格の違い
その動きはすばやく、目で捉えることができない何かがが人影の首筋に当たる。
あまりにも一瞬の出来事だった。
ノルスに襲いかかる人影は失神したかのようにストンと床に倒れていた。
同時にハンマーが落ちる金属音がする。
ルークドがその倒れている人物を見ると育ての親でもあり、狩り仲間であるドンゴと気づいた。
「ドンゴ!!!」
ルークドは即座に駆け寄る。
「ドンゴ!!ドンゴ!!おい!しっかりしろ!」
ルークドは大切な人を傷つけられたことから反射的に激高した。
体の内側から火が燃えているようなものをルークドは感じ、眼の色が火の色に変わっていた。
「てっっめーーーー!!!」
落ちていたハンマーを拾いあげ、ノルスに襲いかかる。
だが至近距離になにかが近づいた。
ルークドが気づいた瞬間にはもう遅かった。
ドス!!
鳩尾にあたり鈍痛がする。
「うっ!・・・カッハッァ・・・ッ」
口から唾液と血が飛び出す。ハンマーを落としてしまった。
ルークドはなにが起こったのかわからなかった。
ふらつきながら後ろに足をつき、薄れる視界で見る。
それはフードのロープを着ていたもう一人の小さいほうの人物だった。
(くっ・・!あの小さいほう護衛だったか!油断した・・)
どうやら鞘付きの日本刀で鳩尾を突かれたらしいと
ルークドは冷静に状況把握するが時すでに遅し。
なんとか捉えれたのはフードの中からちらつく金髪だけだった。
「せ・・めて・・・」
ルークドはふらつき地面に倒れる寸前にファイアーインパクトを手にやどしノルスの方向に投げる。
「なっ!」
そんな驚きの声を上げた金髪の護衛は意表を突かれたようだった。
ノルスへの防御に間に合わない。
ファイアーインパクトである炎のエネルギー球体がノルス一直線へ向かう。
「発動せよ!マジックルースン!」
ノルスの渋い声が響き渡る。
右手の甲にある紋章がひかり、向かってくる球体のほうへ手のひらを広げる。
球体は手のひらに圧を伴いヒットするが爆発せずにそのまま魔法のエネルギーは吸収される。
ルークドはそれを消えゆく意識のなか見ていた。
(なん・・・だ・・今の・・・魔・・法・・・が消え・・た・・!?)
(だめ・・だ・・・・)
そしてルークドは気絶し、床に倒れた。
「うむ。やはり今の眼の色・・・騎士の力のものだ。・・・人違いはなさそうだ。」
「すいません。間に合いませんでした。」
フードを被ったままの護衛の女が言う。
「いやいや構わんよ。私は平気だ。
それにちょうど力を確認できてよかったかね。」
ノルスがそう返答する。
ノルスはルークドのポテンシャルの高さを確信し満足している様子だった。
オックスはただ黙って傍観していた。
「ただ随分騒ぎすぎたようだ。こんなつもりはなかったんだがね。
もうちょっとやり方があったんじゃないかね?」
ノルスが護衛の女に反省を促すように言う。
「御意・・今後は気を付けます・・・。」
「倒れている二人をベッドまで運んでやりなさい。そしてオックス教授は二人を治癒魔法で回復を。
ただ目が覚めないように頼む。覚めるとまた面倒ではあるからね。
それが終わり次第立ち去る。」
「・・・・・・・・。」
護衛の女は、ただ黙っていた。
「フフフ・・・わかりました。」