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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
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獣人戦Ⅰ ~遭遇~

夜になったばかりのころ。


「予想以上に険しいな・・・。早くしねぇと・・このまま1日中、さまようことになってしまうぞ・・。」


ルークドは歩きながら1人孤独に呟いた。


ルークドはハイコングをなんとか退けた後、そのまま目的地であるゲンエイガハラ村に向かって、森を進み続けていた。

地図とコンパス、感覚を頼りに迷うことなく順調に進むことができていたが、進めば進むほど険しいルートになっていき、それはルークドの到着予測を大幅に乱していた。

今までの森と違い、環境的な厳しさに加え、魔物との遭遇率がどんどん進めば進むほどあがっていくのだ。

遭遇の度に蹴散らしては進み、蹴散らしては進みといった進行速度で進むしかなかった。


(もう夜だが・・この辺りは休めるような場所ではない。得策とはいえないが、とりあえず今は進むしかない・・!目的地も近いはずだ。)


秘密の抜け道を通ってたどり着いたマリ、川に沿るルートでたどり着いたヤンに比べてルークドのルートは明らか厳しかった。

そのルートはゲンエイガハラ村までの最後の砦のような森で、そこまで到達できた侵入者の森の強さを逆に利用し、侵入者が誘導されるルートだった。

森に強く、迷うことがないルークドだからこそ、その防御機構にまんまとハマり、2人と違ってたどり着くのに一番、苦戦を強いられる結果になってしまっていた。


(なんだ・・この地響くような音は・・・。)


ルークドは何かが聞こえ、足を止める。

その音は、一定のリズムでどんどんとルークドに近づいてくる。

まるで獣が走っているような音だ。

それも今まで歩いてきた道、つまりルークドの背後から聞こえていた。


ルークドは目を閉じて、聴覚を集中させる。


(音が消えた・・・・・違う!上だ!)


そう気づいて、すぐに目を開けて上を見る。

暗さではっきりとはわからないが視界に映ったのは大きな体格のウルフだった。

そのウルフはルークドの上を飛び越えると、ルークドの進行方向に二足歩行で着地し、立ちふさがる。

着地の瞬間、ドスンと地響く音を立てた。


ルークドは、その二足歩行の状態を見て、自分を飛び越えていったのはウルフではなく獣人であると、その時初めて理解した。

それと同時のことだった。

獣人は硬直なく大型ナタ2本を抜き、躊躇なくルークドに襲いかかる。


「・・!!」


ルークドも咄嗟に反応し、剣を抜きガードする。

ガキン!!と大きな音を立て、火花が発生する。

だが、その突然の攻撃にガードの体勢が整わず、ナタと剣が打ちつけた瞬間、ルークドは圧倒的な力に弾かれるようにして大きく後ろへ吹っ飛んだ。


「ぐっ!!」


砂埃を発生させながら瞬時に受け身をとるが、突然のことに頭がまだ追いつかなかった。

そして顔を上げた時だった。


「サイクロンブレード!!」


獣が混ざった低い声とほぼ同時に、渦巻いた風が飛んでくる。

その攻撃は、風がビュンビュンと厳つい音を立て、物体を切断するかのごとく渦を巻いており、円盤のような形で真ん中は空いていた。

中心がないフリスビーの形といってもよかった。


ルークドはほぼ反射的に反応する。


「っ!!」


サイクロンブレードはズッスゥン!!と勢いよくルークドの頬をかすめた。

かすった頬は、出血する。

もうちょっと反応に遅れ直撃していたら、重傷あるいは下手をすると即死といってもいいぐらいの威力だった。


(今のはっ・・!!)


ルークドは今、何が自分を切りつけたのかはっきりとわからず、それを確認するために後ろに振り返り視認を試みる。

だが、見えたのは木々が次々とヅシュン!ヅシュン!と音を立て、切断されていく光景だった。

最終的には数本が切断され、倒木した。

それだけを見ると、すぐに前を向く。

風の属性による魔法の攻撃であるのは明らかだったからだ。


そして、そこでようやく頭が追いつきルークドは戦闘状態すなわち集中状態に入り、剣を構える。



(今のを避けるか・・!)


獣人はそう驚き、少し固まっていた。

なにせ今のサイクロンブレードで決まったと確信していたからだ。


(だが、こいつだ。こいつで間違いない。)


獣人は、ルークドがハイコングを退け、ゲンエイガハラ村に向かおうとする侵入者の正体と認識する。


「おい、お前!!ここで死ね。」


獣人は侵入者であるルークドにそう呼びかける。

ルークドは、その呼びかけに闘志をむき出しにして応える。


「おい、随分と口が悪いじゃねーか。・・・・・ウルフは黙って、ハンバーグにされとけ!」(この体格、魔法、声を発する・・・間違いない。学科で聞いた通りの獣人だ。ここにきていきなり獣人に襲われるとはな・・。だが、とりあえず倒して進むしかない・・!)


「我はウルフなどではない!!」


獣人は挑発される形で、ナタを両手に持ちルークドに向かう。

その圧倒的な体格と獣の発達した筋肉から発せられる動きは、どでかい歩幅を生み、ルークドとのわずかの距離を一瞬で詰めた。


(くっ!)


ルークドは、その経験したことがないすべてが大きい動作に避けるのが遅れ、振り下ろされた大型の2本のナタを剣でガードしてしまう。

ガキイィンと音を発生させ、鍔迫り合い状態になった。

だが、お互いの力が拮抗するというよりも、ルークドが上から押しつぶされるような形の鍔迫り合いだった。

獣人の大きい体格はルークドを、地面に埋め込むように押しつける。

ルークドは思わず、握っている持ち手だけでなく、もう一方の片手で刃の部分を掴んで支え堪える。


「くっ!ぅぅぅっ!!」


ルークドは歯を食いしばる。

キキキィィッという音と火花が発生する。


だが限界を向かえ、ナタは剣を振り切るように、叩き切り下ろされる。

ルークドは、その衝撃により押し出されるように後ろへ吹っ飛び、今度は受け身を取れなかった。

ガードした時の摩擦により、ルークドの剣のナタを受け止めていた部分には、煙が発生していた。


(こいつは・・・強敵だ・・!)


ルークドは自分が初めて力負けをしていることをその時、実感したのだった。




















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