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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
ゲンエイガハラ村編ーⅠ
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監視という名目

大広間に現れたグールフに、その場にいた全員が、口を開けて唖然とする。

その今の状況は、想定内と想定外のことが2つ同時に起きたことを表していた。


「・・・・・・(ゴクッ)」


想定内のことといえば、一日もたてばグールフが歩き回れるぐらいまでに回復するということだった。

メイヒールは、あれだけの激しい戦闘の後でもグールフならそれぐらいの回復力を見せるだろうと推測していたので、わざわざ部屋から大広間に連れてくるという手順を作戦に含んでいたといえた。


「あ・・・」


メイヒールは、何か言おうとするが言葉に詰まる。


想定外のことといえば、グールフ自ら部屋から出てくるということだった。それも2日目の早朝というタイミングで。

自分から部屋を出て、大広間に来るということはマリたち人間に自ら近づくということで、昨日の様子からすればとても、そのような行動にでるとは思えなかった。

なんせ、心を開く機会などまったくなかったのだ。


「グ、グールフ・・・!」


メイヒールは、その時、かろうじて名前を呼ぶことしかできなかった。


そして、今グールフが自分からマリたちに近づくということは、ある一つの結論しか考えられなかった。

そう、殺す時だった。


「ダ、ダメです!!グールフ!」


メイヒールは、マリとヤンの前に素早いステップで通せんぼで立ち、そう叫んだ。

汗が流れ、取り乱した様子を見せる。


グールフと対峙した形となったメイヒールの頭の中に様々な思考が行われる。


(・・・・・・私の推測が甘かったッ・・・!歩き回れる以上の・・・一日でそれ以上の回復。仮にマリたちを相手にできるほど回復したとするなら・・・!)


そのメイヒールの切迫した状況に、マリとヤン、ファイも察知し、戦闘体勢に入る。

キャアシーは、これから起こるであろうことにただ怯えていた。


全員がグールフを止めるために、構えた瞬間だった。

そして、その時だった!


「おい、お前ら。そんなに早く死にたいのか。・・・どうせなら今すぐ、ここで殺ってもいいが・・・。」


グールフは、マリとヤンの方を見て、そう言い放った。

すると、次はメイヒールの方を見る。


「・・・メイヒール。とりあえずメシをしてくれ、腹が減った。」


「・・・えっ!」


メイヒールは、グールフの意外な言葉にハッと驚くしかなかった。


「おい、聞いていたか。メシだ。」


「・・・え、あっ、はい!でっ、でも・・・」


すると、グールフは尻尾を動かして椅子に座る。


「勘違いするな。そこの小娘と坊主頭、それに・・・あの火遊び小僧は、今どこにいるのか知らないが、いずれ殺す。だからそれまでは我がここで監視させてもらう。ここはゲンエイガハラ村だ。人間の好き勝手にさせるわけにはいかない。この集会所を出ることも我が許さん。・・・それだけだ。」


それだけを言うと、グールフはマリとヤンに睨みを効かせて黙り込む。

数秒間、沈黙が流れた。

あまりにも、気まずい空気だった。

その間もグールフは、ずっとマリとヤンを睨みつけるように見ていた。


「じゃ、じゃあ料理をつ、作ってきますね。グ、グールフ。それまでしばらくま、待って下さいね!」


メイヒールが、沈黙を打ち消すかのように噛み噛みでもその場に響かせるように言う。


「そ、そうです!せっかくだし、手伝ってくれますか?」


メイヒールは、マリ、ヤン、キャアシーとファイに目で合図を送りながら言った。

その意図としては、厨房に1回離脱しようということだった。


「え、えぇ!わかった。ほ~ら!」とマリは強引にヤンの胸ぐらを引っ張って厨房へ向かう。


そして、ファイとキャアシーも「お、おう。」「ニ、ニャ!」と困惑した返事をして向かう。



一行が、グールフの座っている位置から遠ざかると歩きながらコソコソ声で話し出す。


「ちょ、ちょっとあれどういうつもりなの!?」とマリは言う。


「せ、拙者に聞かれてもだな・・・。真意が掴めまい。」


「でも、いつものグールフぽっかたニャ!」


「確かに・・・人間を目の前にしていながらグールフの平常心が俺にも感じられた。」とファイが、キャアシーに同意して言う。


4人が、そんなことを話している間、メイヒールは何かを考えていた。


「メイヒールは、どう思う?」


マリが聞く。


「もしかすると・・・」


メイヒールは、昨日の夜のことがフラッシュバックする。

昨日メイヒールが夜、グールフの部屋を尋ねた意図としては、もう一度説得のアタックをかけるというのもあったが、今日の作戦である部屋から大広間へとグールフを連れてくるという手順に準備段階を踏むという目的だった。

でも、それ以上にメイヒール自身の切実な思いが想像以上に伝わり、グールフの心に影響を及ぼしたのかもしれないと思い始めていた。


「・・・いえ、ごめなさい。私にもわかりません。でも結果的にはいい流れになったのかもしれませんね。今日は作戦通りに私たちの生活ぶりを見せつけましょう。」


「まぁ、そうね。随分、驚いたけどやることに変更はないわ。むしろ、大広間に連れてくるまでの手間が省けたってもんね。」


そこで全員が頷いた。


「でも、すっごい視線を感じるんですけどー・・・。」


マリは、さっきから感じる視線に向けて後ろを振り返り、グールフを見る。


(や、やばっ・・・目が合っちゃった!)


マリは、すぐに前を向く。


「まぁ、仕方あるまい。グールフ殿がさっき言っていた”監視”というやつだろう。拙者たちはそれを意識して気をつけなければな。マリ殿も気をつけるんだ。」


ヤンの忠告を聞いて、マリは顔をわずかに逸らして横目でグールフを確認する。


(さっきからまったく視線を外さないッ・・・まさか・・・私のトイレにも付いてくるとか・・・?う、嘘・・・)


マリは微妙な表情を見せる。

そして同時に、ヤンのその言葉を聞き、メイヒールは考えていた。


(もしグールフの中で、何か変化しつつあるとするなら、今はマリたちを見極めている・・・。)


メイヒールもまた、顔を少し逸らし、グールフに視線を向ける。


(そうなのですか、グールフ・・・!)


グールフとメイヒールが集会所に来てから交わしたやり取りは少ない。

だが、それでも信頼関係から生じるお互いの気持ちを推し量って、相手の考えていることがぼんやりと浮かんでくる。

その浮かんでくるものは曖昧でこそあったが、またそれは真理でもあった。























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