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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
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待ち伏せ

ヤンがゲンエイガハラ村の門にたどり着いた昼。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・ハァ・・ハァ・・・・」


マリは走り続けて遂に地下通路の一番先、つまり出口のところまで来たのだった。

地上に上がるための、はしごがついていた。


マリは息を整えて、はしごに足をかけ上っていく。


カン・・コン・・カン・・コン・・・。


はしごを上る音が響く。

出口部分は四角い重い石版のようなもので塞がれていた。


(おそらく・・。)


マリは、片手をはしごから離して、メイスを持って勢いよく石版を先端で叩く。

ちょうど下から突き上げた形だった。

石版は上に、大きく飛んで外れ、これで地上に上がることが可能になった。

そしてマリは、はしごに掛けた状態からジャンプして地上に出る。


(想像してた場所と違うわね・・。)


メイスをしまいながらそう思う。

マリが地上に出た場所は牛舎のような場所で、いろいろな農具や刈草などが置いてあった。

動物や人はぱっと見、いなかった。

マリは、とりあえずゆっくり歩いて出口に向かう。


10歩ほど歩いた時だった。

足に何か触れ、プチッと細い糸が切れる音がした。

そしてその次の瞬間に、細い糸が切れるのと連動するように縄がマリの足へグルッと巻き付くように引っかかった。


(・・!!)


その縄は上に引っ張られるように動き、マリはそのまま、逆さ吊りの体勢になって高く引き上げられていく。


(罠!!)


だがマリの反応も速かった。

高く引き上げられる前にアイスクルを使い、即座に縄を切る。

縄が切れるとクルッと回って、地面に足をスタッ!と着地する。


着地とほぼ同時だった。

積まれた刈草の影から人影がサアァ!と音を立て出てくると、振り向く寸前のマリを背後から襲うように掴んだ。


(・・しまったっ!罠は囮!!)


マリは気づいたがすでに遅かった。

抵抗する間もなく、その人影に体を強く掴まれて拘束されてしまった。

人影は締め付けるように片手をマリの体の前に回していた。


「動かないで!」


その人影はもう一方の手でマリの首にナイフを突き立てる。


マリはその声に聞き覚えがあった。

あの女エルフだ。


マリは、女エルフに体を強く密着させられ、足を絡めさせられために少しも動くことができなかった。

またナイフを首に突き立てられ、どうすることもできなかった。

動揺して汗をかきながら、横目でなんとか女エルフを見ようとする。


「どう、昨日はよく寝れた・・?」


マリは何とか時間を稼ごうと、女エルフに問いかける。


「昨日の戦いでまだ体中が痛みます。」


女エルフは頭に包帯を巻いていた。

一晩、妖精魔法で治せるほど軽くはない強打だったようだ。


「よく私がここから来るってわかったわね。どうしてわかったの?」


「妖精が教えてくれたんです。あなたの魔力が私の中にあることを。」


女エルフがそう答えると、アピールするように水色の妖精が出てきてマリの目の前を横切るように浮遊する。


「ふーん、便利なものね。だから追ってくるのを見越して、ここで待ち伏せしてたんだ。・・・・・まいったわ。私の完敗ね。」


女エルフはマリの魔法を逆手に取り、利用したのだった。

追ってくると確信して。


マリは拘束を、なんとか抜けだそうとするがやはりピクリともしない。

女エルフはその状況を保つ。


「拘束するにしても、ちょっと密着させすぎじゃない?・・もしかして・・・・そっち系?」


女エルフは体をマリの背中に押しつけるぐらいの強い力で密着させていた。


「これぐらいしないと、あなたに逃げられてしまいますから。」


緊張の間が流れる。

女エルフは拘束したまま、なぜか何もしようとしない。

マリはもぞもぞと動き、抜けだそうとし続ける。


「・・・・ちょっと!いつまでこうしてるつもり!?・・さっさと殺すか何かしなさいよ!そんなに密着させられると暑いんですけどー!」


「・・・・・・。」


女エルフは、なぜか黙ったままだった。

そしてその数秒後に女エルフは神妙に言う。


「あなたに聞きたいことがあります。」


「へぇ~ちょうどいいじゃない。私もあなたに聞きたいことがあったのよ。ゲンエイガハラ村についてね。」


「わかりました、では場所を変えましょう。ここでは他の人に見つかってしまうおそれがあります。

今は避けなければいけません。」


その時、拘束は解かれた。


(・・えっ?う、うそでしょ!?)


その女エルフの言葉を聞いて、マリは驚いた。

抜け出すための時間稼ぎが、まさか本当に受け入れられたのだ。

マリは女エルフの方を、振り返って目を合わせる。


「ちょ・・ちょっと!本気なの!?」


「・・・えっ!?違うのですか・・?」


女エルフは、マリの反応に驚いた表情を見せた。


マリは何かを企むような表情でベルトのメイスをゆっくり抜きながら言う。


「私が今、ここで抵抗・・・あるいは逃げ出すとは考えないの?」


女エルフは、そんな険悪なマリの顔をじっと見てから重い顔つきで言う。


「それも含めて・・・あなたのこと・・いえ・・あなたたちのことを見極めたいのです。この・・ゲンエイ村を守る立場として・・・。責任もすべて負う覚悟で。」


女エルフは、まっすぐマリの目を見ていた。

マリはベルトのメイスを抜くのをやめる。


「はぁ~わかったわ。村について、いろいろ聞きたいのはホントだし。・・じゃあ・・・女子会?といきましょうか。」


「ありがとう!・・やっぱりあなたたちは今までの侵入者と違うかもしれませんね。」


女エルフは少し明るい表情になった。


「じゃあ・・私についてきてください。私の家まで案内します。」


「そういえば、あなたたち・・って、もしかしてルークドとヤンもここにいるの?」


「・・?」


「あぁ~そうね。私ともう2人の男いたでしょ。ほら、剣持ったやつと、いかにも武闘家みたいなかっこうをしたスキンヘッドの・・・。」


「いえ、いませんけど・・もしかしてはぐれたりしたのですか?」


「えぇ・・・そ、そんなところ(これ言っちゃまず・・・」(もしかして情報を引き出すための作戦!!)


マリは警戒し、ベルトのメイスをまた掴む。


「ごめんなさい。あの夜、必死に逃げ延びてからは森に出ていませんからわかりません。」


「そ、そう。」(私どうしていいかわからなくなってきちゃたわ・・。この子、敵でいいのよね?)


マリはメイスから手を離した。

すると女エルフは不安そうに言う。


「私はただ、村を保護下に置くために来たというからどこかの団体から遣わされたのかと・・。そうなんですよね?」


「かもね。」(とりあえず今は必要最小限の情報で応対するしかないわね。拘束を解いたのも私からいろいろと聞くための”アメ”かもしれないし。探るしかないわ。油断も禁物、いつでも戦闘に入れるように・・。)


「よかった~。あっ!ひとつお願いがあるんですけど・・・いいですか・・?」


「な、何?」


「私の家に着くまで、そのマントのフードを深くかぶってくれますか?」


マリがちょうど小屋から着てきたマントのことだった。


「えぇ・・いいわ。」


マリはマントのフードを深くかぶり、顔が見えなくなった。


「この人の周りを浮遊して!」


女エルフがそう言うと、妖精たちがマリの周りを浮遊する。


「これで他の人からはエルフに見えますね。さぁ、行きましょう。」


(どういうつもりなの・・?それにこの格好・・・。)


マリはその時、女エルフの格好を初めてじっくり見た。

昨日の夜とは違い、薄い白のワンピース姿で弓矢や杖、胴体のベルトも装備していなかった。

唯一ある武器は太ももに巻いているベルトにあるさっきしまったナイフだけだった。


その状態で、マリはその女エルフの行動に戸惑いを覚えながらもついていった。






























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