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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
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獣人戦Ⅲ ~反撃~

ルークドは顔を下に向けたままゆっくり立ち上がる。

獣人も地面に突き刺さったナタを引き抜き、構えて警戒する。

さっきまでと違うルークドの異変のようなものを本能的に感じ取って、ずっと視界に捉える。


(何を考えている・・・。)


そこで獣人が見たのは立ち上がったルークドが片手の剣を鞘に収める姿だった。



(これか・・・イーサンの言ってたことってのは・・・。)


ルークドはファイアーインパクトを食らった衝撃によるものなのか頭がさっきよりも一段と冴えていた。


(そうだ・・・装備しているからといって必ずしも剣を用いて戦う必要はない・・・。武器はあくまでひとつの戦闘手段に過ぎない。

目的は目の前の敵を倒すことだ。相手にとってもっとも効果的な手段を取れ。)


立ち上がった後、ルークドはそう考えて、自分に言い聞かせるようにすぐに剣を鞘に収める。

両手は手ぶらになった。


(それにこいつ・・・別にスピードが速いわけじゃない。規格外の体格、ただそれだけだ。何を恐れる必要がある・・・。)


ルークドは、ここまで苦戦した要因を分析し突き止めた。

パワー、魔法、ではなく苦戦した理由はただ体格の差だった。

つまり大人と子供の差、それがもっとも激しいギャップを生み、ルークドの剣を鈍らせた正体だった。

そのことがわかったルークドは、緊張が解け、拳を強く握りしめる。


「・・・・ハハハハッ。」


ルークドは武者震い的な笑いをしながら顔を上げ、獣人を見る。

目も笑っており、今までの圧倒されていたルークドと雰囲気が違っていた。


その笑ったルークドを見た獣人はただ、困惑するしかなかった。


(・・・!頭がおかしくなったか。)


「その恐怖すら悔いるがいい!人間よ!!」


そして獣人は、大きい歩幅でルークドとの距離を詰め、一撃で終わらせるかのような力を入れて片方のナタを斜めに入れる。

その時の攻撃は振った後の衝撃が見えるほどだった。

スパンッ!と棒立ち状態だったルークド・・・ではなく、背後の木が切断された。

そこまで一瞬の出来事だった。


「・・・・・・遅え。」


「・・グゥッオォッ!!」


獣人の腹に強烈なボディーブローが入り、あまりの重い一撃に獣人の口からよだれが大きく飛び散った。

そしてルークドは腹の内蔵にめり込ませた拳をちょっとだけ隙間を空けるように離すと、そのまま手の平を広げる。

そして息つく間もなく、その超至近距離からファイアーインパクトを放つ。


獣人の腹にファイアーインパクトであるエネルギーの球体がめり込み、そのまま後方へ飛ばされる。

なんと爆発せずにそのまま加速したのだ。

それはちょうど飛んできたボールに当たった物体が、そのまま止まることがないボールに動かされているかのようだった。

バキバキバキ!と次々、獣人の背中に木がぶつかって折れていく。

その状態でルークドからかなり距離が離れた時だった。


「!!」


飛ばされながらも気づいた獣人だったが、もう遅かった。

追撃のファイアーインパクトが目の前に迫ってきたのだ。


ドオオオオオオォォン!!!


爆発音が炸裂し、爆心地の木々がバラバラになって、風圧と衝撃がルークドの立っているところまでにも伝わり、木々が揺れた。


ルークドはその風圧に耐えながらも、手応えを感じていた。

だだ、黒煙の中をただじっと見つめて、集中を切らさなかった。


一方、黒煙の中で倒れていた獣人は、すぐに立ち上がり、ドスンドスンと歩きだす。

ファイアーインパクト2発分のダメージを負っていたが、さすがの頑丈さだった。


「グッゥゥゥゥゥゥゥッ・・・!」


だが、少しいらだちを露わにするように牙をむき出しにして、顎に力を入れる。

それはウルフの威嚇そのものでさっきまでと違い、興奮状態と言えた。

あの瞬間にナタを避けるルークドの姿をまったく捉えることができず、そして初めてルークドに押されたことに対して苛立っていた。

そんな怒りの状態で獣人は黒煙を抜けた。


「やっぱ2発直撃程度じゃ・・・決めきれねぇか・・・。」


黒煙の中から現れた獣人を見て、ルークドはボソッと呟いた。

そして両手の手の平を見る。


「だが・・・(これならいける)!!」


あえて剣を捨て、素手状態になることで回避に専念するというルークドの考えだった。

そのおかげで観察にも集中が上がり、獣人の動きを読むことが可能になっていた。

さらに両手が空いたことで魔法の連発が可能になり、魔法による攻撃の継続性、瞬間火力の向上で新たな自分の可能性を感じていた。

今まで積み上げた物から新しい物が生まれた瞬間だった。


(でも・・・さすがに素手は何か物足りないな。)


「燃えて砕け・・・ファイアーフィースト。」


すると炎がルークドの手の平を包み、そのまま纏う。


「いい感じだ。」


そして構えて獣人を捉える。


「んじゃあ・・・反撃・・開始ッ!!」


そこから獣人とルークドの戦闘は一段とハイスピードに激化し始める。


「ファイアー・・インパクト!!」

「サイクロン・・・ブレード!!」


お互いにやや離れた距離から魔法を繰り出す。

両者の魔法はさっきよりも速く、威力が増しており、高速で相手方に飛んでいく。


ドッフォオオオオオン!!


お互いの魔法がぶつかり、激しい衝撃と風圧を発生させ、煙幕が辺りを包んだ。

その煙幕が発生した時、ルークドはすでに2発目のファイアーインパクトを繰り出していた。

それは高速で煙幕の中を通過し、獣人に向かう。


暴風ウインドストームアイ!!」


だが獣人もそのスピードに対応していた。

風が獣人中心に舞い始め、防御し始める。

2発目のファイアーインパクトは風によって打ち消されていく。


ルークドはその行動を予期していたかのように、次のファイアーインパクトを両手に溜めていた。

そして2発目が打ち消されたとほぼ同時に放つ。

今度は両手分まとめて2発放つ。

2つのエネルギー球体が獣人に一直線。


「・・・なんだとっ!!」


獣人はさっきよりも狭まった間隔、短くなった溜めに驚かざるを得なかった。

暴風ウインドストームアイでただ防ぐしかなかった。


さらにルークドは2発のファイアーインパクトを放った後、すぐに両手を重ね合わせ、溜め動作に入る。


「フレイム・・・インパクト・・!」


すると、ルークドの手の平にファイアーインパクトを超える高密度のエネルギーが球体状に溜まり出す。

それは両手だからこそ発動できるものだった。

さらにファイアーフィーストで手が燃えている状態だからこそ、そこまでの魔法の連発が可能といえた。


「はああああっ!!」


そして溜まりきったフレイムインパクトを放つ。

球体は大きく、見かけからもかなりのパワーであることは明らかだった。


暴風ウインドストームアイで2発のファイアーインパクトを消し去ったと同時だった。


「・・・!!!」


獣人はその迫るフレイムインパクトに圧倒される。

やはり、続けて暴風ウインドストームアイで防ぐしか手段はなかった。


「うおおおおおっ!!!」


獣人が雄叫びを上げて、何とかフレイムインパクトを防ごうとする。

だが、その威力は凄まじく暴風ウインドストームアイを超えるほどだった。


ドオオオオオオオオオン!!


大爆発が起こり、軽くその周囲20メートルほどは消し飛び、黒煙が包んだ。

その一撃にして一瞬で、更地さらちにしたのだ。

暴風ウインドストームアイのおかげで直撃ではなかったが至近距離で爆発したため、かなりのダメージを獣人は受けてしまっていた。



「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」


ルークドもさすがにこれまでにないほど、魔法を連発し、息が切れていた。

だが、そのごり押しによりいつしか形勢逆転していた。

それでも集中は切らさず、黒煙の中にいるであろう獣人を捉えようとしていた。

そして少し時間が経った後、獣人の姿が見えた。

獣人は仰向けになって、大きく肩を動かして息をし、白い体毛はボロボロで、至る部位に血がべっとりとついていた。

普通なら死にかけ間近の姿に見えるが、その獣人が並々ではないことをルークドは十分理解していた。


(起き上がった・・!)


震える足で獣人は立ち上がる。

脇腹を押さえて体勢が傾いて、頭からも流血しており、目の辺りまで血が掛かっていた。


「グッゥゥゥゥゥッ・・・!」


そんな目でルークドを威嚇するように、睨みつけると2本のナタを鞘に収める。

ルークドは冷静な表情で獣人と目を合わす。


「・・・お前を・・ここで殺すためなら、我の僅かばかりの人をも捨てよう・・!」


ルークドはその獣人の異変を察知して警戒する。


獣人は空を見上げるように姿勢を正すと、体を大きく広げて全身を力ませる。

すると、全身の体毛が逆立ち、爪や牙がより鋭くなる。

そして、夜空に向かってウルフそのものの遠吠えを上げる。


「クゥオオオオオオオオオオン!!」


二足歩行で遠吠えを上げる姿は狼男のようだった。

そして、それは獣人が僅かに持っている人を捨て始めた瞬間だった。










































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