イカれた武器
ヒドウが目を向けた先の森林には、多数の眼光が光っていた。
「・・・・・・。」
ヒドウは黙ったまま、じっとそれらを凝視する。
その時だった。
「ひ、ヒドウオオォォさああぁぁん!!ほ、ホモゴブの大群があぁッ!!」
ヘッターレが、取り乱した様子でわめき散らす。
そして、次の瞬間。
プシュン!
またも矢は放たれ、今度はヘッターレめがけて飛んでいく。
その突然の奇襲に周りの兵隊たちも反応が遅れ、誰も動くことができなかった。
矢が放たれたことに気づいた時は、もうすでにヘッターレの目前まで迫っていた。
「イヤエエエエエェェェェェ!!!」
ヘッターレは、矢が自分めがけて飛んできているのは認識していたが、足がすくんで何もアクションを起こすことができず、ただ単に叫びにならない奇声を上げているだけだった。
それは、自分の死を確信したことによる恐怖で、こんなにもあっさりと自分は死んでしまうものなのかという魂からの奇声だった。
だが、その時!
「バカ野郎・・・。」
ガキィン!!
ヘッターレの前に、鎧の小手が遮り、矢を弾いた。
つまり手で矢を防いだのだ。
「キイイイィィヤヤアアアアッ!!・・・・・・えっ?あ、あれぇ!?」
ヘッターレは、生きていることを自覚する。
そして、目の前にある横から差し出されている鎧の手に気づくと、そのまま首を動かして、横を見る。
そう、ヘッターレを守った人物それは、ヒドウだった。
「ヒ、ヒドウさん!?」
「・・・お前はな・・・バカ野郎なんだよぉぉッ!!バカはな、結局バカなんだよ。おまけにアホ野郎ときた。救いようがねぇな、呆れるぞ、クソゴミ野郎ッ!!ハァ~・・・一生クソでも食って生きてることだな・・・。」
「あ、ありがとうございあああすぅぅぅぅ!」
意味の分からないやり取りだったが、ヘッターレは守ってくれたことに対して、存分に泣き、感謝の意をヒドウに伝える。
生命のありがたみを実感した瞬間でもあった。
ヘッターレは安堵感から尻餅をつき、思わずジュワ~と失禁する。
するとホモゴブの大群が暗い森林からゾロゾロと前に出てくる。
その数は、一目で把握できないほどの数で、まだ固まることができていないヒドウの兵隊より明らかに多かった。
さらに、ルークドたちが森に来たときよりも獰猛さが増していた。
「ちょうどいい、やっと愛の確認ができるってもんだなッ!!・・・おい!!オレの『カンイン嬢』をセットしろ!!弾帯は『愛の嵐』だ。激しくいこうじゃねぇか!!他のやつはセットが終わるまで、前に出て時間稼いでこい!クソ共!!」
ヒドウがそう号令をかけると、二段機構のバリスタを持った部下が、ヒドウに弾帯を渡して、前方に三脚を地面に刺し準備し始める。
「カンイン嬢」・・・それは、その二段機構バリスタの愛称で、「愛の嵐」はその弾の愛称だった。
一方、弾帯を受け取ったヒドウは、自身の鎧の上から巻き付ける。
その弾は、バリスタの一段目に使用する弾で小さめの矢ではあるが、連射できるものだった。
大きさとしては、ダーツのような感じの矢で、それがびっしりと、弾帯になっていた。
ヒドウの準備が整うまで、他の兵隊は、突撃しホモゴブたちと近接戦闘を繰り広げる。
後から来た兵隊も急いで戦闘に参加するが、ホモゴブの数が圧倒的だったので、せいぜいヒドウにホモゴブの大群を近づかせないのが精一杯で、決して減らせているとはいえなかった。
「準備完了しました!」
「よ~し、どけ!!」
ヒドウは、セットされたバリスタに近づき、発射できるようにリロードする。
そのバリスタは、キングテレトリー軍で使用されていたものを、ヒドウが独自に、無理矢理に改造して2段機構にしたもので、ヒドウしか扱い方を知らなかった。
「あぁ~最近、お前とはご無沙汰だったからな~・・・カンイン嬢・・・お前の欲求不満がよく伝わるぜ・・・。でもな、今すぐにその疼きを解消してやるからなッ!!」
ヒドウは、そんなことを言いながらそのバリスタにスサスサと手を擦り、うっとりする。
そして、発射体勢に入る。
「おい!!クソ共!!発射するぜえぇぇぇぇぇ!!避けろよおおおぉぉッ!!」
そのヒドウの叫びを聞き、ホモゴブと戦っていた兵隊たちが慌てて引き始める。
だが、ヒドウは味方が射線上にいようがお構いなしの性格だった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ドドドドドドドド!!・・・
猛烈な発射音と共に矢が発射されていき、その場は、一気に地獄化とする。
2、3発当たるだけで、ホモゴブたちの四肢は吹っ飛び、激しく血飛沫を散乱させる。
その絶大な破壊力に加え、連射レートも高く、またいつまでたっても弾切れがない様子は、あまりにも恐ろしくホモゴブたちの戦意を一瞬で失わせ、ホモゴブたちは、棍棒や弓矢などをその場で捨て、森林の方へと一目散に逃げ始める。
だが、ヒドウは撃つのをやめない。
「グハハハハハハハハハ!・・・」
高笑いをしながら、撃ち続ける。
味方に誤射しようが、お構いなしにむしろ貫通させる勢いで撃ち、さらに矢はホモゴブたちが逃げた先の森林までにもおよび、木々が次々と削られて破壊されていく。
その様子は、まさに一斉掃射というのにふさわしく、例えるならヒドウ側から見れば、固定機銃で無力と化した逃げ惑う市民を虐殺するような状態といえた。
「・・・・・・。」
後から遅れてきて、そこに着いた兵隊たちや、尻餅をついたままのヘッターレも、その迫力にただ圧倒されるしかなかった。
ドドドドドド!!・・・・
それは数分間も続き、ヒドウの前方に立っているものらしきものは、ほぼ無くなった。
死体の地面に、血だまりの池、破壊され尽くした自然の風景は、あまりにも無残だった。
そして、木々がなくなったためにその周辺は、月明かりが入り、照らされた。
めぼしい的は何もなく、ヒドウはそこで初めて撃つのをやめる。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・やっぱり、お前は最高だ・・・カンイン嬢・・・。あぁ、たまんねぇ~。」
ヒドウは、一息つくと満足したのか発射体勢を解く。
「しっかり、休憩するんだぜ・・・。」
ヒドウは、バイザーを上げ、そのバリスタに、チュッとキスをする。
そして、バイザーを下ろす。
「・・・・・・おい!お前ら何、ぼ~っとしてんだ!!早く、カンイン嬢を包んであげろ!寒がっているッ!」
「へ、へい!」
ヒドウに、そう言われ、さっきの部下が丁寧にバリスタを元に戻し始める。
ただ、今のホモゴブの大群を受けてか、ヒドウは弾帯を外そうとはしなかった。
「ヘッターレ立て!!オラァッ!!」
「・・・・・・す、すいあせん・・・・・・。」
ヘッターレは、すっかり恐縮していた。
「で、ではヒドウさん。先に進むとしましょうか!(もう帰りてぇよ・・・。)」
ヘッターレのその合図に一行は、目的地ゲンエイガハラ村に向かって進み始めたのだった。




