イカれたやつ、イカれた愛
日が落ちた頃の夜。
森に入ったヒドウの300人の兵隊たちの進行は、あまりにもひどかった。
その兵隊たちは、日頃の不摂生で体力はなく、さらに森を舐めた心構えから大した対策や装備もなく、300人の隊列は崩壊に近く、個人個人が先頭のヒドウに辛うじてついて行っているような状況だった。
途中、その場で倒れてついて行けなくなるものも続出したが、助けることなく全員スルーを貫く。
また、魔物と遭遇する兵たちもいたが、他の兵たちは自分が戦闘に巻き込まれない限り、助太刀することなく全員スルーを貫く。
そんな、進行だったので村に近づけば近づくほど、兵隊の数はどんどんと減っていた。
その300人は、兄ザンギャクの部下精鋭3人と対照的といえた。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ちょ・・・ちょっと、ヒドウさん、ここいらでいったん待ちましょうよ~!周りにいるのは30人程度しかいませんぜぇ~。ほ、ほら後ろにたくさん・・・」とヘッターレは疲れた様子でヒドウに言う。
ヒドウは、バイザーを上げて、後ろを振り返る。
その光景は、兵隊たちが、ちりぢりに歩いている様子で、例えるなら、ゴールから映るランナーたちだった。
そしてバイザーを下ろしてすぐに前を向く。
「あぁ!?知るかバカ野郎!!ついてこれねぇやつがクソなんだよッ!!・・・そんなクソ野郎はな!土の肥料になってりゃーいんだよッ!!」
「そ、そんな、ちょっと暴論すぎませんか・・・。(つーか、お前がおかしいんだよッ!!そんなチョーヘビーな鎧着ながら、どうやってここをそんな速く歩けるんだよ!)」
「・・・・・・ハァ~。これだからよぉ・・・まったく最近のゴミはよぉ・・・無駄に手間かけさせやがって・・・。」
ヒドウは、いったん足を止める。
「あ、ありがとうございあす。ここで、少し兵隊たちが固まるのを待ちましょう・・・(あぁ~やっと休憩できるってもんだぜぇ・・・。)」
ヘッターレも疲労困憊の様子で足を止め、休憩に入る。
また、何とかついてこれていた兵隊たちも、ぐったりと休憩に入る。
その中に含まれている10匹のヘルドッグも休憩に入る。
「てっいうか・・・ヒドウさんはそんな鎧着てるにも関わらず、よく疲れませんね。(重さを感じないほど頭イカれてっんじゃねーの、こいつはよぉ。)」
ヘッターレは皮肉を込めヒドウにいった。
もちろんヒドウは、皮肉などわからない。
「ヘッターレ・・・お前は・・・自分の体、重いから外したいなぁ~って思うか?」
「・・・?」
「オレがなぁ。この鎧を外すときはなぁ・・・改造で魅力を高めてやる時だけだ。それ以外の時は、常にこいつ(鎧)を感じてるんッだよ。ずっと生活を共にしてんだよ・・・。なぁ?オレたちは愛し合っているんだよッ!!!」
突然の大声を発す。
それによってヘッターレ、他兵隊たちは、ビクッ!と驚いた。
ヘルドッグたちも思わず、伏せの状態から立ち上がった。
ヒドウは、バイザーを上げる。
「オレはこいつで、こいつはオレなんだよ?わかるか!?着る、着ないの関係を超えて、オレたちは一体化してんだよおおッ!!」
「・・・す、すいあせん。充分に伝わりました。そろそろ進行を再開・・・(やべぇ・・・キチガイスイッチ入れちまった・・・どうすんだよこれぇ!)」
ヘッターレは周りの兵隊たちにチラッチラッと目線を送る。
すると突然、ヘッターレの顔を両手で掴んで持ち上げる。
その時のヘッターレの顔は、掴まれたせいで変顔になっていた。
ヒドウは、メンチを切るように顔を近づける。
「伝わってねぇッ!!!おい、さっきからどこ見てんだよッ!!クソ野郎!!お前は誰と会話してんだぁ?
お前は道に落ちてあるクソとでも会話してんのかぁ!?あぁ!?」
「いえおええおいふぉおいお!!」
掴まれて圧縮されている、ヘッターレは何を言っているのかわからない。
「・・・・・・・・・よし、分かればいいんだ。お前は、クソ野郎ではなく、ゴミ野郎のようだな。」
ヒドウは、ヘッターレを放した。
ヘッターレは尻餅をついた。
「・・・・・・(し、死ぬかと・・・思ったぜぇ・・・。クソッ、キチガイであってもキングリーパー幹部なだけはあるなぁ・・・誠意だけはしっかり見せねぇと・・・さすがにやべぇな。)」
ヘッターレは、かしこまる。
他の兵隊たちもおののき、緊張が場を包んだ。
鎧を着ていても先頭に位置することができるほどの体力、一瞬で場を緊張に包むカリスマ性?を見せたヒドウは、やはり、その辺のゴロツキとは格が違った。
「で・・・だ。さっきの続きになるがな。この鎧の中にいるとな・・・安心できるんだよ。その安心はな、まるで女の腹の中にいるときの安心感だ・・・。だからなぁ、オレは胎児でもある。そしてな、こいつはオレのママでもあるわけだ。」
「へい。へい。へい・・・」
ヘッターレ他兵隊たちは、無理にでも相づちを打つしかなかった。
ヒドウは、夜空を見上げる。
「だから、恋、親愛、親子、いぃぃや。この世のすべての愛の関係がオレとこいつ(鎧)の関係だ。そしてな。オレたちが、永遠の愛の象徴としたら、他の愛は偽物だ。だから、オレは毎日毎日、人を処刑してきた。偽物が生まれないためにな・・・。」
ヒドウは、突然、涙を流し始める。
その涙は、鎧や武器たちとただ平穏に愛し続けたいが、戦い続けなければならないというヒドウ自身が背負っている本質的な悲しみ、それを感じてだった。
それは、戦士の涙同然だった。
「へい。へい。へ・・・!」
ヘッターレは、その時ヒドウの背後の先にいる何かに気づいた。
そしてヒドウは、その泣き顔を隠すようにバイザーを下ろす。
夜空がバイザー越しに映る。
「・・・グスッ・・・グスッ・・・こうして・・・!オレは日々!!・・・戦い続けているんだ・・・・・・。」
ヒドウがそこまで言い終わった時だった。
プシュン!
離れた暗い森林の中から矢が放たれた。
ヒドウ一直線に、飛んでいく。
ガキィン!!
ヒドウのメットの後頭部に命中した。
だが当たった瞬間、矢はおもちゃの矢のように折れて、メットには微細な傷一つ付かなかった。
「・・・あぁん?」
ヒドウは、さっきまでとまったく違う恐ろしい雰囲気を出し、後ろを振り返る。




