その後
夕方。
メイヒールの最初の説得が失敗した後は、事態は特に動くことなく、そのままだった。
ルークドはまだ自由に動き回れるほど回復しておらず、とりあえずその日は療養に専念し、メイヒールたちは、グールフの機嫌の悪さを見て、いったん接触を避けるようにしていた。
だが、集会場を離れることはせず、そこでとりあえず生活をしていた。
今はグールフを、部屋でそっとするしかなかった。
大広間にマリ、メイヒールの2人がマグカップを手に、座って話をしていた。
ヤンとキャアシーは、その時メイヒールの家に1人残されたファイの様子を見に行っていた。
それは、お見舞いともいえた。
「・・・はぁ~まさか、ここまで失敗するなんてね~。キャアシーの言った通りに幸先悪くなっちゃった・・・。」
マリは、フーフーしてゆっくり飲む。
「おそらく、まだ今のこの状況、外からやってきた人間がこの村に入っているということを受け入れることができていないだけだと思います・・・。きっと整理がついたら耳は貸してくれる・・・はずです。・・・今日、もう一回夜にアタックをかけます。」
マリはカップから口を離す。
「でもほんとうに大丈夫?魔法で突き飛ばされちゃったんでしょ。次・・・もしものことだけど殺されたりしない?『そのうるさい口を永遠に黙らせてやろう!!』とか言ってさ~。」
「・・・マリ、心配ありがとうございます。ですが、大丈夫です。グールフは、決して村のものに危害を加えることはしません。」
メイヒールもフーフーしてゆっくり飲む。
「私には平気で殺りそうな人物に見えるけどなぁー。凶暴そうだし。」
マリが、率直にグールフの印象を口にした。
メイヒールは、やや目を下にして神妙な面持ちになる。
カップを机に置いた。
「・・・・・・確かに、グールフには多少気性が荒いところはありますが、本当は他人思いのやさしい心の持ち主なんです。」
「・・・。」
マリは、少々まずったことを言ってしまったかと思い黙ってしまう。
メイヒールは続ける。
「マリたちにああいう態度を取るのも、ただの暴力的からではなく、この村、ゲンエイガハラ村を守ろうという一番強い思いを感じてだと思います。今は、まだグールフの中では、人間=自分たちの生命を脅かす敵として認識していますが・・・決して、全員がそうではないとわかれば、自然と受け入れてくれる・・・。と思っています。少し前の、私やファイ、キャアシーのように。」
「どうしてそこまで確信できるの?」
「そう聞かれると・・・正直わかりません。でも、それはグールフと同じ、半端物として心から感じたことです。・・・それもマリ、あなたたちの持つ力だと思います。キングリメイカーは私たちに変化をもたらしてくれました。もちろん、いい意味で・・・。だからこそ、こうして信頼が築けたのだと思います。
私たちが、信頼を築けたならグールフとだって・・・。」
メイヒールのその言葉は、最初にマリを村に案内しようと思った本人だからこそ、理解できるというものだった。
ただ、それはメイヒールの弱音ともいえた。
昼の出来事の動揺で、マリについつい自然と話してしまっていた。
「う、う~ん・・・まぁ、それだけ期待されたら、応えないとね!」
マリは、よくは理解できなかったが、メイヒールの気持ちが伝わるのを感じた。
その時には、その場の空気は、明るくなっていた。
マリは、一気に飲み干して、カップを机に置いた。
「メイヒールのさっき言ったことで、いい作戦思いついちゃった。」とマリはニヤリといった表情で言う。
「・・・!是非聞かせて下さい!」
「これはあくまで、説得がうまくいかない場合なんだけど・・・私たちが信頼できる人物ってことを見せつけるなんて・・・どう?」
「見せつけるですか。」
「そう。見せつけて、自然と認識を変えるの。・・・」
2人は、次なる作戦を練り始める。




