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こころの思い出

作者: ケット・C
掲載日:2017/04/26

大切な思い出は、いつまでも残るものです。

ご閲覧ありがとうございます。



19XX年、夏。



当時小学生だった私は、私の祖母の家に遊びに行っていた。



そこは、普段生活している都会の様子とは全く違うものだった。



照りつける太陽、穏やかな風。風に乗って、自然の香りが鼻を通り抜け、身体中を駆け巡る。ふと足下をみれば、青い草の絨毯が、遠くの丘まで続いている。



まさに、私の知る鉄の世界とは似ても似つかない風景であった。







「ほっほ。よく来たけぇ、ゆっくりしてがんしょ。」




祖母は、都会から来た私を、とても歓迎してくれた。私は、滅多にここへは来なかったので、祖母のこともはっきりとは覚えていなかった。


逆に、私のことを覚えて来れていた祖母に対して、なんだか申し訳なくなり、とりあえず頭を下げた。



祖母はこの仕草を好意的に受け取って来れた。




「まぁまぁ、ご挨拶が上手ねぇ。ろーちゃんとは大違いねぇ。」



「ちょっと母さん、それどういう意味?」





母の名前はちひろ。祖母からはろーちゃんと呼ばれていた。祖母は母をからかうことが大好きだったようで、1人で祖母の家へ帰ったときも、相当からかわれていたようだった。



「そのままの意味に決まっとるけぇ。ちよちゃんはこんなにめんこいのにねぇ、育て方を間違えたかねぇ。」



そういって祖母は笑う。





今思うと、私は、祖母に相当愛されていたのだなぁ、と感じる。普段会わない私に、分け隔てなく接してくれた。



ちなみに、私の名前である「ちよ」も、祖母がつけてくれたものだ。それもひとつの理由かもしれない。



「もう、いい加減にしてよ、母さん!わざわざちよの前で...。」



母は顔を赤くして、反論する。その様子を見て、私は笑っていた。




















数日後。



「ちよちゃん、スイカ食べるけぇ?」



家の縁側で、祖母がスイカを切ってくれた。私はこくんと頷き、ひと切れのスイカを頬張る。



「おいしいかい?」



そう言う祖母に、私は笑顔で答える。祖母は、その表情に満足してくれたようだ。




——ちりん。




風に吹かれ、鉄製の風鈴が鳴る。ガラスのものよりも、優しい音色。




——ちりん。




のどかな自然の中で、私のひと夏は過ぎていった。




















「ちよちゃん、お野菜採りするけぇ?」



「ちよちゃん、虫採りせんか?」



「ちよちゃん、———。」








「ちよちゃん。楽しいけぇ?」






祖母は私に、ことあるごとに話しかけてくれた。


祖母のおかげで、都会では体験できないたくさんのことを経験できた。











そして、別れの日。



「お世話になりました。また来年、よろしくお願いしますね、母さん。」



母のその声に合わせて、お辞儀をする。


私もありがとう、そう言いたかったが、伝えられなかった。


それでも祖母は笑って、



「また来てくなんしょ。楽しみにしとるけぇ。」



そう言ってくれた。



私も、つられて笑った。






別れを惜しみながら、私は都会へと帰っていった。




















半年後。




この地を襲った台風。



その後のダム建設計画。



そして大規模地震。






祖母に会えることは、もう無かった。

別離は突然に。

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