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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
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そして大きなことへ

ヤンが門をぶち壊した音で村民たちは一気に集まってきて、野次馬ができ始めていた。

広大な敷地のゲンエイガハラ村といえども、音はそれなりに中まで聞こえたようだった。


ヤンは砂埃を抜けると集まり始めている村民たちの前に立つ。


(・・・・これは一体っ!!)


ヤンは村民たちの姿に驚く。

抱いた思考はマリが初めてゲンエイガハラ村に入って村民たちを見たときとまったく同じだった。


両者唖然として、その場の空気は固まってしまう。

ヤンはなんとか、冷静に目の前のことを捉えようとしていた。


(・・・・いや、聞いたことがある。魔物の特徴を持つ人間だけが暮らす場所があることを・・。もしやゲンエイガハラ村がその場所なのか・・・。)


そう考えながら村民たちの姿を見ていた。


一方、村民たちは突然門を破壊して現れたヤンに驚きを隠せず、ただ突っ立ていることしかできなかった。

門を破壊され、外の人間がゲンエイガハラ村に足を踏み入れたというのがあまりにも現実離れしていたのだ。

今まで門を破られたことは無く、安寧に暮らしてきたということで、信じることができなかった。

緊急事態ということがわかっていても、反応できなかったのだ。

それは女の子座り状態のキャアシーも例外ではなかった。


「ニャ・・・。」


口をポカンと開けて、ただ悪魔のように見えるヤンを見ることしかできなかった。

言葉を失っていた。


そしてそんな奇妙な間が少し続くと、砂埃がまだ残るヤンの後ろに人影がぬっと現れる。

そして勢いよくヤンの背後から*スリーパーホールドをかけ、首を絞める。


「ぐっっ!!」


ヤンは不意を突かれ、絞められてしまい、なんとかほどこう苦しそうに抵抗する。


その人影はヤンを絞めながら、棒立ちの村民たちに向かって叫ぶ。


「早く、逃げろ!!こいつは侵入者だ!!」


その声は、さっきまでヤンと闘っていたホモゴブだった。

そのホモゴブの声にハッと村民たちは我を取り戻し、一目散に逃げ始める。


「侵入者だーーー!!!」「逃げろーーーーー!!」「きゃあああああ!!侵入者よ!!」


各個人がそう叫びながら、門とは反対側であるゲンエイガハラ村の奥へと逃げ始める。

そして同時にキャアシーも我を取り戻す。


「ファイ・・ニャ!!」


ホモゴブに向かってそう叫んだのだ。

ファイ、それはホモゴブの名前だった。


「キャアシーお前も逃げろ!!そしてメイヒールに伝えろ!!ここは俺がなんとか時間を稼ぐ!」


ファイは覚悟の目でキャアシーに伝える。


「わ、わかったニャ!!」


キャアシーは四足歩行になって滑るようにUターンし、メイヒールの家に向かう。

ちょうどさっき走ってきた道を戻る形だった。


一斉に逃げ始めた光景は、パニックそのものだった。

走っている途中、キャアシーは涙が溢れ、粒が風となって飛んでいく。

一連と続く出来事にキャアシーのすべてが追いつかなかった。


「どうしてニャ!どうしてニャ!どうしてただ、平和に暮らすことさえできないニャ!!どうしてニャアアアアアアアア!!!!」


溢れんばかりの感情が爆発する。

そしてその時だった。


「うっニャアアアア!!・・・ニャッ!・・ニャッ!」ズザアアァ・・


体が絡み、つまずいて放り投げられるように転び、地面に2回打ちつけ、ひきずる。

擦り傷となり、血が流れ出す。

起き上がろうとしても、ショックのあまり体が言うことを聞かず、完全なパニック状態のあまり震え出し、涙が止まらない。

スーと頬を流れ、地面に落ちる。

その目は完全に光は失われていた。


(死にたくないニャ・・・死にたくないニャ・・・まだ・・死にたくないニャ・・・・・・・。)


転んだままのキャアシーはそのまま失神してしまう。



「・・・ということです。」


「ふーん、なるほどね。そういうことだったのね。」


メイヒールはゲンエイガハラ村のことをすべてマリに伝え終わった。

キャアシーのことが心配だったため、とりあえず簡潔にだけ伝えた。

マリは聞いた内容を振り返るように整理する。

メイヒールが話した内容はこうだった。


ゲンエイガハラ村は魔物の特徴を持つ人々だけが暮らす村で、自給自足で生活している村である。

昔から魔物の特徴を持つ人々は、その外見から差別対象になり、人身売買で奴隷や、食材にされるのが常だという。

なので先祖たちがそういったものたちでも平和に暮らせるようにと作ったのがこの村で、キングテレトリー中からそのものが噂を聞きつけ集まってくるという。

だが中には、それを聞きつけた人間がこの村にやってくるため、たどり着けないようにメイヒールたちが警告し、追い返してきたのだ。

それはルークド、マリ、ヤンの3人も例外では無く、昨日の昼間の昼食時に弓矢を放ったのはそのためで、決して最初から殺すつもりはなかった。

そして村との近い位置にある洞窟や温泉、小屋などはすべて村のレジャー施設で、マリたち3人がそこまでたどり着いてしまった。

だから村の安全を考えて、殺すという選択しかなくなり、まず1人で温泉に入っていたマリを襲った。

だがメイヒールはマリの強さに危機を感じ、村を守り通す自信をなくした。

マリの保護下という言葉を思い出し、村に案内したという。

いい組織なら保護下にいれてもらおうと思ったのだ。

これがすべての全容だった。


マリは整理すると残った疑問を聞く。


「今までメイヒール1人で守っていたの?」


「いえ、門番にファイと森の巡回にグールフと私の3人がおもです。戦えるぐらいの強さは私たちだけでしたから・・・。村のみんなは生活面で助けてくれました。」


「私たちがここにくるまで、魔物が随分と襲ってきたけど、あれは?」


「この土地の持つ不思議な力で、なぜかゲンエイガハラ村を守るようにして動いているのです。私も理由はわかりませんが・・・・。」


マリの頭にすべての情報が揃い、少し考えていた。


(もしかして・・・ノルスさんたちは最初からこのことを知ってて・・・)


すると、メイヒールは神妙な表情で話す。


「私たちは人間と魔物という異種間の交配によって生まれたタブーの存在です。比較的広く知られているエルフや獣人もその仲間です。あなたを殺そうとした私はどうなってもかまいませんから、村のみんなにはどうか居場所をっ・・!!」


メイヒールがそこまで言った時だった。


「最初から保護下に置く目的でやってきたんだし、もちろんそのつもり。そういう事情だって知ったら私を襲ったことなんて別に気にしないわ。」


「ありがとう・・!」


メイヒールは一番表情が明るくなった。

緊張の荷が下りたという感じで笑顔を見せた。

だが反対にマリはしょんぼりとした表情を見せる。


「ただ・・・私、キャアシーにひどいことしちゃった・・。許してくれるかな。」


マリは罪悪感を感じていた。

生まれながらに持つ特徴に対して怒ってしまったからだ。

理不尽な行動であったと自覚していた。


「大丈夫です。昨日戦っていた私たちが今日はこうしてわかりあえたのですから。キャアシーもわかってくれるはずです。」


マリはメイヒールの顔を見る。


「そ、そうね。」


「まだ聞けてなかったのですが、お名前は?」


「あぁ、そうだったわ。私はマリ、よろしくね。」


「マリさん!こちらこそよろしくお願いしますね。」


マリとメイヒールの生まれた信頼はキングリメイカーがゲンエイガハラ村の保護下の承諾を取り付けたといってもよかった。

ただ、それはまだ2人の間だけだった。


「そんじゃあ、私たちのことについて話すね。私たちの本部はキングリメイカーって言うんだけど・・・」


マリはメイヒールに向けて、話だす。


門より遠いところにあるメイヒールの家ではあるが、着々とパニックの波はそこまで近づいて来ていた。

















*--プロレスや総合格闘技で使われる技の名前。絞め技。

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