間一髪
「~で、ここまでがキングテレトリーの現状で・・・」
マリはキングテレトリーの今の”現状”から、メイヒールに説明をしている最中だった。
メイヒールも真剣に聞いており、お互いの立場、情報をすべて共有するかのようだった。
「で、私たちキングリメイカーはその分裂した・・・」
「お話の途中すいません。なんだか外が随分と騒がしいような気がします。ちょっと見てきてもよろしいでしょうか・・?」
「・・えぇ・・別にかまわないけど・・。」
「ありがとう。すぐに戻りますので。」
そう言うとメイヒールは急いで、扉を開けて出て行った。
(どうしたんだろう・・・急に。)
1人家の中に残されたマリは、急にメイヒールの表情が不安げになったことに困惑したがとりあえず待つことにした。
外から来たマリは何も感じなかったが、その時メイヒールはいつもゲンエイガハラ村にいるからこそ、察知できる異変を感じていた。
そして5分ほど経った後だった。
勢いよく扉が開いた。
突然のことだった。
「ハァ、ハァ、ハァ、・・・ハァ、ハァ、た、大変です!マリさん!」
「そんなに息を切らしてどうしたの!?」
尋常ではないメイヒールの慌てぶりに、マリは驚くしかなかった。
「今すぐ門まで来てください・・!!」
門の前にいた住民たちはみんな逃げ、ヤンとファイだけになっていた。
(遍・・!!)
ヤンは首を絞められている状態から遍を使い、ファイの脇腹へ肘鉄を食らわせる。
「ぐぉぉっ!!」
ファイはダメージのあまりヤンを放してしまい、後ろへ2、3歩下がると、膝をついてしまう。
ヤンは解けたと同時に、後ろを見て、自分を絞めていた相手を確認する。
(・・・起き上がれない程度に回復させたはずだが・・・まさか動けるほどまでになるとはっ!)
ヤンは闘気修応活の調整を間違えたわけではなく、あの微量の修で瀕死の状態からここまで復帰するファイの生命力の強さに驚いた。
だが同時にヤンの中に心変わりが起こったのであった。
「名前は・・・ファイと言ったか・・。」
あの時の、キャアシーの叫びをヤンは聞いていた。
膝をついた状態のファイに続けて話す。
「ファイ殿。あなたの強さは十分わかった。しかし、拙者には果たすべき目的があるのだ。何度も立ちふさがるようなら、次こそは覚悟を決めてもらうぞ!」
ヤンはとても気迫のある目でファイを見る。
それはファイを武闘家ではなく、初めて敵とみなした瞬間だった。
生かしておくと、何度でも自分を追ってきて、自分の身に危険が及ぶとそこで判断したのだ。
そんなヤンの様子の変化を感じたファイはニヤリとして、口に溜まった血をタンみたいに吐くとゆっくり立ち上がり、構える。
「随分と舐められたものだな・・。やっと本気とは、遅すぎるぐらいだ・・。」(俺に意識が向いたか・・ここから少しでも時間を稼ぐんだ・・!あいつらが逃げられるように!)
ファイは自分の最後の役割を言い聞かせながら覚悟の目でヤンを睨む。
ヤンもそのファイに応えるように構える。
「こんな形で会っていなかったらきっと良き友になれたのであろうな・・・・仕方があるまい。ではいくぞ!」
そしてそれを合図にヤンとファイの第3回戦のゴングが鳴った。
「パスド・・・」
「遅い!」
ドスッ!!
「ぐっ!くはぁっ!!」
ヤンはファイのパスドストレートが出る前に瞬を使って、間を詰め鳩尾に正拳突きを入れる。
ファイはその速さに姿を捉えることも、防御することもできず、まともに食らってしまう。
大きく吐血した。
その一撃が決定打でファイはフラフラとなり、意識が飛んだ。
だがそれでも体の反応だけでなんとかヤンに攻撃を試みる。
脱力し、酔っ払いのようなおぼつかない動きで、回し蹴りやパンチを繰り出す。
だがあまりにものろく、ヤンは少し体を反らす最小限の動きだけで避けていく。
(もう・・もはや気力だけで動いている状態か・・。)
どんどんファイの動きのキレはなくなっていき、最終的にパンチも腕をぶん回しただけの攻撃になっていた。
ヤンも攻撃はせずヒョイッと避けるばかりであり、ヤンの最初の正拳突きで、もはや終わっていたといっても過言ではなかった。
(拙者がなにもせずとも・・・。)
そして1分間ほど、まるで殴られ屋であるヤンが、ファイである素人の攻撃をただ、避け続けるような状況が続くと、遂にファイの動きは止まり、棒立ち状態になってしまった。
目は開いておらず、立ったまま、気絶していた。
ヤンはそれに剛の赤色の闘気を出しながらゆっくりと歩いていく。
立ったままのファイにトドメをさすためだった。
「闘気打衝・・なにっ!!」
ヤンが闘気打衝を繰り出そうとした時だった。
ヤンの腕が凍りだし動かなくなっていく。
「魔法・・・!!」
(魔法を使えたのかっ!!・・・だがっ!!この魔法はまるでマリ殿の・・!!)
ヤンの体の動きを止めた突然の氷の魔法はマリのコールドフリーズだったのだ。
そしてその時だった。
「ストップ!ストップ!スト~ップ!!」
ヤンを制止する大声を発しながら、人影は割り込むようにファイと、ヤンの間に滑り込んだ。
「・・マリ殿!!」
その人影の正体はマリだった。
ヤンとファイの間に間一髪入り込んだマリは、顔を上げる。
大量の汗をかいて、息切れを起こしていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・なんとか・・間に合った・・感じ?」




