ? 抵抗をしてない、その上何をしたわけでもない者を殺すんだ、それなりの報復があっても知らねぇからな」
「クソがぁ!!」
シュトリの怒号が飛び、建物の壁が破壊され、大きな風穴が開く。
そして、そこからシュトリが飛び立った。
「ガリウス、お前、嵌めただろ?」
「何のことやら?
俺はレイヴァールがシュトリの領内に行ったことを教えてやっただけだぜ?」
「多数の目撃者の場では流石のシュトリも手が出せない。 それを逆手にとってレイヴァールが領内に入るまで足止めをする、回りくどいな」
「ケッ 利用されたのは癪に触るがやり方自体は悪くねぇ。 おいエレメンタル、帰るぞ」
「かしこまりました」
「じゃあなガリウス。 シュトリに殺されて次の会合で会わないことを祈るよ」
「うるせぇ。黙れ。お前が殺されろ」
2人は不敵に笑いながら睨み合う。
それをエレメンタルが止めに入るように転移を起動し、何処かへ転移する。
「私も帰るとしよう。 ガリウス、次に私を利用する真似をしたら……どうなるか分かるよね?」
「さぁな? お前に俺をどうにか出来るとは思えんがな」
そしてペンタグラムもその場から去っていった。
「さてと、あわよくばシュトリのクズとレイヴァールのトカゲ野郎が相打ち、少なくともどちらかが死ぬ。 完璧すぎる」
そして薄暗い部屋の中、ワイングラスを片手にガリウスは1人、高笑いをするのだった。
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『やっぱり、空を飛ぶと楽だな』
俺は今、魔王シュトリの支配地域の上空を飛行中。
剣聖アイリーンと一戦交えた後、魔力濃度の高い場所を1ヶ月以上歩き回り、魔力を回復させ、1日ほど前からずっと飛行しているのだ。
その間、冒険者3組が討伐、述べ10人以上が生贄を差し出して来たので少し鬱。
『なあ、俺ってそんなに凶悪そうな顔してる?』
《主は邪竜です。 少し凶悪そうな顔くらいがちょうど良いと思いますよ》
《少しってレベルを越して普通に怖いって》
『やっぱり早めに人間の体になった方が良いな』
《別にそのままの方が良いと思いますが、主が望まれるのなら》
《人間の体って言っても大きさが今と同じだったら面白いのにね〜》
『普通にホラーだよ。それ』
《もうそろそろ降下の準備を。 目的のダンジョンへもうすぐ着きます》
探究心さんに言われた通りに減速し、滑空するようにして高度を落としていく。
『思ったけどさ、 俺ってダンジョンに入れるのか?』
《最小化すればいけると思われます》
《というか、無理だったらどうしようもないけどね》
『んお?』
地上へと近づくと、降りようとしている場所周辺に人が集まっていることに気がつく。
『あれって、敵?』
《敵対行動は見られませんが、武装しているのを確認。警戒を忘れないでください》
《うーん、全員レベル6前後だから問題は無いよ?》
『なら良いんだけどなぁ』
この強制イベントっぽい展開は大体の確率でヤバいんだよなぁ。
剣聖アイリーンの件もあるし、警戒しておこう。
地面へと降り立つ。
邪竜とは言え、中身はアラフォーおっさん。
武器を持ったムキムキの男どもに囲まれるのは、ちと怖い。
「こちらに戦闘の意志はない! そちらにあるというならばこちらも対応を考えよう」
『安心しろ、こっちも戦闘の意志はない』
「なら何用だ? 邪竜レイヴァール」
『その前にさ、武器を降ろしてくれんかね?
じゃないと安心できん』
「それは悪かった。 皆の者、武器を降ろせ!」
リーダー格の男が周りの人にそう叫ぶと周りの武器を持った屈強な男たちが武器を降ろした。
「俺らはシュトリ様の命令でここに来た。
しばらくお前をここで足止めさせてもらう」
『まあ、戦闘にならなくて良いなら俺は構わないけど・・・』
「それで、何故この領内へ来たのかを教えてもらっても良いか?」
『変身能力のある魔物がこの魔王シュトリの支配地域にあるダンジョンに生息しているらしいから来たのだ。 別に攻めに来た訳ではない』
「それは本当なのか?」
『ああ、もちろんだ』
「そうか、その言葉を信じるぞ?」
そう呟くと、目の前の男が光り始める。
そしてその光はドンドン大きくなっていき、やがて辺りが全く見えなくなる。
ズドンッ!!
その音が外部から自分の腹への刺激による音と認識すると、腹が焼け付くような痛みに包まれ、意識が遠のく。
その間に探究心さんや賢者 ベガの声が聞こえたのだが、それが俺への心配の声ではなく、いつもの痴話喧嘩だったのが今日のハイライト。
そして俺は抗うことなく、意識を手放した。
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