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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
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紆余曲折の終着

ルークドとグールフの熾烈な睨み合いが続く。

お互いに、動けるならすぐにでも戦闘を再開するかのような勢いで、一点集中して捉えていた。


そしてルークド、グールフ、キャアシーがそのまま固まった状況の時にメイヒール、マリ、ヤンの3人は元は湖であった、くぼみのすぐ傍にたどり着いた。

3人は、キャアシーの足取りを順調に追っている途中、遠くからでもわかるその箇所だけ雨が降る様と、轟音や衝撃を感じ、急いで駆けつけた。

湖の位置はゲンエイガハラ村からは、そう遠くはなかったのだ。


「一体ここで何があったというのだ・・・。それに、このクレーターは・・・!」


「ここは、ゲンエイガハラ村の施設の小さい湖だったはずですが・・・水が無くなっています。どうして・・・!」


3人は、目の前の光景にただ困惑するしかなかった。

土地勘のあるメイヒールすら、自分の知っている景色と違う場所が広がっていたので、その場所で何が起きたのか理解できなかった。

雨が降る中、3人はその光景を突っ立て見つめる。

そこでマリは、何かを発見し、凝視する。


(・・・・・・ルークド!?)


そのくぼみの中央にいる正体、低姿勢のルークドの後ろ姿に気づき、慌てた様子で、その箇所を指差しながらヤンに伝える。


「・・・ねぇ!見て!あそこにいるのってルークドじゃない?」


「・・・間違いない!あの後ろ姿はルークド殿だ!・・・あの、すぐ近くで倒れているのは獣人か!?」


2人の様子にメイヒールも反応し、その箇所を見る。


「グールフ!?」


3人はそのことがわかると、走りだして、くぼみの斜面を滑っていく。

そして、底の地面に足をつけると、中央にいるそこへ駆け寄っていく。


「ルークドー!ルークドー!」


マリが呼びながら、動かないルークドに近寄っていく。


「ルークド!・・・ルーク・・・ド・・・?えっ?」


近づいたことでマリはその時、初めて、ルークドに包まれていたキャアシーの存在に気づいた。

マリは、背後からルークドの前へと移動しながら話しかける。


「なっ、ど、どういう状況・・・?・・・てかっ!全身ボロボロだけど大丈夫!?」


「・・・マ、マリ!?」


マリが前に立ったことで、初めてルークドは気づいた。

それぐらいに、グールフに集中していたのだ。

また、グールフも突如現れたマリに困惑気味に注意と視線を移す。


続けてヤンとメイヒールもその場になだれ込む。


「ルークド殿!・・・とキャアシー殿!?」


ヤンも驚きの声を上げるしかなかった。


「ヤン!?ど、どうなってんだ・・・。」


ルークドは、マリとヤンが突如現れ、困惑するしかなかった。

だが、マリとヤンもルークドに抱きつかれた状態のキャアシーの存在、ルークドのボロボロ具合に驚くしかなく、結果的に全員が状況を飲み込めなかった。


メイヒールもキャアシーの存在と、この今の状況に驚くが、冷静に優先行動を取る。

瀕死状態のグールフにかがんで、妖精魔法で応急処置をし始める。

グールフは、ずっとその状況を見ていた。



「・・・なぁ、体が動かないんだ。手を貸してくれ。」


ルークドは、ヤンとマリに助けを求める。


「そう・・・そのまま横に・・・。」


2人の助けを借り、ルークドは横になることができた。

ルークドと体が離れたキャアシーは、まだ顔を赤らめ、ぼーっとしていた。


ヤンは、そんなキャアシーの様子をうかがうが、キャアシーの視界にはヤンの姿などなかった。

マリは、横になったルークドの傍に座って自然とヒーリングウォーターでルークドの傷を治療し始める。


「ルークド。ここで何があったの・・・?」


「いや、単純にそこで倒れている獣人に襲われたんだ。それで結構派手になって・・・まぁ、後一撃というところで邪魔が入ってな。でもどうしてかはわからんがお前たちが来て助かったぜ。俺の治療なんかより今すぐ獣人のトドメを刺せ。今ならまだ・・・」


「殺す必要なんてないわ。」


「はぁ・・・?」



その時、グールフは、メイヒールの応急処置によって、言葉を発するようにはなった。

うつぶせのまま話す。


「メイヒール・・・こいつらはなんだ・・・。それにどうしてお前が共に行動をしている・・・。」


グールフは、怒りを隠せない様子で、メイヒールに問う。

人間をのうのうと、ここまで立ち入れ、さらにさっきまで戦っていたルークドの仲間と見られる2人を連れてきたというのがより怒りを増幅させていた。


メイヒールは、神妙な表情で黙ったまま応急処置を続ける。


「答えろ!!」


「キャッ!」


グールフは、メイヒールを突き飛ばし、激しい動作で急に起き上がる。


「・・・グゥルルルルゥッ!!」


メイヒールを睨みつけ、獣化じゅうか寸前状態で威嚇する。

僅かな応急処置を受けただけであったが、動けるようにはなっている様は、グールフの自然回復能力の高さが表れていた。


「ご、ごめんなさい・・・。」


メイヒールは、罪悪感を感じる表情で、目も合わせられず、呟く。

それは、村の中で、もっとも人間嫌いなグールフを差し置いて、勝手に村の保護下を承諾し、さらには、戦闘能力が一番村で高く、一番守ってきたグールフという重要な存在を、今さっきまで忘れていたことに対してであった。


緊張の空気に、ルークドたちも、その様子に注目する。

キャアシーは、まだぼーっとしていた。


メイヒールは、自分に視線が集まるのを感じて、周囲を見渡す。


「・・・・・・。」


何も言えず、どうしていいのかわからなかった。

その時だった。


「おいおい、少しは落ち着けよ。」


ルークドは、マリの治療の手をどけて、意気揚々とそう言いながら立ち上がる。

体が限界を向かえ、そこから僅かな休憩を挟んだことで、超回復的に動くようになっていた。

マリの治療の効果もあった。

そして、その声にキャアシーがハッと我に返る。


グールフは、獣化じゅうかの形相でルークドのほうに体を向ける。


「俺はこの状況はさっぱりだし、お前たちの存在もよくわからない。まぁ、だからってなんだが、せっかくここまで来たんだし村にでも案内してくれよ。・・・そこで、ゆっくり情報整理しねぇか?エルフさん。ここは、雨?が冷たくてな。」


「わ、我が輩も賛成ニャ!・・・もう逃げ出したりしないニャ!「人」になるため人とお話したいニャ!」


ルークドはキャアシーの口癖に驚いたが、とりあえず黙っていた。


「キャアシー、お前までもッ!!・・・自分が何を言っているのかわかっているのか・・・!」


「まぁ、もうファイにも私たちの事は認めてもらったけどね。」


マリが、口を挟む。


「黙れ!小娘!!」


グールフの口調は怒りがどんどんと煮えたぎっていくようだった。

ファイとはもう親しい間柄のようにアピールするマリの口ぶりにイラついたのだ。


「・・・っ!ちょっとぐらい話を聞いてからでも私たちを判断しなさいよ。私たちが”人間”ってだけでその態度はないんじゃない?もっと理性を持ったら?”獣人”さん。」


マリは、怒りを極力抑え、冷静に指摘する。

今までの反省を踏まえていた。


メイヒールとキャアシーの視線がグールフに集まる。


「・・・・・・いいだろう。こいつらの顔に免じて今は従ってやろう。」


グールフは、メイヒールを見る。


「メイヒール。お前の失敗は、我が尻をぬぐう。・・・こいつらは我が殺す。我の体が完全回復するまでの間だ。」


「・・・・・・。」


グールフは、自分の状態が悪いから今は、従うと言わんばかりで、いずれルークド、マリ、ヤンの3人を殺すつもりなのを少しも隠そうとしなかった。


それを聞いてルークドは黙って、グールフを視界に捉えながら、タガーナイフを拾おうとする。

グールフは、ナタに手をかける。

一気にその場に緊張が走り、ルークドとグールフを止めようと、マリ、ヤン、メイヒール3人が戦闘態勢に入りかける。

2人を止めようとしたのだ。


「・・・よっ・・・こらしょっと。」


ルークドは、タガーナイフを拾うと、鞘にしまった。


「おぉ、そうだ。剣があっちに刺さったままだった。」


ルークドは、そう言うと、地面に刺さった剣を歩いて取りに行く。

ちょうど、グールフに背後を向けた。

その間、グールフはずっとナタに手をかけたままだった。


マリとヤンはアイコンタクトで意思疎通し、マリはルークドの後をついて行き、ヤンはグールフの傍につく。

その行動の目的は自明だった。

すぐに止められるようにするためだった。


「おい、なんだよ、マリ。ついてこなくていいぞ。」


「・・・。」


そしてルークドは、剣が刺さった位置につく。


「さっきからついて来て、ずっと監視するかのように見やがって・・・気持ち悪いぞ~。」


ルークドはマリを茶化す。


「・・・。」


「はぁ・・・反応なしかよ・・・。」


ルークドは、剣を引き抜くと鞘に入れる。

その間も、マリは真剣な表情で見ていた。


そしてルークドは、さっきの位置に戻っていく。


「・・・・・・。」


ルークドが戻ると少し間があった。


「よし、とりあえず、一致だ。あ~えっと・・・」


「あっ、メイヒールといいます。」


「メイヒール。俺は、ルークド。よろしくな。じゃあ・・・ゲンエイガハラ村に案内してくれ。」


「・・・はい、よろしくお願い・・・します。では案内します。」


一行は、ゲンエイガハラ村へと向かう。

道中、やはりルークドとグールフの2人だけは何か殺伐とした雰囲気で、その2人の存在によって一行の空気はピリピリと緊張感が張り詰めていた。

マリ、ヤン、メイヒールは、いつにもまして気が抜くことができず、ルークド、グールフが合流する前のなごやかな空気感は消えていた。

その緊張感の中、キャアシーだけは、タガーナイフを拾う時からずっとルークドをうっとりした目で見つめていたのであった・・・。



結果的にルークド、マリ、ヤンの3人はいろいろとあったが何とか合流し、ゲンエイガハラ村へと全員が足を踏み入れることができた。

さらには、ゲンエイガハラ村を保護下に置くという目的も一応達成できてはいた。

だが、それは村にとって重要な存在であるグールフという村民の反対を含む形で不完全な要素を残していた。


そして、ルークドたちが森に踏み入れる前から、ゲンエイガハラ村に踏み入れるまでの一部始終をホークという存在によって監視されるかのように見られていたのであった。































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