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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
ゲンエイガハラ村編ーⅠ
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沈静

夜明けと共にゲンエイガハラ村に着いたルークドたちは、ひとまず落ち着けるようにとメイヒールに村の集会場として使っている広い建物に案内された。

これまでは、自身の家に案内していたメイヒールだったが、さすがの人数だったので集会場に案内したのだった。


「ここは村の集会所として使っている場所です。設備や物はそれなりに揃っていますから、自由に使って・・・」


メイヒールが、そこまで言いかけていた時だった。


ドスン!!バタッ!


「・・・ニャァッ!?ルークド、大丈夫かニャ!しっかりするニャ!」


なんとルークドとグールフが同時に床に倒れてしまったのだ。

さっきまでしっかりとした足取りで村まで歩いて来たばかりかお互いすぐにでも戦闘を再開しそうなほどのエネルギーを感じさせていたので、突然倒れるという出来事は、メイヒール、マリ、ヤン、キャアシーを驚愕させるしかなかった。

真っ先に反応して駆け寄ったのは、キャアシーだった。

だが、キャアシーはグールフではなくルークドに駆け寄ったのだった。


「・・・っ!・・・我慢していたが限界みたいだ・・・。・・・キャアシーだったか・・・悪いが俺を安静にッ・・・!」


その時のルークドの声は弱々しく、顔にひどく疲労が表れていた。

ルークドとグールフ、両者とも戦闘によるダメージ、全身の痛み、消耗といったやせ我慢が遂に限界を向かえ、集会所に入った途端、糸が切れるようにしてボロボロ具合が表れたのだった。

あの時からここに来るまで動けたのは、敵が目の前にいるという緊張状態。ただ、それだけだった。


「ニャ!・・・・・・これで少しは楽・・・かニャ?」


キャアシーは照れながらも正座してルークドの頭は膝に乗せる。即ち膝枕だった。


「・・・・・・。」


ルークドの反応は特にない。


「・・・いやいやそうじゃなくて!安静にできる場所に運んでってこと。」とキャアシーの行動にマリが突っ込む。


そしてぐったりとしたルークドとグールフをマリたちは、それぞれ別の部屋のベッドまで運んだ。

その集会場は、宿的な側面も備えていたので、個室も充実していた。

そのおかげで、ちょうどいいタイミングにして、いい場所で、ルークドとグールフを隔絶して引き離すことができたので、マリたちは少しホッと安心すら感じていた。


ベッドまで運び終えた、マリたちはさっきと同じ大広間に集まる。


「はぁ~何とか乗り切ったわ~。あの2人がいるとこっちの気が持たないわ・・・。ルークドがある程度回復したら、目的も果たしたことだしさっさと帰還したほうがよさそうね。」


そのマリの言葉を聞いた、メイヒールとキャアシーはえっ!というような驚く顔をする。

それはもっとマリたちに村にいてほしいという思いが心のどこかで感じていたからであった。

例えるなら、家に来た友達を帰したくないというのと同じだった。


「しかし、マリ殿。ゲンエイガハラ村を保護下に置くという目的は果たしたものの、このまま帰っていいのだろうか。」


「ちょっと、ヤン。それどういう事?だってもうメイヒールにもファイにも認めてもらったじゃない。村の代表に認めてもらったのよ?完全に果たしているわ。」


「だが、唯一まだ、認めてもらっていない人がいる・・・さっきの獣人殿に。」


「え~ほっとけばいいんじゃない?そのうち、メイヒールに従うでしょ。・・・あっそういえば、メイヒール。あの獣人が、前言ってたグールフなの?」


「・・・はい、そうです・・・。」


メイヒールは元気がなかった。


「やっぱり、グールフが反対のままじゃダメ?」


「・・・いえ、グールフの意見にかかわらず、私たちは、あなたたちを歓迎するつもりです・・・。」


「じゃあ、キャアシーは・・・?」


マリはメイヒールの返答を聞いた後、横に座っているキャアシーに目線を移す。

初めてちゃんと顔を合わした瞬間だった。


「我が輩もメイヒールと同意見だニャ。もっとこの村には人との交流が必要だと思うニャ!ルークドと交流したいニャ!」


それを聞いて、思わずマリは笑ってしまった。


「ニャ?何か変なこといったかニャ?」


「・・・ごめんごめん、なんかメイヒールの家の時から随分と変わったな~って!」


「ニャ~やっぱりそう見えるかニャ~。そうニャ!我が輩はもう弱くないのニャ!変わったのニャ!」


キャアシーは、何だか誇らしげ満足げに言う。


「うんうん、よろしくね~キャアシ~!」


マリは、キャアシーに抱きついて、ほっぺを合わせて肌をスリスリする。


「マ、マリもなんだか、随分とか、変わったニャ・・・!・・・・・・もう、や、やめるニャ~!」


マリは、キャアシーを愛しいと思うようになっていた。

嫌っていた特徴も、いつしかチャームポイントに感じ、キャアシーを自分より小さい、子供のように接していた。

逆にキャアシーは、そのべたべたくっつくお姉さん的態度に、ただ困惑していた。

だが、それは決して悪いものではないなと、寒々しい心に暖炉が着けられたように、温かみを感じていた。

それは、人の良さを知った瞬間でもあった。


その様子を見ていたメイヒールは、その時ばかりは、笑顔が戻っていた。


「す、すまんが、いいか・・・?」


ヤンが口を挟んだ。


「・・・何?」


マリは、ヤンを冷たく睨みつける。


「あ、あぁ・・・えぇっと・・・さっきの話に戻るが、拙者が懸念しているのは、このまま帰ると、かわりばんこに、この村に駐屯するキングリメイカーの兵士殿たちが危険ではないかということだ。」


「・・・・・・。」


その場の全員がヤンに集中する。


「マリ殿。あのルークド殿との戦闘の後を見ただろう。もし、反対のままのグールフ殿が暴れでもしたら・・・。」


そこまで聞くとマリは勘付いた。


「・・・!誰も止めることができない・・・。兵士は皆殺し、下手したら、情報を吐かせてキングリメイカーに乗り込んでくる・・・!」


「あぁ、最悪の場合はそうなるだろうな。仮にルークド殿と互角の力とするなら、制止できるものは限られてくる。だから拙者たちがいる間に・・・」


「説得する必要がある。」


その一言は2人同時、被さった。


そして、その一言はメイヒールが、後に自身が為さねばならないと重圧を感じていた事柄を言い当てられた瞬間だった。


「じゃあそうと決まれば・・・さっそく、ルークドにもこれまでのこと含めて、事情を説明する必要があるわ。」とマリは言いながら立ち上がる。


「あぁ、早いほうがいい。ルークド殿の意識自体はあるしな。」


ヤンもそう言いながら立ち上がる。

2人ともルークドがいる個室に行くためだった。


「あ、あの!・・・」


メイヒールが立ち上がる。

何かを言おうとしていたが、言うことを切り替える。


「い、いえ、私たちの方でもグールフを何とか・・・わかってもらうために説得・・・(ううん、最悪、懐柔でもいい。)言い聞かせて見ます。」


メイヒールのその表情は、真剣だった。

だが、それは望ましい形ではないという心の痛みも感じていた。

グールフにも自分たちと同じような形で受け入れてほしいと考えていた部分もあったからだった。

理想よりも現実を取った。


「こうなったら・・・何だかよくわからニャいけど我が輩も手伝うニャ!グールフに、ルークド・・・」


キャアシーは、ルークドという名前で詰まる。

照れによるものだった。


「マリたちを認めさせればいいんだニャ?」


「えぇ、そう!・・・一緒にがんばろーキャアシ~!」


「ニ、ニャ・・・。」


マリのデレデレ具合にやや引いてしまう。


「じゃあ、決まりました。・・・実質的なタイムリミットは戦闘の影響でおとなしくしている3日程度だと思います。それに間に合わなければ、ルークドとまた、・・・いえ今度はそれ以上の戦闘になるかもしれません。」


メイヒールが総括し、言い放つ。

その場の全員が頷き、気を引き締める。


そして、マリとヤン。メイヒールとキャアシー。それぞれ二手、真逆の方向に分かれるようにして、部屋に向かうのだった。


1つ屋根の下、緊張の生活が始まる。






































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