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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
ゲンエイガハラ村編ーⅠ
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説得

昼。

グールフは、獣人とだけあって大食いだったので、その分の量を作らなければならず、かなり時間を要した。

それでも、ヤンたちの手伝いもあって何とか昼には間に合わせることができた。


メイヒールとキャアシーは、料理を持ってグールフがいる部屋へ恐る恐る入る。

グールフは、ベッドで目を閉じて、横になっていた。

扉が開いて、誰かが入ってくる気配をしてもグールフは、まったく反応する様子はなく、ただずっと目を閉じていた。


そしてメイヒールとキャアシーは、部屋に踏み入れた瞬間に目を合わせ、合図のように頷く。

説得をするための行動を開始する合図だった。

いつものようにグールフと接するのとは違い、その時ばかりは緊張があり、その部屋の中の空気は、ルークドがいた部屋の空気とは正反対といえた。

すること自体は、お食事会と2つの部屋では共通していたが、やはり会話の持つ意味の重さが違った。


「グ、グールフニャ。よ、容態はどうかニャ・・・?す、少しは動けるようにはな、な、ななったかニャ?」


キャアシーが声を掛けながら、近づいて行くが、接近するにつれて緊張のあまり噛み噛みとなる。

まずは、ムードメーカー的なキャアシーが、いつもと変わらないように話しかけ、ごく自然に柔らかい雰囲気を作ろうという算段だったが、逆に不自然な形になってしまった。


グールフは、目を開けない。


「・・・グールフ。おなかが空いたと思って、ご飯を持ってきました。ついでに私たちもここで食べようと思って・・・。」


メイヒールが、すかさず声をかけ、ふたがされた皿を机に置く。

そして、机に置いたとすぐに、ふたを空ける。

その皿に盛られていたのは、七面鳥の山で、そのにおいが部屋に一気に充満する。


グールフは、目を開け、上体を起こすと皿が置かれている机まで手を伸ばして、七面鳥を豪快に掴み、一心不乱に食べ始める。

1つ七面鳥が一瞬で無くなると、また次の、七面鳥を掴む。

そのスピードに、キャアシーとメイヒールは、ぽかーんと驚くしかなかった。


グールフの食べ方は、とても荒々しい食い方で、すぐに、すべての七面鳥は皿から無くなった。

その無くなった速さは、消耗具合を表していた。


完食したグールフは、立ったままのメイヒールとキャアシーの方を見る。


「・・・消えろ。」


それだけを言い放つと、横になろうとする。


「ニャ!・・・我が輩たちと少し食べながら談笑でもしないかニャ。お、お代わりなら持ってくるニャ・・・。」


キャアシーがその圧に負けじと、オドオドとしながらも話しかける。

だが、そんなキャアシーにグールフは、強烈に睨みつける。

その攻撃的な目で、キャアシーは、あまりにもいつもと違うグールフにビビって引いてしまう。


「ま、まだ容態が悪くて不機嫌みたいだニャ・・・。だ、談笑は、ま、また明日にでもす、するニャ・・・。」


キャアシーは、その部屋の圧に耐えられず今すぐにでも逃げ出したく、自分の分の料理を持ったまま、引き返そうとする。

やはり、キャアシーには荷が重すぎたようだった。


「も、もう行くニャ・・・。メイヒール、あっちで一緒に食べようニャ・・・。」


キャアシーは、メイヒールの服をクイクイと引っ張って、一緒に部屋から立ち去ろうと合図をする。

だが、メイヒールは、グールフのほうをじっと見つめて、動こうとしなかった。

キャアシーは、不安そうな表情を見せる。

いつまで立ってもメイヒールは動く気配を見せないので、キャアシーは仕方なしに1人出て行くことにした。

扉の前に立った時には、半泣きだった。

キャアシーは、部屋を出る寸前メイヒールの後ろ姿を一瞥する。


バタン・・・


メイヒールは、目を閉じて横になったグールフと2人きりになった。

とりあえず机に盆を置くと椅子に座る。


「・・・・・・・・・」


沈黙が続く。


しばらく沈黙が続いた後、メイヒールは声をかける。


「・・・・・・私たちは今日まで・・・自分たち(半端物たち)だけで生きてきました。それがもっとも最善な生き方だと思って・・・。それは先人たちから変わらない考えでした。」


「・・・・・・。」


「でも、それは結局、自分たちを閉じ込める生き方だった・・・とあの方たちに気づかされました。」


「黙れ・・・。」


「存在を隠すのではなく、存在を認めて貰うことが必要だと思いませんか・・・!」


メイヒールは、そう訴えながら立ち上がる。

それと同時にグールフも閉じていた目を開ける。


「黙れ!」


「しっかり聞いて、グールフ!!あの方たちは、私たちの存在をしっかり認知してくれて、人と対等に見てくれる・・・!だから、この村に保護下の話を持ちかけて・・・」


そうまっすぐ訴えながら、グールフに一歩、一歩近づいて行く。

その時だった。


「黙れッと言っている!!」


グールフは、上体を急に起こすと、メイヒールに向けて、魔法を使う。


「・・・っ!!」ドオッン!!ガシャーン!!


軽い突風が吹き、メイヒールは壁へ強く打ちつけられた。

また、同時に机の上の盆が吹っ飛び、料理や皿が床へ散乱した。


メイヒールは、ぐったりと顔を下げていた。

影で表情はよく見えなかった。


10秒ぐらい間があいた。


「・・・・・・・・・ごめんなさい・・・。」


それからすぐに、メイヒールは落ちた物を拾い上げ、グールフを少しも見ることなく部屋から出て行った。




















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