なんかバレてる
陽菜は結局、総師範に言われた通りパパ達に活を毎日入れるだけで、ハルと連絡を取る事はなかった。陽菜が言うには、
「なんでもかんでもお兄ちゃんに頼るのは違うと思う」
だそうだ。残念。声くらい聞きたかったのだが‥‥まぁ、聞いたら聞いたらで今直ぐ会いたくなって自分を抑える事が出来なくなると思うけど。
陽菜は帰る前日まで、パパ達をボコボコにして、師範の練習メニューを繰り返すだけだった。勿論、休日は私と色々な所に行った。学校に連れて行って欲しいと言われたのは焦ったけど。
そんな風に陽菜と過ごしている内に、ハルの妹としてでは無く、只の滅茶苦茶強い陽菜として見る事ができ。本当の意味での友達に。そして、唯一無二の親友と呼べるまでに仲良くなっていた。
そして、陽菜は日本に帰って行った。その二週間後、陽菜から手紙が届いた。
久しぶりお姉様(笑)いかがお過ごしですか?オホホホ
って、ふざけすぎるとまた怒られるから用件を伝えます!!
来年、私がそっちに行った頃から帰った頃まで、日本で過ごす気は無い?泊まるのは家で、そっちより遥かに狭いけど‥‥か、片付ければ泊まれるから!!ほら、なんか最初の頃お兄ちゃん見て泣いてたでしょ?そこで、今更だけどファンだったのかなーって思って、お父さんとお母さんも是非にって言ってくれてるの。お兄ちゃんは‥‥今稽古終わって死にそうだから聞けないんだけど、とりあえず、おじさんとおばさんと話してみて?
返事、待ってるねー
陽菜
全く、私の親友は最高だ。勿論‥‥
「駄目よ?」
「‥‥‥‥‥は?」
今、母上様は何て言った?駄目?なにそれ、今日の夕飯?それとも朝ご飯?連続同じのはきついんだけど。
「だから、駄目よ」
「なっ、なんで!?」
「なんでって‥‥アナタ、忘れてるの?来年は受験よ?アナタも、勿論陽菜ちゃんも」
わ、忘れてたー!!って、なんで陽菜の家はOK出たのかしら?陽菜ってあんまり頭良くないと思うんだけど?
「そりゃ、陽菜ちゃんは『紫電流』で特別推薦が有るからな。お兄さんもそれで今の高校入ったって聞いてるぞ」
この脳筋共がっ!!
全く、とんだ誤算ね。どうしようかしら。前世で学んだ事を使って資格でもとって少しでも‥‥駄目よ、私が習ったのは王宮の物。そんな物どこで覚えたんだってなったら不味い。
「ど、どうしたら許してくれる?」
「別に来年じゃなくても良いでしょ?再来年とか「それじゃ駄目なの!!!」」
それじゃ、駄目。ハルが向こうに行くのは来年。再来年なんて待ってられない。私が死んで悲しんでるだろうから、私が、慰めて‥‥ん?
待って、いつハルが帰って来るってわかるの?
いつ向こうに行くのかはわかった。でも、その次は?いつ帰ってくるの?まさか二年帰って来ないとか?いや、私が死んでからの事はわからない。もしかして、向こうに骨を埋めるとか言い出すんじゃ‥‥
「あ、アーニャ?」
「あっ、ごめんなさい。何でも無いの。ちょっと考え事有るから部屋に戻るわね」
「え、えぇ‥‥」
部屋に鍵をかけて、そのままズルズルと崩れ落ちる。今にも泣き出しそうだ。
そうよね。ハルが帰って来るとは限らない。なんで今まで気づかなかった‥‥あれ?なんか忘れてるような?‥‥あっ、
「時間は数時間しか経たない‥‥っ!!確か、そんな事言ってたわ!!なら、ハルが向こうに残る選択をしなければ‥‥」
ハルと会える!!
会った頃は帰りたい帰りたい五月蝿かったからね!絶対帰ってくるわ!!
「ママー、お腹減ったわ。今日のご飯何かしら?」
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なにも解決していない。なにやってるのよ私は!?ハルがちゃんと帰って来るっていう希望が見えただけで、私は依然として行けないままじゃないのよ!!!
なんか二人の様子が可笑しいと思ったのよね。だって行くか行かないか決まってないのに妙にスッキリした顔でご飯食べ始めたらそりゃ戸惑うわよ!なにやっての私は!!
お風呂に入って、部屋で宿題して、さぁ寝よう!!という時に我に返り、急いでママの元に行く。そして、その夜は遅くまで色々と話し合っていた。
その話し合いでママは、一つの条件を出し、それをクリアする事が出来れば行って良いと言ってくれた。けど、その条件が‥‥‥
「アナタが、私の娘になる前の事を、話して欲しいの」
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いやいやいや、待て待て待て?え、なんでバレた?私、ちゃん娘やってたわよね?なんで?なにやった私!?
「落ち着いて?アーニャは私の娘。それは変わらない。けどね、解るのよ?だって私、アナタの母親ですもの」
「ママ‥‥‥わかった、全部話すわ」
「パパ、呼んでくるわね」
「ん?なんだなんだ?二人してどうした‥‥まっ、まさかっ!?この前新しい木刀を内緒で買ったのバレたのか!?」
「パパ、その話は後で聞くわね?それよりも、例の話よ」
「えっ?違うの?‥‥あぁ、わかったよ。アーニャ、ゆっくりで良いから話してくれ」
パパも気付いてたんだ‥‥。
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「‥‥‥なる程、異世界の王女様かぁ。こりゃ想像以上だな。ママ」
「そうねぇ。流石に驚いたわぁ」
「パパ、ママ、別に隠すつもりは無かったの。ハルが来年の夏、向こうに行く事は分かってたから、全部ちゃんと終わったら話すつもりだったわ。これだけは信じて‥‥」
「大丈夫、ちゃんと信じてるわ。けど、お姫様かぁ‥‥凄いわねぇアナタ」
‥‥なんか思ってた反応と違うなぁ?もっとこう、頭の可笑しい子って見られると思ったんだけど?
「フフッ。パソコン使うなら、ちゃんと履歴は消さないと駄目よ?毎日内緒で陽菜ちゃんのお兄さんの事調べてたけど、バレバレだからね?」
おぉう‥‥まさかのパソコンかぁ。そう言えば履歴消してなかったなぁ。別に見る様な事も無いと思ってたから。
「まぁ、アナタは他の子よりもお利口過ぎたのよ。私達は助かったけど、やっぱり不自然に思えたわ。どこか此処ではなく、遠いところを見つめてるように感じた」
「小さい頃、俺と風呂に入るのとか、おしめ変えるのとか凄い嫌がったからなぁ‥‥あの頃の記憶もあるのか?」
「うん。パパがほっぺスリスリしようとするの、全力で嫌がった記憶あるもん」
「そんな事も有ったなぁ‥‥あれ、ショックでかかったぞ?」
遠い目をして明後日の方向を見るパパ。此処ではない遠いところを見てるのはパパの方じゃ?
「だって、髭がじょりじょりして気持ち悪いんだもん」
「き、気持ち悪い‥‥」
あれ、言い過ぎた?なんかスッゴい落ち込んでる。
「アーニャちゃん、パパに『気持ち悪い』は禁句よ。多分、アナタの思ってる以上に傷つくから。大事な娘に言われたら尚更、ね」
「う、うん‥‥ごめんね、パパ」
「いや、良いんだ。確かに、年頃の女の子の頬にスリスリしようとしたパパが悪いんだ‥‥」
思ってる以上に傷ついてる!?
「あ、あの頃はまだ私の前世知らないんだからしょうがないわよ!!前世で妹居たんだけど、小さい頃見たお父様とお母様の反応は、パパとママにそっくりだったから、これが普通なの!だから落ち込まないで。ね?」
「あら、妹が居たの?」
あからさまに落ち込んでるパパを無視して、妹が居た事に興味を示してくるママ。もうちょっとパパの事心配して上げて?いや、この状態にしたの私だけど。
「うん。妹が一人と、弟が一人ね。二人共いい子よ」
「あら~、これなら頑張ってもう一人作れば良かったわねぇ。アーニャにお世話任せられたわ」
「ちょ、なに言ってるのママ!?」
いきなり生々しい話になったんですけど!?実の母親が、頑張ってもう一人なんて言ってるの聞きたくない。なんか気まずい‥‥わ、話題を変えよう!!
「と、所でなんで私が前世の記憶があるって分かったの?」
「あら、それは分からなかったわよ?」
「へ?」
今なんと言ったこの母親は?私が前世の記憶持ちって分からなかったの?じゃあなんでそんな発想に?
「アナタがその『魔法』を使う所を偶然見たからよ」
「えっ、あれ見られてたの!?ほんの数十秒しか使ってないのに」
それに、二人が眠ってる時を狙って使ったのだ。どうやって‥‥
「お手洗いに起きたら、アナタの部屋の隙間から光が漏れててね。部屋の光にしては強すぎるから、気になって覗いたら手の平の上で丸い光の球が浮いてるじゃない。あれは驚いたわぁ」
うぅ、二人が出掛けてる時にやれば良かった‥‥今更遅いけど。
「で、でもそれだけじゃ分からないでしょ?只の超能力かも知れないじゃない!!」
「さっきも言ったでしょ?パソコンの履歴とか、子供らしからぬ行動とか。アナタ、小さい子向けの番組じゃ無くてニュースの方に興味示してるし、絵本よりも難しい本を読んでるし。全く子供らしさの欠片も無かったわね」
うっ‥‥しょうがないじゃない。少しでも多くこの世界の情報を得るには、子供向けの番組なんて見る暇無かったのよ。興味無かったし。
「だから思ったの。アナタは、身体は子供でも頭の中はもう大人なんじゃ無いかって。天才なのかしら?とも考えたんだけど、あの光の球を見てから分からなくなってね。パパがある時、前世の記憶を持って生まれる子がいるって話しをしてね、もしかしたら‥‥って思ったの。本当にそうだとは思わなかったけど。だから、半信半疑だったのよ。違ってたら只の頭の可笑しい親でしょ?だから言い出せ無かったのよ」
まぁ、確かにいきなりそんな事言い出したら只の頭の可笑しい人よね。そりゃ言い出せ無いか。
「‥‥まぁ、この話は此処まで。アナタが私達の娘で有ることには変わらないんだから、もう終わりね。アーニャ、来年の夏、日本に行きたいのなら今までの成績を維持して、1ヶ月向こうでイチャイチャしても問題無いぐらいの成績をみせて頂戴。そしたら、日本に渡っても良いわ」
「本当っ!?ママ!!」
「えぇ、ちゃんと勉強頑張ればね」
やった、ハルに会いに行ける!!
「大丈夫よ、今までは学校のレベルに合わせた点数取ってたけど、本当は大学レベルまで勉強は終わってるから!!」
「「えっ」」
フフッ、小さい頃は暇で暇でしょうがなかったからね。隙を見て勉強してたのよ。コッチは教え方が良いし、子供の頭だからスポンジみたいにどんどん吸収出来るから、本当に楽だったわ。言葉は『異世界言語』が有るから勉強なんて必要無かったし。
「私は元王女よ?一般教養なんて普通、直ぐに終わらせて帝王学とか勉強するのよ。まぁ、私は『聖女』って呼ばれてたから『治癒院』、病院みたいな所に籠もりっきりだったけど」
「す、凄いわね王族‥‥ところで、今の話が本当なら今まで手を抜いてたって事かしら?」
あれ?なんか失敗したかも‥‥ママが物凄く怖いわ。
「いや、違うのよ?ほら、あんまり目立つような事をするのは不味いかなって思って‥‥ママ、その笑顔怖いわ!!パパッ助け‥‥‥どこに行ったの!?」
「アーニャ?ちょっとお話しましょうね?」
「イ、イヤッ‥‥‥アッーーー!?」