一日の始まり
2日目の早朝。
前日にマリとメイヒールが、練った作戦どうりにルークド、グールフ除く全員が大広間に集まった。
その中には、完全回復したファイの姿もあった。
また事情をお見舞いの時にヤンとキャアシーから全部聞いたので、今どうなっているのかすべて知っている状態だった。
「揃ったわね・・・。」とマリが気力充分に呟いた。
マリとメイヒールは顔を見合わせ、頷いた。
「今日することは、昨日お話したとおりです。キングリメイカーとゲンエイガハラ村の共同一歩というところでしょうか、がんばりましょう。」
「本当に生活している姿を見せつけるだけで、成功するんだな?メイヒール。」とファイがやや不安を残した言い方をする。
「・・・・・・はい。グールフは必ず、マリたちを受け入れます。」
メイヒールは、揺らぎ無い目で答える。
昨日と違い、とても引き締まった顔だった。
「・・・その根拠は?と聞こうと思ったが・・・フッ、聞く必要もなさそうだ。お前の目を見ればわかる。心配は無用だったな。」
ファイは、メイヒールの絶対的な確信を見通したのかニヤリとする。
その時だった。
「ニャ!ルークドはいないのかニャ?」
「あぁ・・・あいつね。あいつなら今、部屋で爆・睡・中。それも昨日、昼食の後からずっとね!起こしても起きないし、ほんっと肝心な時にいないのよね~・・・。」
マリは不満たらたらに答える。
「マリ殿。じゃあ作戦をルークド殿には伝えていないのか?」
「えぇ、まぁね。寝る前にも訪れたんだけど、結局起きなくて、そのまま。でもよくよく考えてみれば、あいつ、いないほうが逆にやりやすいかなって。だから今日はこのまま爆睡してもらってたほうが助かるわ。」
そのマリの言葉を聞き、キャアシーはガックリと肩を落とす。
「確かに、今の段階でルークドとグールフを合わせるのは危険かもしれませんね。やはり1回敵として戦った時の印象が強く残っているでしょうし。」
そのメイヒールの言葉を聞き、キャアシーは連続攻撃を食らったように心に突き刺さった。
「ニャ~全然ルークドと話せないニャ~!まだ、1回もまともに話してないニャ~!今日話せなかったら、一体いつお話できるかニャ・・・・・・ルークドは高嶺の花ニャ・・・。」
(そ、それはちょっと違う気がするけど・・・)とマリは思った。
「おい、キャアシー。その事は後にしろ。今は、するべき事をするぞ。・・・だが、少しアドバイスするならお前は、姿形はよくても全体的に幼い。恋愛はもっと大人になってからだな。今のままだとただの”ごっこ”にすぎん。」
ファイは、キャアシーに注意と恋愛アドバイス?を繰り出した。
ドタッ!
そのファイの鋭い言葉に、キャアシーは完全にノックダウンした。
ファイの配慮の無さに、全員が微妙な表情でファイを見る。
(・・・・・・?)
ファイは、不思議そうに集まる視線を受ける。
「えぇ、えっと、それじゃあ念のため作戦をもう一度確認しておきますね。」
メイヒールは仕切り直す。
「まず、私とファイ、キャアシーの3人でグールフを何とかして部屋の外に連れ出します。そしてそのままグールフをここ、大広間へ。」
メイヒールは続ける。
「それからは昨日、話したとおり、私たちの生活を見せつけるのです。」
全員が、頷いて確認し終えた。
昨日、マリとメイヒールが練った作戦とは、グールフを大広間まで来させて、そこでマリたち人間側とメイヒールたち半端物たちの共同生活ぶりを見せつけるという作戦だった。
その狙いは、そこに人間がいるということを当たり前にするということ。
親しさぶりを見せつけ、マリたちを信頼できる人物と思わせるということ。
生活ぶりから見えるマリたちの情報を少しずつ与えていくということ。
情報を少しずつ与えていくことで、敵ではないという認知に変えていき、不思議と受け入れてしまうということのためだった。
さらに実行場所を集会所という一つの場所に閉鎖的に絞ることで、少ない時間で一気に関係を築くという作戦だった。
その作戦は、関係を築くというのにはやや強引で動物を懐柔させるかのような恣意ではあったが、致し方なかった。
「それじゃあ、早速私たちがグールフのいる部屋に。」
そう言ってメイヒール、ファイ、キャアシーが部屋へ向かおうとしたその時だった。
「・・・我がどうか・・・したか?」
重圧のある存在感、ドシドシと歩く音、大柄の体格と白い全身の毛並みにウルフそっくりの顔。
その特徴は見間違えるはずもない。
グールフが、その大広間に現れたのだった・・・。




