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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
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勇気なる膠着

ルークドを突き飛ばした人物・・・キャアシーの姿は、全身に渡って火傷の後や、すすがついていた。

それはキャアシーが、ルークドのバーンアウトによって延焼した森林火災を必死に抜けてきたということの表れだった。

抜けた後の足取りとしては、怪物かいぶつが通った後の荒れ模様や鳴き声の方向へ、そして最後は、湖で起こった轟音を聞きつけ、そこまでたどり着いたということだった。


「かかってこいニャ!!」


キャアシーは、ルークドを威勢よく挑発するが、その構えた状態の体の震えは止まらなかった。

ルークドがボロボロであるとしても、獣人であるグールフを倒したのは変わりなく、キャアシー自身、そんな強い相手に勝てる可能性はまったくないとわかっていた。

だが、少し前に門で起きた出来事、ファイが村を守るために、決死の覚悟でヤンに食らいつき、少しでも時間稼ぎをしようとした行動。

あの時の場面が、何回もフラッシュバックし、逃げようとはしなかった。


(我が輩は・・・誓ったニャ!今度は我が輩がみんなを守る番ニャ!)


そう心に言い聞かせると、震えが止まる。


「・・・!」


そして、その時ルークドが這いずってタガーナイフを手に取ると、起き上がった。

キャアシーを見ることなく、後ろに倒れているグールフの元に近づいて行く。

グールフは、その様子をずっと片目で見ていた。


キャアシーはそれに気づき、すぐにルークドの進行を止めるように前に立ちふさがる。


「ニャ!ダメニャ!!我が輩が相手ニャ!グールフは殺させないニャ!!」


「・・・・・・。」


だが、ルークドはまったく足を止めずにキャアシーを通りすぎて、グールフの元にノロノロと近づいて行く。

キャアシーの存在は認知していたが、まったく脅威ではないと無意識に判断していた。

言うなれば、ルークドにとってキャアシーは雑草と同じで、むしろ動くことができないグールフを今、早く排除しなければならないという頭の信号がでていた。


キャアシーはすぐに、ルークドの背後から前へと回る。


「食らえニャー!!」


キャアシーは、ルークドのタガーナイフを持っている方の手に猫パンチのような、攻撃とは思えないパンチを繰り出す。


パシッ!・・・キィン!


はたき落とされるような形でタガーナイフがルークドの手から地面へと落ちる。


「ニャ!?」


キャアシーは思わず、拍子抜けして驚く。

だが、そのおかげで自信が少し湧いてきた。


「まだニャ!もう一撃ニャー!」


同じようなパンチを、ルークドの顔に打ち込む。


ピチッ!・・・・・・ドサッ!


なんと攻撃を食らった数秒後にルークドは、膝をおとしてキャアシーに、もたれこむように倒れる。

腕は脱力のあまりキャアシーの肩に回り、それは抱きつくハグのような倒れ込みになった。

それは、キャアシーを驚かせるのを超えて、勘違いさせてしまった。


「・・・・・・ニャ・・・。」


キャアシーは赤面し、どうすることもできず、そのまま固まってしまう。

初めて人間に、そして初めて異性に、そんな行動をされて、いろいろな心が刺激されてしまっていた。

また、ルークドの戦いの後の、いい感じのやつれ具合、汗、汚れ、濡れた髪や服装が魅力を引き立て、さらに雨というシチュエーションが、心を躍らせた。


(か・・・体が・・・う、動か・・・・・・ねぇ・・・!)


恋心を感じていたキャアシーであったが、ルークドの体は遂に限界を迎えていた。

キャアシーの攻撃を食らってでも、キャアシーに抱きつこうとして、倒れ込んだわけではなかった。

体が限界を迎えて、歩くのはおろか、立つことすらできなくなってしまったのだ。

タガーナイフをはたき落とされたのも、そのせいだった。


「くっ・・・・・・!」


キャアシーを懐に入れた状態になってしまったルークドは、倒れているグールフを見つめる。

後一撃で終わらすことができるのに、体が石のようになって動かないことへのもどかしさに、ルークドは、歯を食いしばる。

全身に力を入れているつもりだったが、まったく動かすことができなかった。


うつぶせで倒れたまま動けないグールフとそんな状態のルークドは、お互い気迫を感じさせる目を合わせる。

殺伐とした空気が両者を包みこむ。


「グゥゥルゥルッ・・・!」


「クッソォォッ・・・!うっ・・・うご・・・け・・・!」


その両者にちょうど挟まれる形になったキャアシーは、その長い抱きつきに、変わらず赤面したままどうすることもできなかった。

キャアシーの勇気は膠着をもたらしてしまったのであった。














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