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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
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獣人戦Ⅴ ~怪物~

キャアシーが焼け野原に駆けつける前。


ルークドは、よろっとしながらも立ち上がった。

まだ、眼は炎の色をしており、ファイアーフィーストも解除されていなかった。

ルークド自身、まだ終わっていないと、その現場の緊張感から感じていた。

獣人との距離は、300メートルぐらいは離れているが、焼け野原になったその場所は、障害物がなにもなく、燃えている炎のおかげで明るいので夜にも関わらず、すぐに獣人の姿は確認できた。


「・・・なっ、なんだ!?・・・あれは・・・!」


ルークドは、獣人を見た瞬間、思わず戦慄せんりつしてしまう。

その獣人の姿は、眼光が鋭く光り、さっきまで戦っていたのとまったく違う、別の生き物のように感じるほど獰猛どうもうさを醸し出していた。

そして、次の瞬間だった。


「グウオオオオオオオ!!!」


その怪物のようなゾッとするような鳴き声が地面に大きく響く。

ルークドは、その瞬間、冷や汗が流れ落ちる。


そして獣人は、眼球がないような目でルークドを捉える。


「・・・!」


ルークドの危険信号が反射的に反応した。

戦うことだけは避けなければいけない存在と一瞬にして判断したルークドは、自然が生い茂っているほうへ全力疾走で逃げ始める。

森に逃げ込んで、視界から外れなければならないと思ったのだ。


ルークドが動き始めると、怪物化かいぶつかした獣人も、吐息を吐き四足歩行になると、予備動作なしで走り出す。

止まっているところから、そのトップスピードに達する加速度は尋常ではなかった。

姿を捉える、見えるといった次元ではなく、時が一瞬飛んだのかというような加速だった。


ドドッス!!ドドッス!!


眼光が線のように走り、荒々しさのあまり、獣人が通った後の地面は、ボコボコを超え、破壊されていたといっても過言ではなかった。


(・・・クソッ!!)


ルークドも持てるすべての力で走ってかなり速かったが、あっという間に距離は詰められ、ルークドが次に、顔を横に向けて獣人の姿を確認した時には、もうそこにいた。


ズドッン!!ブシイイィ!!


「ぐッッ・・うかッはぁぁッ!!」


獣人は、そのトップスピードで激突し、ルークドを森の方にすごい勢いではじき飛ばした。

その後も、まったく止まらず、飛んでいったルークドを捉え直し、ドドドッッズザアアァ!!と地面を削り、砂埃を舞わせ、トップスピードのまま方向転換し、走る。


(・・・なに・・がっ・・・。)


飛ばされて、地面に足をつくことができないルークドは、攻撃を受けたことすらわからず、その感覚は突然に事故にあったようなものだった。

全身にタックルを受けた痛みと、今さっきに切り裂かれたのか、腹の傷から血がイクラのような形で、空中に飛散していく。


ズッズズザアアアアアア!!


そして、森の中の地面に何十メートルも引きずる形でそこでやっと地に体をつけることができた。


「・・・うぐッ!くッ!」


ルークドは、常人なら死んでもおかしくはないほどの痛みを堪え、すぐに立ち上がる。

動きを止めれば、即死することは理解していた。

そして、すぐに、スモークスパークスを使う。

ほんの一瞬でも自分の姿を獣人の視界から消すのが目的だった。

人間相手ではなく危険種の魔物の相手をしていると想定しての行動だった。


ルークドは、すぐに森の深い方へと逃げ始めようとする。


「・・・!!」


だが、その時には獣人はすでに接近していた。

ルークドが、吹っ飛んだ距離を、立ち上がるほんのわずかな時間で追いついたのだ。


その時、ルークドは恐怖すら感じた。

黒煙の中に眼光だけが光る怪物がもう目の前に接近していたのだ。

獣人の吐息を感じた瞬間に、体が勝手に動いていた。


ブオオオオオオオン


両手からスモークスパークスをこれまでにないほど、放出し、黒い煙で覆い尽くす。

そして、森の奥深いほうへと逃げ始める。


走り出したら最後、止まることがない怪物を相手に、ルークドは、発煙筒のようにスモークスパークスを発動しながら、ジグザグ走行で、木を獣人との間に噛ましながらただただ逃げていく。

だが、怪物となった獣人にとって、木ですら障害物にならない。


バキンッ!バキバキバキ!!バキンッ!ズドオオン!!


獣人の体にぶつかっただけで、枝が折れるようにして簡単に倒木していくのだ。

いや、獣人が通っただけで、倒木していくといってよかった。

もはや、何が起こっているのかわからないほどで、接近だけで、砕かれ、切り裂かれる。

攻撃という概念を超えた、自然現象に近く、それが怪物化かいぶつかの力だった。


スモークスパークスを使って一瞬でも自分の姿を隠し、ジグザグに逃げて左右に揺さぶり、木を障害物として利用し、なんとか獣人のスピードを弱めようとする。

ルークドは、必死に振り切ろうとするが、すべて気休め程度にしかならなかった。

森に入ってからのチェイスはすぐに終わりを告げた。


「・・・!!」


気配を感じ、後ろを振り返って、ガードしようと思ったときには遅かった。


ドウオオォォン!!プシュツツッ!


「・・・ガッ・・ぐッ・・・!」


強烈な衝撃と、胴体にえぐられた傷が入り、ルークドは大きくふっ飛ばされた。


(クッ・・・ソオッ・・・!)


慣性によって、しばらく空中を移動する。

ファイアーフィーストである手を纏っていた炎もガス欠するかのようにボッボッボボッと途切れ途切れに燃えていた。

魔力枯渇の兆候だった。

だが、その魔力枯渇寸前の状態はルークドのかすんでいた意識を鮮明にさせ、不思議と力がわき上がるものにする。

鞘の中の剣が炎の色に発光し、ルークドの眼も発光する。


(・・・・・・最大の攻撃を出せるのは今、この時しかねぇッ!!)


ルークドは空中で受け身を取り、吹っ飛んだ先の木に両足をつけて、激突を防ぎ、体勢を整える。

そこからスタッと地面に着地する。

視線を前にやるとすでに獣人が接近していたが、ルークドはやるしかなかった。


(どうせ魔力枯渇するなら、最後は派手に・・・ッ!!)


「・・・バーンアウトオオオォォ!!!」


すると次の瞬間、ルークド自身が燃える芯のようになって、全身に炎を纏う。

そしてそこから、炎が波紋のように大きく広がっていき、獣人に向けて、熱風と共に炎が勢いよく、燃え移る。

まるで炎が意思をもったように独立して動き、対象に燃え移るかのようだった。

その炎の勢いは、動きが止まることがない怪物化かいぶつかした獣人すらも、押し返すほどで、炎の向かい風といえた。


数十秒ほど、その状況は続き、森を瞬く間に、炎に包んだ。

次々と延焼していき、さらには、その地点までにまき散らしていたスモークスパークスにも引火し、とてつもない規模になった。

もはや、押し返されていく獣人の姿も確認できないほどの延焼具合だった。



「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


そして遂に最後の一滴まで絞るようにしてルークドの魔力は枯渇し、バーンアウトは終わった。

息を切らし、ルークド自身、体に軽い火傷を全身にしており、自身すら削る魔法だった。

ルークドの位置から近い順の木は灰、木枯らし、延焼状態、そして遠くの方は森林火災になっていた。


「・・・・・・。」


ルークドは辺りを確認していると、森林火災とは反対側に小さい湖を発見する。

湖というには小さすぎるが、池というには大きいぐらいで、例えるなら学校のグラウンドほどの大きさだった。桟橋も架かっており、とても自然が綺麗な場所だった。

ゲンエイガハラ村のレジャー施設の一部だった。


その場所に近づくと、水に頭を突っ込む。

フラフラの視界を、目覚めさせるためだった。


「・・・プハッアアー!」


水面に映る自分の顔を見る。

まだ、眼は発光していた。


(あの怪物は・・・まだ生きている・・・!)


ルークドは、さっきの一撃で終わったとは思っていなかった。

怪物化かいぶつかした獣人の力を侮りはせず、集中力を切らさない。

そして、鞘から剣を抜く。


「まさかお前もそう思うのか・・・。」


剣を抜いた瞬間に、待ってましたといわんばかりに発火しヴォルケーノソードになったため、ルークドは驚いて思わず、剣に話かけてまった。


ルークド自体は魔力枯渇を起こしていたが、バーンアウトによって魔力を蓄えた剣はヴォルケーノソードになったということだった。

魔力枯渇をしてもなお、戦える力が発揮される・・・ルークドはまったく気づいていないが、それは没落フォールン騎士ナイトの力によるものだった。





















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