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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
82/280

獣人戦Ⅵ ~決着~

「スゥゥゥ・・・ハァァァァ・・・。」


ルークドは、その小さい湖の前でヴォルケーノソードを構えて、目を閉じて深呼吸をしていた。

集中力を極限まで高めていたのだ。


(・・・余力を考えると、これがあいつを倒す最後のチャンスだ。)


ルークドは、獣人との長い戦いによって消耗しきっており、自身でも全身で感じていた。

体も魔力もすでに限界を迎えており、ヴォルケーノソードが最後の力だった。


(・・・暴走的な力・・・理性を捨てたことによって得られた力か・・・。)


ルークドの頭の中に獣人の姿が思い浮かぶ。

それは剣士けんし思考しこうによる究極のシミュレーションだった。

究極の集中状態によって、もたらされるもので、それは訓練最終日のライネットとの真剣勝負以来に達したものだった。


スサアァァ・・・


風がそよいだ。



「グウオオオオオオオ!!!」


(来たか・・・!)


獣人の怪物の叫びが聞こえ、ルークドは、ゆっくりと目を開ける。

背後は湖で逃げる場所もなく、余力もほぼ残されていないルークドは、背水の陣でヴォルケーノソードを強く構える。

その時の目は何かを狙っているかのような目で、集中が凄まじかった。


「グウオオオオオオオ!!!」ドドッス!!ドドッス!!


ルークドに四足歩行で一直線に向かってくる獣人は、全身が炎に包まれていて、火の車だった。

延焼しているにも関わらず、その動きはトップスピードかつまったく変わらない激しさで、まるでさっきのバーンアウトのダメージをも、もろともしていないような俊敏性があった。

いや、それどころかバーンアウトを食らった刺激によって一段と凶暴性が増しており、炎に包まれたおぞましい姿も相まって、すごい迫力を見せる。


「来いッ・・・!」


ルークドはまったくひるむことなく、タイミングを計り続ける。


獣人を視界に捉えてから、わずか数秒で、どんどんと近づいてくる。


(まだだ・・・・・・ギリギリまで引きつけろ・・・。)


その次の瞬間には、距離がさらに縮まり、そろそろ危険な領域となる。


(・・・。)


だが、ルークドは何もアクションを起こさず、ただ獣人を捉えて構えたままだった。


「グウオオオオオオオ!!!」


獣人が接近し、ルークドに攻撃が仕掛けられる瞬間だった。


(・・・!)


ルークドの世界は音が消えて、迫り来る獣人の口を開け、牙でかみつこうとする動作がコマ送りのスローモーションで再生される。

その時、初めて、怪物化かいぶつかした獣人の攻撃が見えた瞬間だった。

そして、牙が体に入れ込まれる瞬間だった。


(今ッ!!)


ガッキィッン!!!ブウオオォォ!!


牙が残像のルークドを、切り裂き、獣人が口を閉じた衝撃で、火花と風圧が派手に発生した。

獣人のかみつきは空振りに終わったのだ。

そして次の瞬間だった。


「はあああああぁぁッ!!」


残像ではない実体のルークドは、獣人の背後に回り、ヴォルケーノソードで叩きつける。


ドオオオオン!!ズザアアアアン!!


ヴォルケーノソードを叩きつけられた爆発によって、獣人は、波を起こしながら吹っ飛び、大きい岩石が上空から落ちたような水しぶきを上げて、湖に鋭い角度で着水した。


「グウウ・・・グボォボォ・・グボォ・・・」


湖に落ちた獣人は、水中に落ちたことで、怪物化かいぶつかがその時、解除された。

ルークドは、そのことを知っていたわけではなかったが、まったくの偶然だった。

そして、そのまま、獣人は自身の重すぎる体重によって体内の酸素を泡にして吐きながら、底へ沈んでいく。

怪物化かいぶつかの反動で、意識がもうろうとしていた。


獣人を吹っ飛ばし、湖の中央付近へと落としたルークドは、すぐに桟橋まで、猛ダッシュする。

ルークドが、考えていた行動は今ので終わりではなかった。

ハイコング戦の時と同様に、理性がない魔物相手だからこそ効く、拙い残像で攻撃を誘わせ、その空振りに終わった末の一瞬の隙を突き、攻撃を当て、湖へと落とす。

さらにそこから繰り出す最後の一撃が本命だった。


ルークドは、桟橋に足を入れると、全身に力を入れる。


バギゴゴゴゴゴバキンッ!!ザアアアアァァン!!


ルークドのあまりの力強い踏みしめの走りに、通った後の木の桟橋がどんどんと崩れていき、水しぶきを上げて、着水していく。

一番桟橋の先まで見えると、歩幅を調整していく。


「はあああああッ!!」


そして、桟橋のギリギリのところから湖に向けて高く、雄叫びを上げながらジャンプする。

ジャンプと同時に、桟橋は完全に崩壊し、水しぶきが高く上げて沈んだ。

ルークドは、湖の水面から、8メートルぐらい上の高さまで達すると、ヴォルケーノソードを両手で持ち、剣先を水面へと向ける。


「アーースヴォルケーノーーーー!!!」


そこから一気に自分の体重もヴォルケーノソードに乗せて、ただ真下に落ちていく。つまり自由落下だった。

アースヴォルケーノのパワーは水をも切り、その落下箇所の水は渦巻き、穴を空かせた。


バギィン!!


落下した先の底へと、ヴォルケーノソードは刺さって地割れを引き起こし、その地割れへとすべての魔力のエネルギーがドクドクと流れ込む。


ドオオオオオオオオオン!!


大爆発を起こし、その湖全体が吹き飛んだ。

爆発の衝撃で溜まっていた水がすべて上空へと高く上がる。

湖の地形は、巨大隕石が落ちてきたかのような地形へと様変わりし、水はすべて干上がったようになってしまった。

小さな湖とはいえ、たった一撃でそのように変容させてしまうアースヴォルケーノの威力、規模の大きさが表れていた。



しばらくその箇所だけが、湖であった水が雨になって降りつける。

まるでゲリラ豪雨のようだった。

ただのくぼみとなった地形にルークドは、剣を刺したまま膝をついていた。


「・・・・・・。」


今の一撃で脱力感が溢れていたルークドだったが、大雨で視界が悪い中、遠くにうつぶせで倒れている獣人を発見する。

白い大きな巨体は、雨の中でも目立ち、瀕死状態で息を切らしていた。


ルークドは、刺さった剣をそのままに、タガーナイフを抜いて、フラフラの足取りで近づいて行く。

全身が濡れ、髪からも水滴が伝わる。

すでに、眼も戻っていた。


長い時間をかけ、獣人の元に近づく。


「グゥ・・・・・・ハアァァ・・・・・・」


獣人は、弱る声と吐息を吐きながら、ルークドを片目で何とか睨みつける。

その目は、激しく抵抗していた目だったが、体を動かすことはできなかった。

体の痙攣は、ナタを抜こうと試みている証拠であった。


「・・・・・・。」


ルークドは、その強烈な睨みと目を合わすことなく、タガーナイフを両手で持ち直す。

髪は、濡れて目に掛かって、淡々とトドメを刺す動作に入る。

ナイフ先端を倒れている獣人に向けて、腕を上げる。

・・・そこから振り下ろす!


だがその時だった。


「やめるニャァァ!!」


突如、西の方向から叫ぶ声がした。


「・・・!」


ルークドは思わず、動きを止めてしまった。

すると、速いスピードでどんどんとこちらに近づいてくる。

大雨が降り、意識も鮮明ではなかったルークドには、その正体がはっきり見えず、何なのかわからなかった。

ただ、ぼーっと見ていただけであった。


そして、その数秒後。


「グールフから離れるニャ!」


「ぐっ!!」


その物体は、ルークドに飛びかかりタックルのようなものをかました。


ドサッ!ドサッザアアァァ!!・・・キイィン!


油断していたルークドは、それを食らって、5メートルほど吹っ飛び、タガーナイフも落としてしまう。

すぐに上体だけを起こして、確認する。


一方、飛びかかった人物は、そんなルークドを上から見上げ、強気で構えて言う。


「ここからは我が輩が相手ニャ!!!」






























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